哲学者の代表みたいなソクラテス。
彼自身は著作を残していないのだけれど、
弟子であるプラトンがソクラテスの対話を書き残したため、
今日までその名が残っているんだそうな。
こうしたプラトンの著書はほぼ対話形式になっているので、
小難しいイメージのある哲学書の中では異例的に読みやすくわかりや
...続きを読むすい。
「ソクラテスの弁明」
ソクラテスが被告となっている裁判での弁論。
結局彼は死刑になってしまうのだけれど、
敬虔な神の僕である彼の「正しさ」に対する態度には胸を打たれた。
こういう姿勢はカントに似ていると思う。
有名な「無知の知」のくだりもここに収録されている。
「クリトン」
死刑を待つソクラテスがいる牢屋に、
親友であるクリトンが脱獄を提案するところの対話である。
「ただ生きるのではなく、善く生きる」という、
有名な一節はここで語られている。
親友を説得するソクラテスの様は、
刑事コロンボや古畑任三郎のそれに近い。
福沢諭吉にも近い気がした。
法律を擬人化して語るところも面白かった。
「ゴルギアス」
「ゴルギアス」って音の印象だけで悪役っぽい。
弁論家ゴルギアスとその弟子ポロス、
そして政治家カリクレスを相手に、
弁論術はいかにあるべきか、
正義はいかにあるべきか、を
コロンボよろしく論駁していく様は小気味良いが少々胡散臭くもある。
なんだか「正しさ」に固執するあまり、
ただの強者の理論を展開しているだけのような向きがあるのではないかしらん。
わたしはどちらかと言えば、
「清濁併せ呑む」という考え方のほうが好きなので、
「正」も「悪」も包摂しうる思考をこそ奨励したいと思う。
もちろんソクラテスの言っていることは正しい。
しかし正しすぎるんだよなぁ、という感じ。