小川国夫のレビュー一覧

  • 彼の故郷
    生死の境が曖昧な世界を立体的に構築する圧倒的描写力。著者の自伝的小説とありましたが、彼の生きてきた土地の実在をはっきりと感じられました。実在の世界なのに、観念の世界である、というと、カートヴォネガットジュニア『タイタンの妖女』に通じるところがあります。
    文学を文章の美しさでもって味わえる人には必読。
  • マグレブ、誘惑として
    モロッコ、チュニジア、アルジェリア……アフリカ諸国をマグレブと呼ぶ。
    土色の土地と独特の熱気を持ち、妖艶な目をもつ女たちが住むモロッコを舞台にしながらエログロはない。爽やかささえある。

    旅のお供。幻想と現実の間。生活の差。
    読中、頭に浮かんだ言葉。
  • アポロンの島
    日本人版ビートニクのようでもあり、もっと儚げで、清々しい小説。
    淡々と綴られる装飾性のない文体から、ギリシャの強い日差しや土埃の舞うでこぼこ道、霧に煙った港などが迫ってくる。

    この作家の作品は難解で、途中で止めちゃうものが多いのだが、このデビュー作は何度も手にとってしまう不思議な魅力がある。

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  • アポロンの島
    素直な文章ゆえにヨーロッパの情緒が漂ってきます。私小説ですが、放浪する小さなバイク、ヴェスパで走り回る作者の姿はまるで実体の無い煙のように感じられ、ロマンがあります。
    これも慥かに、幻想小説を冠せられる文学だと感じます。

    名著。朝靄の中にいるような雰囲気を楽しんでください。
  • アポロンの島
    僕の読む、ごく限られた日本の作家のひとり。地中海世界を旅する作家の若き日の記録。形容詞のない、肉体の運動のような文章。立った。走った。殴った。疲れた。即物的な行動の記述が聖書世界とつらなる内海の光を現前させる。あるいはこれは平易な言葉で綴られた散文詩なのか。激情しないランボオ、空想しないロートレアモ...続きを読む
  • 試みの岸
    三部からなる連作中篇。人生の苦悶に行き当たったとき、ある者は自らを殺め、ある者は他者を殺め、またある者は人間存在を逸脱して馬に転身し……馬 に、転 身 し ! 冒頭からいぶし銀な文体と内容が展開されるところ、第二篇では突然のぶっとんだ、怪奇的な脱皮におののかされた。

    物語は海辺の集落が舞台。命のや...続きを読む
  • アポロンの島
    途中まで読んでちょっと放置状態。
    小川国夫の文がとても好きなので購入。あとで読む。
    ともかくも現行で買えるのは嬉しいんだけど、このシリーズはとにかく高いのが厳しいのよね……
  • 止島
    のりしろの多い物語というか、書かれていない物語に圧倒される。淡々と書かれた文章の背後から立ち上がってくる物語に、頭の中が一杯になってしまった。良いものを読ませていただきました。
  • アポロンの島
    ミコノス島に、行きたくなりました。
    この島で、徳永英明の「MYKONOS」を聴きながらこの本が読めたら、幸せだなぁ。
  • アポロンの島
    シチリア・ギリシャのオートバイ旅行体験を
    志賀直哉ふうの「筋のない小説」としてあらわした連作に
    加えて、戦時下すごした灰色の青春もの数点
    昭和32年に私家版として500部製作したが一冊も売れず
    同人誌を通じて島尾敏雄に拾い上げられるまで、8年かかったという
    執筆時期から、日本流ビート・ジェネレーショ...続きを読む
  • アポロンの島
    学生時代に行った欧州放浪旅行のギリシャ編を"復習"し、満を持して挑戦しましたが、氏の書くこの散文体旅行記の価値をどういうふうに受け止めたらよいのか。。。故郷藤枝での情景が語られる「東海のほとり」もちょっと期待と違いました。
  • 試みの岸
    行動や会話を客観的に描写するだけの書き方は、きちんと読まないと主人公の意図や話の流れがつかみづらい。いつの間に日が変わったの!?なんて時もあった。

    さりげなく足掻いても、力尽きて砂に沈んじゃう感じ。
    たまに出てくる健康的な命が眩しい。

    2、3の方が良かった。