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聖地イェルサレムを無血開城したにもかかわらず、法王に「キリストの敵」と名指されたフリードリッヒ。法治国家と政教分離を目指し、世界初の憲法ともいうべき文書を発表したが、政治や外交だけが彼の関心事ではなかった。人種を問わず学者を友とし、自らもペンを執って科学的書物をものした。「玉座に座った最初の近代人」とも評される、空前絶後の先駆者の烈しい生を描き尽くした歴史巨編。
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Posted by ブクログ
皇帝フリードリッヒ二世の生涯 下巻 文庫版 著:塩野 七生 新潮文庫 し 12 103 「玉座に座った最初の近代人」 第6次十字軍で、聖地エルサレムを無血開城し、イスラムと融和、武力を使わなかった叡智の人 強大なローマ教会勢力から、封建領主を保護して、封建制度を維持しつつも、法治国家をめざした人 ...続きを読むイスラム世界から、文化を取り入れ、ラテン語、イタリア語に翻訳して、ルネサンスへの道を拓いた人 下巻は、13世紀の政治状況の分析から、第2次ロンバルディア戦役後のローマ法王との確執と、その死、その後まで 城壁をめぐらせた都市を攻める場合の不利は、守る側は屋根の下で眠れるのに、攻める側にはそれが許させれないこともあった。眠るだけでなく、あらゆることを野外でしなければならない これは特筆すべき価値があると思うのは、皇帝の愛人になった女の実家が、その理由だけで利益を得るようになる事態もまったく起こらなかったことである トクになるわけでないのだから、わざわざ皇帝に娘を差し出す理由もないのだった フリードリッヒという男は、愛人たちのめんどうを最後までみただけでなく、愛人たちから生まれた子たちのめんどうも徹底してみる男であったということだ 女にとって最も重要な存在は、何であろうと自分が生んだ子である その子の将来を徹底して配慮してくれる男に対して、嫌がらせをしたいと思う女がいるだろうか アリストレテス主義:証明できなということは、存在しないということにはならない だからこそ、実験を積み重ねることによって真実を追求していく努力が重要になってくるのである 第6次十字軍が無血十字軍と呼ばれたのも、軍勢は率いていながらそれは使わないで、外交だけで目標に達したからである 皇帝フリードリッヒが目指したのは、法に基づいての秩序ある平和な国家の建設である 首尾一貫する生き方で通してきた人には、死んでもやれないこと、というのがあった ある考えで通してきた以上、その考えに反することをやっては首尾一貫ではなくなるからである 反対に、「筋」を通すことなどは考えもしないで生きてきた人は、「筋」に反することでも簡単にできるのだ 中世ヨーロッパを震撼させて法王と皇帝の抗争は、「カノッサの屈辱」からはじまってフリードリッヒで正面からの激突となり、「アヴィニョンの捕囚」にまで及ぶことになる 皇帝フリードリッヒ2世は、中世の特質であった封建制度を全廃し、君主制国家に一変しようとしたのではない 封建領主たちの形は残しながら、その内実は変えようとしたのである 「誓い」とは「信義」であり、誓いを守ることは信義を貫くこと、と考えられてきたのである 目次 第7章 すべては大帝コンスタンティヌスから始まる 第8章 激突再開 第9章 その後 年表 参考文献 図版出典一覧 ISBN:9784101181493 出版社:新潮社 判型:文庫 ページ数:472ページ 定価:950円(本体) 発売日:2020年01月01日 上巻 目次 第1章 幼少時代 第2章 十七歳にして起つ 第3章 皇帝として 第4章 無血十字軍 第5章 もはやきっぱりと、法治国家へ 第6章 「フリードリッヒによる平和」
上下巻合わせて、星5つの内容。シチリア等の歴史もフリードリヒ2世も、あまり知らなかったが、読んでいてワクワクした。「ブーリア」行きたくなりました。
このような偉大で魅力的な人物が実在したということに深く感動します。 なんでドラマチックな生涯。 今政治家を目指してる、既になっている人には是非是非読んでいただきたい。 こんなにバランスのいい統治者、人類の歴史上どれだけ存在したんだろうか。
すごい物語だった。 「早く生まれすぎた」「王座に座った最初の近代人」「世界の脅威」などと言われるフリードリッヒ二世の55年間の生涯。後半は先が気になってページをめくる手が止まらなかった。最後まで見届けることができて少し泣いた。法王インノケンティウス四世がめっちゃむかつく(笑) 塩野七生さんの文章は...続きを読む読みやすくて分かりやすくて素晴らしい。他の作品も読んでみようと思います。
在宅勤務で電車に乗らなくなると、本を読むタイミングも結構難しくなる。 本書のような歴史大作は面白いのだけど、なにぶん読み進めるのに時間がかかるタイプ。 間隔あけちゃったけど、2週間でようやく終わった。 フリードリッヒ二世は本当にお手本のような統治者。それと対比されるローマ法王はまったく尊敬もできな...続きを読むいし、勝手に怒りすら感じてしまう。この対立を見るだけで、現代に続く宗教観の争いが良くわかる。中世は(その前もその後もかもしれないけれど)もはやローマ法王には人の言葉は全く通じないうえに嫌な粘着質タイプばかり。自分の意に沿わないフリードリッヒをどうにか排除すべく、暗殺まで試みるという卑劣さ。彼が亡くなったと知って、大手を広げて欧州中に喜びを露わにする人としての小ささ(もはやキリストのトップといえるような雰囲気ではない)。 ある意味恐ろしい時代。フリードリッヒが目指した法治国家と、法王が作った異端裁判。片や正当な裁判にもかかわらず、異端裁判は訴えられる=有罪。魔女裁判の基になった裁判であるから、権力をかざしてもうやりたい放題。これはもう本当に、フランス王が70年にも渡り法王を牢獄に入れない限り続いていたであろう地獄の時代。 こんな歴史を垣間見て、無神論者の自分には敬虔な信者の気持ちがわからない。 同じように法王とフリードリッヒ 彼の死後の衰退感が、非常に切なくなる。優秀な息子たちも偉大な父あってこそ、になってしまう。 本書の帯に「圧倒的先駆者」ってあったけど、圧倒的過ぎて死後には目指した法治国家から封建社会に戻ってしまうという。新しいことを成し遂げたとしても、定着するには安定した社会が必要だと認識。 現代は、将来どういう目で見られるんだろうな。
封建社会から法に基づいた君主制国家の確立を目指し、ローマ法王の破門に屈せず政教分離を貫き、十字軍に行きながらもイスラムとの共存を考え和解の道を進む、中世ヨーロッパの先駆者・フリードリッヒ二世の生涯を塩野ワールドで描く後編。 上記の通り、フリードリッヒ二世はあまりにもいろんなことを同時代にやっていた...続きを読むので、頭の整理ができないところ、下巻では「間奏曲」として、女・子供・協力者など、いわゆる各論をまとめた章があったので読みやすかったです。 驚くのはフリードリッヒ二世の協力者を集める人たらしぶりと、女たらしぶり。 嫡子も庶子も一緒に教育させて自身、そして家臣の後継者を育成するなんてあらゆる意味で合理的すぎる。コーエーでシミュレーションゲーム化してほしいですが、PTAからクレームが入りそうだ(笑) 印象に残った文章を三つ。 「苦難に出会うのは、何かをやろうとする人の宿命である。」 「人間には誰にもある自己防衛本能は、科学的に証明されなくても肌では感じるカンを呼び覚ます働きはする。そして科学的な証明とは、カンが正しかったことを示してくれる場合が意外にも多い。」 そして 「不安からは何も生れないが、危機からは生れるのだ。 ただしそれは、危機を自覚した人にとって、ではあるけれど。」 新型コロナウイルスで不安に押しつぶされそうですが、自分、そして自分の愛するものへの危機に対して何を生み出せるのか、今一度考えてみたいと思いました。
日本の世界史の講義では抜け落ちがちな第一次十字軍からルネサンスまでのヨーロッパの状況がよく理解できました。 ローマ教皇の力が絶大な時代に、「皇帝のものは皇帝のものに、教皇のものは教皇のものに」なる世界の実現に向かって突き進む力に勇気をもらいました。既存権力者(本書では教皇)に立ち向かう中で、度重な...続きを読むる困難に直面し失敗しても挽回する姿勢が特に印象的でした。 下巻ではフリードリッヒ二世を取り巻いた環境、特に人間関係についての記述が多く、彼のことをより理解できました。 しかし、何が彼をそこまで突き動かしたのかまでは本書からは分かりませんでした。読み終わって考えるに、青年期にシチリア王国の王、神聖ローマ皇帝になったことから周りには彼を利用したいと考える人や先代・先々代の皇帝と比較する人が多くいたと思います。皇帝を思い通りに操って利を得ようとする人の思い通りにはさせない、ならない反骨精神から歴史に名を遺す皇帝になってやるという気概が生まれてきたのではないかと感じました。 印象的だった文章 ・苦難に出会うのは、何かやろうとする人の宿命である。苦難を避けたければ、何ごともやらない生き方を選ぶしかない。ゆえに問題は、苦難に出会うことではなく、それを挽回する力の有無になる。 テーマとした人物がなぜその行動をとったのか。と考える歴史小説の面白さを教えてくれる名著でした。フリードリッヒ二世といえばプロイセンでしょと思うなじみが薄い人に読んでほしい一冊です。
「鷹に始まり、鷹に終わった」 そんな空気感いっぱいの読後感! ここまで封建社会の真っただ中で、「人の気持ち」と戦った「王様」はいなかったんだろうな、そう思います。 現代社会とは、すさまじく「常識」が違う。 今生きる私の目線だけで、一概にフリードリッヒ二世を見ることはなかなかできないし、人権無視し...続きを読むた目を覆いたいような事も実際はやっている。それを含めて、当時は生活や政治の一つだった。 それを踏まえても、人類歴史の多くの部分を一段階上げる施策をしようとした一人の人間だったんだと、思う。 なかなか出来ることじゃないなー、と思う。 「マグナカルタ」に埋もれてしまったが、「メルフィ憲章」は、歴史上の大偉業。 キリスト教という権威に挑戦した、王様だった。 勝者とか敗者ではなく。 改革者、の話だった。 為政者になった人に、「文化、教養」などがその人自身に伴っていると、政治が進むことが凄くある。 平時でも乱世でも。 教養が必要なのは、その影響力を持つことになる為政者が。 歴史を一歩すすめる、そんな栄養に成り得るからなんだと。 フリードリッヒ二世を見て、改めて感じた雑感になりました! 人として、魅力あります。
フリードリッヒ2世は、長じて<神聖ローマ皇帝>となって行くのだが、結局は当時のイタリアに在っても少し独特であったシチリア王国の中、残念ながら両親が早くに他界してしまったために「独立独歩」で育つ。そうした中で「時代の遥か先を往く」というような、当時は独特とされた考え方を育み、それを実践して行くことにな...続きを読むるのであろう。 「中世」とは、「祈る人」、「闘う人」、「働く人」が在って、“領主”である「祈る人」や「闘う人」に“領民”である「働く人」が納税する仕組みだった。その納税等が恣意的に行われがちであった中、フリードリッヒ2世は「法治主義」というような概念を打ち出し、自らの権威が及び易いシチリア王国の版図では、後の時代の君主制国家に見受けられるような仕組みを整備していたのだった。 圧巻なのは、軍勢を率いて出動することはしたものの、交戦らしい交戦に及ぶことなく、イスラム勢力を代表するスルタンとの交渉で、イェルサレムでのキリスト教徒の権益を勝ち取ってしまったという<第6次十字軍>の経過だ。 多様な文化が渦巻いたシチリア王国の中で、非常に多くのモノを吸収して育ったフリードリッヒ2世…「何百年か生まれるのが早かった?」というような人物であったのかもしれない。 本作はそういうユニークな人物と出くわすことが出来る、なかなかに興味深いモノである。「1200年代の前半」と言えば、日本史では鎌倉時代と「かなり古い」という時期ではあるが、意外に「現代に向けて示唆に富む?」というようにも思える。
下巻は、築いたものが無に帰していく展開なので、なかなかつらい展開。フリードリヒ二世を巡る女性の話で間を持たせているが、なかなかにつらい展開。まあ、どうして「早すぎた人」扱いなのかと言えば、無に帰したからなのですが……
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