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明智光秀、本能寺にて織田信長を討つ! 明智軍に追われ、絶体絶命の徳川家康を無事、領国へ脱出させ、後の飛躍へと導いた商人・茶屋四郎次郎。その生涯を爽やかに描いた表題作「武商諜人」を始め、特別書き下ろし「幽鬼御所」など、珠玉の十作品を収録。歴史時代伝奇小説の第一人者による、ファン待望の文庫オリジナル作品集。
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Posted by ブクログ
最高の歴史短編集だった。どの物語も面白く、かつ宮本先生らしさが随所に見られ、ファンとしてもさらに好きになった。 個人的なお気に入りは、『戦国有情』『不嫁菩薩』『武商諜人』『明治烈婦剣』の4作。 『戦国有情』は赤母衣4人衆の桶狭間後の人生を描く。わずか14pながら追放になってでも友を救おうとする...続きを読む友情・絆の強さをしっかり感じられ、追放されてもなお主家を重んじる忠義に感情を揺さぶられた。 『不嫁菩薩』は武田信玄の娘の於松と織田信長の息子の信忠の結ばれぬ恋を描く。作者の描く淑やかながら芯の強い女性は本当に短時間で読者の心を掴む。「天離り果つる国」の紗雪にも通ずる部分がある。特に武田滅亡後に信忠の元に嫁ぐことも物理的に可能になってもこれを断り武田の姫を守る使命を守り通す強さ、そして最後の「これにて、永遠の結縁と存じます」には感動。 『武商諜人』は表題作、茶屋四郎次郎を描く。これは若き日の後悔が家康の伊賀越えを導いたというストーリー展開が良い。四郎次郎も好青年で自然と感情移入してしまう。「最も大事なるは、利心ではなく、赤心」。 『明治烈婦剣』は他とは異なり、読めない展開に興奮させられた。敵討ちの経緯も無理のない設定で、かつ小説らしい奇跡で飾る。溜飲が下り、スッキリした。 他にも『まんぼの遺産』は唯一の現代で少し不安だったが、朝夕人の土田孫三郎の真実を解き明かすストーリーで、どこまでが真実でどこからが虚構かが分からない境目を見事に描く点に作者の凄さを感じる。
本能寺の変を事前に察知し、やがて明智光秀が追って来ることまで推測し、いち早く徳川家康を領国へ脱出させる計画を立て見事実行した茶屋四郎次郎。その活躍を描いた表題作始め、全十編を収録。 中には非常に短い作品もあるが、読み応えのある作品もあり楽しめた。 表題作の主人公は正に武・商・諜といういくつもの顔を...続きを読む持ち、その様々な顔で家康を支える。 四郎次郎が秀吉を嫌っていたというのもあるが、やはり天下を取る人間を見る目があったのだろうか。そして家康はこうした稀有な人材を多数抱えていたことが後の繁栄に繋がったのか。 「幽鬼御所」 信長の三男・信孝を産んだ佳乃の物語。冒頭、『北畠顕家』の名前が出て来て驚く。現在某局にて再放送中の大河ドラマ「太平記」で、元国民的美少女が男装して演じている役ではないか。ドラマの方もますます楽しみになった。 本作の方も佳乃のぶれない芯の強さ、一方で簡単に裏切った者、それぞれの壮絶だが対照的な末期が描かれていた。 「不嫁菩薩」 信長の嫡男・信忠と婚約しながらついに嫁ぐことのなかった、武田信玄の娘・於松の物語。 その容貌が菩薩のように美しかったかどうかは分からないが、彼女もまた一度だけしか目にしていない信忠を想いながら強い意志で時代に翻弄されつつも最後まで自分を押し通した人。何と切なく、何と苦しく、何と清らかな人か。 「明治烈婦剣」 兄を無惨に殺した元巡査・混血のジェイク沢木に仇討ちを挑むため剣術を極めるけい。 仇討ち禁止令が出た明治の世にありながら、時代の激変で家族が翻弄されながら、これまた強く逞しく真っ直ぐに進んで行くけいが清々しい。 表題作の他に印象に残ったのは女性が主人公の話ばかりになってしまったが、男性が主人公の物語も短いながら楽しめた。歴史の様々な事件の狭間で様々な人々の物語が花開き散って行く姿を垣間見た気がした。
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