野間宏のレビュー一覧

  • 真空地帯
    最初は少し退屈だった。本の厚さを見ながら読むのを止めようかとも思った。しかし、木谷が真情を語り始めるに連れ、次第に引き込まれていった。

    人は誰しも、自分を大事にしながら生きている。仕事の後、一杯の珈琲でも、或いは公園のベンチでの缶ビールでも、ささやかな慰めを自分に与えて生きていく人がいる。一丁四方...続きを読む
  • 暗い絵・顔の中の赤い月
    野間宏。真空地帯があまりに面白くて、デビュー作の暗い絵がどうしても読みたくって読みました。

    「暗い絵」「顔の中の赤い月」「残像」「崩壊感覚」「第三十六号」「哀れな歓声」の六編を収録。

    デビュー作である「暗い絵」は正直よくわからなくて、でも、ブリューゲルの絵についての冒頭の長々とした記述が異様なも...続きを読む
  • 真空地帯
    軍隊機構の末端である兵営の緻密な描写を通して、日本軍国主義を批判した問題作。とのこと。

    初めての野間宏。

    最初は退屈な小説だな、と思いました。木谷のことも、曾田のことも、軍隊のこともあまり掴めなくて、さらに物語がなかなか動かない。
    でも、中盤から、色んなことがわかってくると、俄然面白くなって先が...続きを読む
  • 暗い絵・顔の中の赤い月
    野間宏の初期の短編集。
    巻末の年表を確認すると収録作は終戦直後1946年に発表された『暗い絵』から、一番遅い『崩壊感覚』でも1948年3月で、氏の代表作である『真空地帯』より前に書かれた作品のみになっています。

    野間宏といえば本書収録の「暗い絵」と長編の「真空地帯」くらいしか知らなかったので、個人...続きを読む
  • 暗い絵・顔の中の赤い月
    戦争の負の面を描いた野間宏。これが太平洋戦争時代の真実であったと思う。戦争で人を殺したことでいつまでも心が病んでいる者、戦争で連れ合いをなくしたもの同士の出会い。また陸軍刑務所のむごさ、軍人の休暇時の哀れな売春による楽しみなど、旧帝国陸軍がいかに人道的におかしかったがわかる。
  • 暗い絵・顔の中の赤い月
    「暗い絵」――
    ブリューゲルの絵の描写が印象的だ。

    草もなく木もなく実りもなく
    吹きすさぶ雪嵐が荒涼として吹きすぎる。
    はるか高い丘のあたりは雪にかくれた黒い日に焦げ、
    暗く輝く地平線をつけた大地のところどころに
    黒い漏斗形の穴がぽつりぽつり開いている……。

    野間宏の卓越した筆致力。

    この描写...続きを読む
  • 暗い絵・顔の中の赤い月
    戦中、戦後の暗い日本、暗い思考を描いた作品。
    「暗い絵」は解説に書かれてある通り、限定的な時代・場所を舞台としているので、時代背景などよく分からず、閉塞感だけは感じられました。
    「顔の中の赤い月」はパートナーを失った男女の物語。男は失ってからはじめてその大事さがわかり、女は得た瞬間から失った後も大事...続きを読む