鼓直のレビュー一覧

  • 詩という仕事について
    隠喩にこそ言語の本質があるとでもいうように、その働きを矯めつ眇めつし見極めようとする。また物語の機能の根源には歴史性があるという風に、古典に幾度となく立ち返る。

    謎を提示する、と本人の言うとおり、議論は明晰ではあるけれどクリアカットな結論に落とし込むためになされてはおらず、一読して理解した気にはな...続きを読む
  • ブロディーの報告書
    乾き、こわばり、血の味、人間の体臭、闇。
    『伝奇集』とは違う作家が書いているようだ。
    現実を追究しているにもかかわらず、かえって現実から浮遊してしまう。
  • 詩という仕事について
    ボルヘスによる詩に関する話。詩に対して共感できることがここにはある。詩のよさ本来の姿といってもいいと思う。ボルヘスが先導役ならきっと詩を書こうと思う人は増えると思うな。そんな気がした。
  • 詩という仕事について
    ボルヘスは決して多くのことを述べているわけではないが、示唆に富んだ事柄ばかりを述べるため、豊富に世界が拡大していく。
    ・生は詩から成る。
    ・リンゴと口の接触が必要。
    ・詩は一回限りの経験。
    ・書物は美の契機。
    ・詩とは何かを心得ているために定義できない。
    ・隠喩……人間は断定よりも暗示を信じる。
    ...続きを読む
  • 詩という仕事について
    詩論として、しごく面白い。
    詩という謎
    隠喩
    物語り
    言葉の調べと翻訳
    思考と詩
    詩人の信条
    目次だけでもワクワクしませんか。
  • ブロディーの報告書
    様々な人物の末期(まつご)が淡々と叙述されていくところは
    山田風太郎『人間臨終図鑑』のようだ。
    表題作を除いては幻想的でもメタフィクショナルでもないが、
    我々と異なる時代、遠い場所に生まれて死んだ人たちの――
    恐らく多くは作者が
    実体験・聞き書きに尾鰭を付けたと思われるドラマが
    味わい深い。

    晩年...続きを読む
  • 詩という仕事について
    『7つの夜』もそうだったのだけど、ボルヘスの講演録は読んでいてものすごく心地良い。それは彼の書物に対する愛情、文化に対する敬意を言葉の端々から感じることができ、博覧強記なその知性が軽やかなステップを踏んで読み手を魅力するからだ。一言で表すならば、それは信愛なる美しさ。物語について、詩についての講演録...続きを読む
  • ブロディーの報告書
    マルコ福音書は外部の知識人/知性者を神=生贄とする原始宗教とキリスト教の関係性を描いているが他の作品でもみるね。ここまで書いてちょっと違うかもしれない
  • 詩という仕事について
    詩を中心とした文学論、という印象。大学の講義録なので語り口が易しく、読みやすかった。後半3章が特に興味深く読めた。
    しかし内容が理解しきれたわけではないので、折を見て要再読。
  • ブロディーの報告書
    他のアルゼンチン生まれの人とどこかイメージ違うなー、とwiki
    ってみた所、お父さんがイングランド、お母さんがウルグアイの人なのね。

    つらつらと短編を読んでみました。ちょいちょい本人が出てきて、これは創作?昔話?

    本文中にグスタフ・マイリンクの「ゴーレム」がサラリと話題にのぼり、あれしかまともな...続きを読む
  • ブロディーの報告書
    ボルヘス後期の短編集。ガウチョがたくさん!やや単調。最後のブロディーの報告がよい、ボルヘスらしいと感じる。
  • ブロディーの報告書
    ボルヘス後期の短篇集。南米特有の場末の雰囲気には、日本の小説では味わえない異国感がある。「マルコ福音書」の終わり方がよかった。書かれないラストに思いを馳せ、書き出しに立ち戻る。「めぐり合い」の二本のナイフの物語はロマンチックだ。p68「物は人間より持ちがいい。」
  • ブロディーの報告書
    ボルヘスは”鬼面ひとを脅かす”ところが好きなので、物足りなさはある。「じゃま者」「マルコ福音書」「ブロディーの報告書」は寓話的で好みの雰囲気。
  • ブロディーの報告書
    ボルヘスの短編は基本2種類に分けられる。1つは西洋形而上学を自在に駆使して構築される高尚文学。そしてもう1つは、故郷アルゼンチンを舞台にガウチョや荒くれの人生が伝聞されていく口承文学的な作品だ。本書は後者のタイプの作品を大部分とする事で自らをアルゼンチンの土着的文脈に再定義。そしてラスト前の「マルコ...続きを読む
  • ブロディーの報告書
    ボルヘス後期の代表作ということで、作家の全仕事における本書の位置づけやら意味付けは、解説を読むのが一番。
    一読者としては、面白かったか否かだけを。

    それなりに面白かったけど、それまでのボルヘスファンが落胆を禁じ得なかったというのも頷ける。
    老作家は意図して作風を変えたわけだけど、フツーになっちゃっ...続きを読む