5巻まで読んだ感想です。
心情重視の異世界物です。不遇な主人公は2巻までで成り上がり, 3巻からは戦記物に突入します。
欠点から先に伝えます。とにかく重いです。一つ一つのエピソードはちょくちょく区切ってくれるので読みやすくはあるのですが, 毎回ビターエンドが続くというイメージです。作戦そのものは
...続きを読む成功しても誰かの心にダメージが入ります。
ですので, 楽に読書をしたいという人には全く不向きです。ほろ苦いストーリーを楽しむためには忍耐力と読解力も必要でしょう。
以上を読んでなお覚悟を決められる人はぜひ購入しましょう。おすすめです。ここからはネタバレを避けつつ雰囲気の紹介。
最低限の尊厳も最低限の力も与えられなかった主人公, 大多数は彼を虐げ, 彼を愛するものも関わり方が歪んでいってしまいます。しかし彼は自己を堅持し成果を上げつづけます。それでも周りからの扱いは悪化の一途をたどるのですが......2巻の後半で一気に化けて成り上がりです。その後の各キャラクターの行くすえをお楽しみに。
ストーリー上の逆転のキーとされるポイントは戦術の技巧が中心。苦戦をしながらも戦場の情報を地の文で集め, 起死回生の一手で相手を打倒するパターン。きっちり考えながら読むと美味しさ倍増。
それから主人公の掲げる理想が味方を増やしてひっくり返すパターンもあります。長期的には謀略のにおいもありますね。
主人公は心技体全てに優れる英雄。差別を受ける原因となる事件がなければ間違いなく作中最強です。
特にその驚異的な精神力は読者すら唖然とさせます。確かにそうするのが一番だろうけど普通はできないでしょと, それでも彼が決断したなら納得してしまうような圧倒的なカリスマ性もあります。
高く掲げた理想は私達の心に訴えかけ, しかし足元を見る目は私達よりも冷静。戦人としては苛烈でありながら, 終われば小さな子どもの一挙一動に心を砕く温かい人です。こんな兄様がほしい。
主人公の存在が圧倒的ですが, それ以外のキャラも丁寧に思いが描かれており, 物語に深みを与えます。たまに視点移動や回想もあります。すれ違い多く全体的にハラハラ。もしかしたらあの人は悲劇的な結末を迎えるかも。
というわけで言うまでもないですがおすすめです。「英雄かくあるべし」などと書いてしまいましたがハードル高すぎですねごめんなさい。でも私はこの主人公の歩む先を最後まで見届けたいと思います。