佐藤厚志のレビュー一覧

  • 荒地の家族
    実際には何も解決していなくて、問題はそのまま残っているけど、主人公はそれに向き合い、心理は変わっていく。そういう作品がとても好きです。
  • 荒地の家族
    苦手な芥川賞だけれど、挫けずに読むことができた。
    全体を通して漂う、震災の重い空気。直向きに愚直に生きているのに、うまくいかない重さ。どんなに求めてもお互いを分かり合えず破綻してしまった夫婦の重さ。震災で家族を失って狂ってしまった人生の苦しみに堕ちた友。
    最後は、ほんの少しの光が…?
  • 荒地の家族
    純文学とはこう言う書き物なのかと読後に思わず唸ってしまう発見があった。難しい表現は一切ないが一文一文に力がこもっていると感じる。
    人の心や行動は説明ができないことが大半で動機づけや理由が常に背後にある訳ではないことや、災厄を通して、またそれを軽々しくではなく、人の生き方の難しさを丁寧に表現されている...続きを読む
  • 荒地の家族
    最近の芥川賞は、どこが評価されたのかよく分からない作品が多いと思っていましたが、これは良かったです

    職人が仕事に取り組む感じはよく分かるし、人との別れや後悔、それでも生きていく人間の姿がとても良く描かれています
    一方で、震災に翻弄され、生きていけなかった人も描かれます
    他にも、こんな人いるよなぁ、...続きを読む
  • 荒地の家族
    震災の被害は日本に居ればいつその厄災
    に巻き込まれるかは誰もわからない。
    この本に出てくる亘理にはよく行く店が
    あり鳥の海の無くなっ行き付けの店の
    暖簾が店は影も形もないのに吹きさらに
    耐え残っていたのを覚えている。
    その鳥の海の背後には山と化した無惨な
    ゴミの山が高く積み上がっていて
    その場に立ち...続きを読む
  • 荒地の家族
    大きな事件があったりする訳ではないけれど、災厄があっても生きている人は進んでいくしかないことを作者は伝えたいのだと思った。
  • 荒地の家族
    芥川賞らしい、感情の揺れ幅を丁寧に描いた作品。
    最初にパラパラとページをめくった時は割と余白も多く、また本自体も割と薄い方だったのであまり期待はしていなかったが(失礼すぎてすみません)、そんな私の軽率な予測とは裏腹に何とも奥深い作品だった。
    未曾有の震災で失ったものはあまりにも多く、それでも生きてい...続きを読む
  • 荒地の家族
     一時期せんだい文学塾に通っていたことがあって、もしかしたら作者の佐藤さんもそこにいたかもしれない。課題の小説を読んでいたかもしれないなどと思いながら読み進む。するととても暗い。ご自身は書店員とのことで文系の容姿をしていらしたのを写真で見た。小説の主人公は庭師のガテン系男だ。震災の後に奥さんを亡くし...続きを読む
  • 象の皮膚
    アトピー故に幼少期からその見た目を非難され続けてきた凜さん。
    両親ですらアトピーのことを気合が足りないせいと理解してもらえず、兄弟からもからかわれ育ち、現在凜さんは非正規雇用の書店員として働く日々。

    癖の強すぎる書店の社員とパートたち。
    入り組む男女関係にちょっとだけ巻き込まれたこと。
    震災が起き...続きを読む
  • 荒地の家族
    造園業を独立して一人で切り盛りする祐治。

    震災が起きて、津波で何もかもを失った街。

    それから妻を病気で亡くし、幼かった息子はもう中学生になろうとしている。
    再婚相手の知加子との間に出来た新しい命はこの世に生まれる前に流産し、知加子は祐治の元を去っていった。

    かつて子供時代に一緒に遊んだ明夫は、...続きを読む
  • 荒地の家族
    仙台より南側、津波で大きな被害を被った地域を舞台に造園業を営む男を主人公として、死別した前妻、離婚調停中の妻、子供、母親、友人などとの震災後のどことなく不安定な精神、生活を描く。どこか上手く行かず、周囲に完全に溶け込むことはできず、不器用に生きるのだけれど、幼馴染の友人はもっと酷い人生を送っていて、...続きを読む
  • 荒地の家族
    気持ちが明るくなるような本ではないからあまり好きではないけど、わかる。私もそんな感じだよ。
    表には出さなくても。説明しにくいけど、同じ感覚の人、結構いるんじゃないかな。
  • 荒地の家族
    震災を乗り越えて一人親方として造園に係わる仕事をしている坂井佑治の物語だが、何か灰色の空気が支配している感じがした.妻晴海と息子の啓太とのささやかな生活も晴海の急死で頓挫し、再婚した知加子も流産を契機に逃げ出す.母の和子に啓太の面倒を見てもらい、仕事を続ける佑治だが、東北の天候を象徴するような曇天の...続きを読む
  • 荒地の家族
    改めて思う災厄のあとを。
    喪失感のなか、生活していかなければ…とわかっているのに思うようにはいかない。
    そのあとには妻を亡くし、がむしゃらに働いて忘れようとする辛いこと。
    だが、何年経っても何かに足を取られてしまうような、立ち止まらざるを得ないようなことがある。
    笑顔がない日常を見るのは切ない。

    ...続きを読む
  • 荒地の家族
    忘れもしない、東北の震災
    仕事を終えて帰宅したら、ニュースで目にした
    ひどい光景、思わず声をあげた
    その後の人々の生活と心というか、気持ちの変化を
    一人の中年男を通して、周囲の人々の生活の変化を
    描いている
    あんな状況の中で、何もかも失ったら
    命だけ助かったら、どうやっていくだろうか
    生きている感覚...続きを読む
  • 象の皮膚
    人間が嫌いになる。
    酷い親と先生に怒りが沸く。
    お客さまに、人間の怖さをみる。
    それなのに誰か凛を助けてほしいと願いながら読んでしまう。
     
  • 荒地の家族
    『災厄』という表現が妙に最後まで気になり、あの震災は途轍もない数の人生を狂わせたのだと文章から強く荒々しく伝わりました。10年が過ぎ記憶が薄れて行く中、著者が書き記したかったものが地中に根を張るように重厚に表現されていて読み応えがありました。
  • 象の皮膚
    『荒地の家族』で興味をもってこちらも。
    アトピー性皮膚炎に苦しみ続ける女性。
    書店員というモチーフはやはりこの著者ならでは。
    持病に苦しみながらも、数々のトラウマを抱えながらも健気に生きる主人公と、それに対しあくまで無理解、抑圧的に接し続ける家族の姿に最後までつらさがあった。
    なぜああまで冷酷なのか...続きを読む
  • 荒地の家族
    あの厄災。
    もがいて乗り越えた人ばかりじゃ無いんだな。
    留まり歩み出そうとしても戻ってしまう人の方が多いのかな
    と思わせる小説でした。
  • 象の皮膚
    リアリティ溢れる筆致。自分とは全く違う境遇、性別、体質なのに、ページを捲る手を止められなかった。個人的には芥川賞受賞作よりこっちの方が好き。だから読書は止められない。