「集合的幻想」というものが何なのか、多数派に追従しようとする人間の性質と近代における実際の現象、そしてそれがなぜ起こるのかについて
実際の事例を交えつつわかりやすく解説してくれている。
模倣の罠について
人間は人の行動を真似しがちだという性質があるという話だが、これは多数派の判断に従うことで自分の
...続きを読む非専門領域における思考・判断の脳負荷を低減させるために発生するという話はある程度納得のいく理屈だった。
実際、確率論的には複数人が同時にある事象に対して判断を下した時、全員事前情報0ならば判断先の割合が同じ値に収斂するはずで、
もし有識者がいればその択の割合が増加するはずだ。
これが成立する限り多数派の模倣はある程度有効な判断といえよう。
ただ、残念ながら実際は同時に判断が下されるわけではなく、誰かの判断を織り込んだ判断が下されることがあるというのが人々の本能に反して発生する罠なのだろうと思った。
現状日々処理すべき情報量は単調増加する一方で、
情報の奔流に流されぬようしがみつくことで精一杯でもある。
その中でさらに情報の取捨選択には気をつけなければならないと感じる。
疑問を感じたら確認する、は今も実践しているが、疑問を感じれなかった場合が怖いところであるが、、、
アイデンティティの罠
集団から逸脱しないことを本能的に優先するきらいがあるという話。
脳波の観測によってもその傾向が読み取れるとのこと。
これもそういう性質があっても特に違和感はないと感じる話。
集団への所属を優先するあまり、集団のポリシーと自己の方針が一致しない場合においても集団のポリシーを優先してしまうことがあるということだが、これに抗って集団を変えるのはかなり難しそうだ。
相当のリスクを負って一部から変革を促すか、集団を脱退するくらいしか回避方法はなさそうに思う。
(本文中にもあるが、あとは迎合)
集団を脱退できない状況にあり、変革や組織に対する疑念は即糾弾せよというグループポリシーであった場合には即詰みな気もするので、これに陥った場合どうしたら良いか少し考えてみたが妙案は思いついていない。
総意の罠
これはほぼ模倣の罠では?
他者がこう思っているに違いないという方向に従ってしまうという現象。
ただし、残念ながら多くの人が考える他者像は大きく間違っているということが現実としてあり、それにより虚像が実際の総意として顕現するという皮肉的な話だ。
これもやはりこういう事象が起きやすいと考えて疑念は明らかにしておくことで対策するほかはないであろう。
私の普段の行動においても多分に他者への模倣があることを気付かされた。
たとえば会社での行動などは会社で先人たちが作り上げた仕組みにとりあえず乗っかることが多いし(1から考える方が非効率なため)、
他の人が声を上げないようなことは私がちょっと引っかかっただけで誰も言わないということは私の認識がおかしいのかな?と感じることもあるため。
こういった現象が発生した場合今一度集合的幻想に陥っていないか精査する必要があるという思考をもたらしてくれたという点でとても有益な本だったと思う。