幕府の正当性について考察した歴史書である。都市王権、もっとあからさまに言えば都市民を食べさせることに注目する。
『応仁記』は公家も武家も庶民も奢侈を好んだことを応仁の乱の原因とする。人々が華麗さを好むと万民が苦しむという関係になっている。贅沢や飽食は世を乱す。人々が金を浪費し、華麗なものに執着する
...続きを読むことが社会の安定と経済の発展を妨げる。無駄に金を使って金を回すことが経済発展という昭和の感覚を否定する。
足利義政は土木事業を頻繁に起こし、天皇に叱責された。多数説は天皇を支持し、義政の悪政と評価する。これに対して少数説は、貧民に職を与える雇用創出事業であったと積極的に評価する。しかし、「大規模土木事業を興し、雇用を創出すればするほど、窮民を京都に集める結果となる」(227頁)。
後の豊臣秀吉も大規模普請によって雇用創出を図った。しかし、劣悪な労働条件のために負傷して働けなくなり、乞食になった人々が京に充満した。「雇用創出の理想とは逆の結果も生まれた」(289頁)。
足利義政と豊臣秀吉の事例から大規模な土木事業が雇用を創出する面があるものの、その結果として窮民が京都に集まり、劣悪な労働条件下で働くことを余儀なくされた。金を回すことが経済発展とはならない。