カンザスに住む少女ドロシーが、ある日家ごと竜巻に飲み込まれオズの国に降り立つ。
家は偶然にも、オズの国東部のマンチキンを支配する東の悪い魔女を直撃。魔女を退治してくれたとドロシーは熱烈な歓迎を受ける。
カンザスへ帰りたいと願うドロシーにマンチキンを訪れていた北の善い魔女は、国の中心部にあるエメラルド
...続きを読むの都へ行き、そこで「オズの魔法使い」という人物に会うよう助言。飼い犬のトトや道中知り合ったカカシ・ブリキの木こり・臆病なライオンと力を合わせ、一路エメラルドの都へと向かう…。
言わずと知れた児童文学の金字塔だが、実は原作者の略歴どころか名前すら存じ上げていなかった…。でもボームさん、楽天的な性格で意外と親しみやすそう。本書もつらい思いや悪夢は取り除いた、現代のおとぎ話になるよう執筆されたという。
後年別の作者によって作られたとはいえ、本書の前日譚である『ウィキッド』とはえらい落差!『ウィキッド』こそ「つらい思いや悪夢」のオンパレードだったから。
『ウィキッド』は原作のストーリーが別物すぎるせいで、ミュージカル版の楽曲が一つも脳内再生されてこなかった。
それに比べ本書は、さすが児童書なだけあって映画版(1939年)の楽曲が好きなだけ再生されちゃう。不毛で日常風景までもが灰色がかって見えるカンザスでは”Over the Rainbow”、仲間たちとエメラルドの都を目指す場面では”We’re Off to See the Wizard”といった風に。
当然の流れなのは分かっているけど、ドロシーがカラフルなオズの国を目にした時みたいなこの解放感がたまらなく心地良かった…!
今回自分が読んだのは2022年刊行の文庫版で、何と原書のイラストが25点掲載されている。「最近描かれた」と言われてもおかしくないくらいほぼイメージ通りだったが、やはり例外もあった。
挿絵のドロシーは何と指人形みたいな3頭身。なかなかにエグい方法でブリキになっていたブリキの木こり。(随分ニコニコしていたけどトラウマじゃないのか…?) 西の悪い魔女が(『ウィキッド』とは別人級の)間抜けなビジュアルだったのには正直ガッカリした。
ストーリーはイラスト同様例外はあったものの、この点においては拍子抜けせずに済んだ。
カカシ・ブリキの木こり・ライオンがそれぞれの願いを叶え、何と今後の身の振り方まで決めていく中ドロシーだけはなかなかカンザスへ帰れずにいた。だが南の善い魔女に相談すると、実は帰る手段がすぐ近くにあったことを知る。
一見すぐに叶えられなくても、遠回りしてでも諦めずにいれば着実に近づいていく。もしかしたらその間に誰かの人生を救うことだってあるかもしれない。そうすれば、いつか叶った時の輝きもきっと違ってくるはず。
『ウィキッド』のエルファバにも立派な願いがあった。しかし必死になるあまり周りを顧みず、結果あのような結末を迎えてしまう。ドロシーにあってエルファバ(西の悪い魔女)になかったもの…。新たな切り口を見つけてしまった。