初見の作家さんの作品。脚本家ということで映像的でとても読みやすい本でした。
過去に引っ張られ、内面では大人になり切れていない青年拓海が、もうこの世にはいない少女睦月の幻影を追い続ける話です。
周りの人々がひたすらいい人なので、主人公の中二病っぷりが際立ちます。再婚した父も、その後妻も何も悪くない。疎
...続きを読む遠になった友人たちも悪くない。現在の恋人なんて最高。
それなのにひたすら亡くなった少女との思い出を胸の傷に垂らし続け、忘れる事を拒否している。そんな時に、睦月のブログが突然更新されます。誰がそんないたずらを・・・。もしかして睦月??
鬱屈した幼児性を持った主人公というのは、物語を回すのにとっても適した存在でしょう。アムロレイ、カミーユビダン、碇シンジ、そして拓海。全然物語の特性が違いますが、思い浮かんだのはこの三人でした。
読んで行くほどに拓海への感情が冷めていくのと反比例して、周りをちゃんと見ろ!お前ひとりで生きていると思うな!と叱咤の声を心で叫んでいました。これは登場人物たちと同じ感情ではないかと思います。すなわち物語の中に入っているという事でしょう。
これは完全に術中にはまりましたね。しっかりと物語にからめとられたという感じです。