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民政党議員だった斎藤隆夫の「粛軍演説」は、軍部批判・戦争批判の演説として有名である。つまり、輸出依存の資本家を支持層に持つ民政党は、一貫して平和を重視していたが、本来は平和勢力であるべき労働者の社会改良の要求には冷淡だった。その結果、「戦争か平和か」という争点は「市場原理派か福祉重視か」という対立と交錯しながら、昭和11・12年の分岐点になだれ込んでいく。従来の通説である「一五年戦争史観」を越えて、「戦前」を新たな視点から見直す。
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Posted by ブクログ
二・二六事件からはや70年が経過しようとしている。 本書は、1936年の二・二六事件から1937年の盧溝橋事件のはざ間の1年半という時期を検討したものである。この時期は「準戦時体制」とも呼ばれるが、1936年・1937年の二つの総選挙から読み直すと、社会改革を主張し躍進する社会民主主義政党(社会...続きを読む大衆党)が軍拡に肯定的で、現状維持を志向する既成の保守政党(政友会・民政党)が軍拡に歯止めをかけようとしたというパラドックスが浮かび上がる。 分かりやすくするため、現在に置き換えていえば、社民党がイラク派兵を容認して、自民党がそれに歯止めをかけようとしているという構図(もちろん、たとえ話)になる。一昔前の「左翼史観」(というものがあるかどうかよく分からないが)では、既成政党は支配者層(ブルジョア)で好戦的、社会主義は被支配者層(プロレタリア)で反戦という漠然としたイメージがあるようだが、そうでもないみたいということらしい。 いずれにせよ、1931年の満州事変から1945年の敗戦までの時期は、「十五年戦争」とよく表現されるが、必ずしもそれは一直線に突き進んだわけではなかった(かといって「十五年戦争」という言葉を全部否定するつもりはない、念のため)。どんな歴史でもそうだが、ためらいや行き違いが交錯し、思わぬ結果へと転がっていく(歴史のこわさと面白さ!!)。そんなスリリングな示唆を与える、練達の筆者ならではの一冊となっている。この坂野説が実証的に正しいかどうかは、これから検証が進むことだろう。 著者の坂野氏は東京大学名誉教授。日本近代政治史家として、明治から日中戦争にいたる間の「憲政」を考えつづけている。『明治憲法体制の成立』・『大正政変』など著書多数。
選挙結果という名の民意から昭和30年代の政治を読み解こうとしているのが面白い。 社会大衆党の支持が日中戦争の前に厚くなったのは、民主主義への支持というよりも社会主義的な体制への支持や、反既成政党という意思表示だったのだと思う。 そして民意が求める社会主義的な体制は、総力戦体制を求める軍部と極めて親和...続きを読む性が高かったのだろうと思う。そのシンクロ度合いが軍部をして、戦線の開設と拡大を後押ししたのかなという想像ができる。
[ 内容 ] 民政党議員だった斎藤隆夫の「粛軍演説」は、軍部批判・戦争批判の演説として有名である。 つまり、輸出依存の資本家を支持層に持つ民政党は、一貫して平和を重視していたが、本来は平和勢力であるべき労働者の社会改良の要求には冷淡だった。 その結果、「戦争か平和か」という争点は「市場原理派か福祉重...続きを読む視か」という対立と交錯しながら、昭和11・12年の分岐点になだれ込んでいく。 従来の通説である「一五年戦争史観」を越えて、「戦前」を新たな視点から見直す。 [ 目次 ] プロローグ―「昭和」の二つの危機 第1章 反乱は総選挙の直後に起こった(前史としてのエリートの二極分裂 総選挙と二・二六事件) 第2章 陸軍も大きな抵抗にあっていた(特別議会での攻防 「保守党」と「急進党」の「人民戦線」) 第3章 平和重視の内閣は「流産」した(広田弘毅内閣の退陣(昭和一二年一月) 宇垣一成の組閣失敗 ほか) 第4章 対立を深める軍拡と生活改善(「狭義国防論」の登場 「広義国防論」の反撃) 第5章 戦争は民主勢力の躍進の中で起こった(「民主主義」と「戦争」 「戦争」と「民主主義」 ほか) エピローグ―後世の常識と歴史の真実 [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
昭和11から12年にかけて生じた日本近代史における危機ないし転換点の実態を明らかにしている本です。 昭和11年の二・二六事件以来、軍によるファシズムが支配的となり、民主主義が押しつぶされて日中戦争へ突入していくことになったという見かたがひろく流布していますが、著者はそのような歴史像が誤りであること...続きを読むを論証しようとしています。たとえば、マルクス主義経済学者の大森義太郎による人民戦線論が発表されており、そのなかで彼が選挙を通じて国政を変えていくことをひろく国民に訴えかけていたことからも、言論の自由が完全にうしなわれていたわけではないと著者は主張します。 その一方で、大森の国民戦線論は、まったくべつの理由によって現実性をうしなってしまったことを、著者は示しています。民政党と政友会の二大政党が、それぞれの置かれている状況のなかで憲政のありかたについての主張をおこない、美濃部達吉の天皇機関説も純粋な憲法学的観点からではなく、そうした政治的な状況のもとでそれぞれの態度が決定されていきます。とりわけ著者は、美濃部が議会を軽視した円卓巨頭会議の構想をいだいていたことを指摘し、民主主義の擁護者とみなすことができないと論じています。そのうえで、小泉内閣の政治状況に触れつつ、「改革」と「平和」というディレンマが当時においても存在していたという問題を提起しています。 また盧溝橋事件から十五年戦争へと入り込んでいく展開についても、作家の中野重治や哲学者の戸坂潤、軍事評論家の武藤貞一などが、その後の展開についての見通しを示していたことに触れて、国民にはこのときの危機について知るすべがなかったとはかならずしもいえないことを指摘しています。
昭和11年2月20日第19回総選挙から、昭和12年7月7日盧溝橋事件までの1年5ヶ月に絞って書かれた本。 ポイントは宇垣内閣の失敗にあるとみた。
自分が持っている戦前政治史の常識が意外なほどに間違っていることに驚きを覚えた。戦前民主主義は北支事変(日中戦争)の勃発ですべてが吹っ飛んだと結論付けながらその理由が説明されていないため著者の考えは次著を待たねばならないが、ヒントは保阪康正「昭和史7つの謎」や半藤利一「昭和史」、「戦争の日本近現代史」...続きを読むと合わせ読めば自ずと見えてくるだろうか、また一方で戦争という熱狂の時代に突入していく人々の心理など同時代性を持ってしても意識できないだろうか。
史学雑誌の論文を読んでいるようで、新書としては読みづらい。内容的に面白い題材だっただけに、もう少し読みやすく書いていただけたら、もっと楽しめたのに…。残念。 でも、日中戦争突入前には、反ファッショだとか反戦だとかが国会や論壇でまだ自由に話せていたということには驚き。
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