国語の専門家が一章ずつ分担したものだが,それぞれが「冒険」というキーワードで関連付けられている.国語の夢を説く本である.
国語は役に立つ良い学科だというのが全体としての主張であるが,あまりにも国語や小説や文学の「副次的」効果を強調しすぎているように感じた.
心を知るための学問は国語だけではない.心理
...続きを読む学もある.
生き方を知るための学問は国語だけではない.哲学もそうだし,物理学や数学でさえ,そういう側面を持っている.
書かれていないことを推測するのは可能であるが,それが正しいという保証はない.
古典の価値を認めたとしても,古文・漢文の価値はそれに劣る.必要な人が学べば良い.全員が必須だというのであれば,何故その元となる甲骨文字まで戻らなくて良いのだろうか?
国語の第一義は,日本語としての言語のスキルを教育するものであるが,その側面を取り上げているのは第4章のみである.
日本語のリテラシー・スキルが十分でない人に,副次的効果を期待することは難しい.
それは,高校物理だけを学んだ人に相対論や量子論の哲学的背景を語るようなものである.
冒険には夢があるが,準備が不十分な冒険は危険でさえある.
まずは,日本語・言語としての能力を付けた上で先を目指すのが,正しい優先度であろう.今は,その最低限のスキルさえない人が多い状況である.