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夫、武田泰淳と過ごした富士山麓での十三年間を、澄明な目と無垢な心で克明にとらえ、天衣無縫の文体で映し出す日記文学の白眉。田村俊子賞受賞作。巻末に関連エッセイ、大岡昇平の「山の隣人」と、武田泰淳の「山麓のお正月」を収録する。
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Posted by ブクログ
犬が星見たを読んでからすっかり武田百合子ファンになってしまった。 難しことは一切なし、特別なことが書かれたいるわけでもないのに、面白い。 昭和の時代、高度経済成長期ってこんな感じだったんだ。 同じことを繰り返す普通の毎日に小さな喜びを見つける幸せ。
昭和40年12月の車の故障の描写がうますぎて、笑えない状況に笑ってしまった 昭和41年6月のタイヤホイールカバーが外れた日の話が切なくて胸がきゅってなる 百合子氏の気強いけど家族の前だと甘えられるところに惹かれる 武田一家も好きだし、富士山麓の人たちがいいな 知らない人たちなのに知ってる人みたい
家や車がしょっちゅう不具合を起こして修理していたり、これって飲酒運転じゃないかしら…?と思った場面がありました。(日記に登場する大人がよくビールを飲んでいる) 夏は湖で泳ぎ、冬は雪遊び、地元の人たちとの交流など、山での生活を楽しんでいる感じがしみじみと伝わってきて、興味深い本です。毎日の献立がおい...続きを読むしそう。 中・下巻も読んでみたい。
平凡な日常の中にこそ人生の楽しみは隠れていることを教えてくれる。 武田泰淳、百合子夫妻は富士山麓に別荘を買い求める。そこでの暮らし、極めて平凡な、食事や季節の変化を記録しただけの日記。なのになぜこんなに面白いのだろう。 まだ高速道路の開通する前の時代。甲州街道経由か国道246号経由か。当然トラッ...続きを読むクが多いし、事故も多い。渋滞は少ないが。 ちょっとした買い物と地元の富士吉田の人々との会話の羅列。構成がなくとも、淡々と続く日々。武田百合子の視点の斬新が本書の魅力の多くの部なのだろう。 何か楽しいことがないか、刺激がないかと求める向きには、本書の視点は極めて有用であろう。 別荘というだけで非日常的な要素があることも否めないが。 全然ドラマチックでない淡々とした日々平安な生き方、これが大多数の人の人生のほとんどの部分なのだろう。毎日を何事もなく過ごすだけでも、立派な生き方なのだと思う。 上巻は昭和39年の7月から昭和41年の9月まで。
何度も読みかえしています。 的確な表現 描写 時に乱暴(?)とも思える言葉。 憧れの女性。 この日記を読むと何故か元気に強くなった 心持ちがします。
日曜の朝10時、FMで小川洋子さんの「メロディアスライブラリー」を聴いている。それで知った本。小川洋子さんは随分気に入っているらしく、他の本を紹介する回でも「富士日記」に言及することがあり。 興味は持ったんだけど、でも、作家の奥さんとは言え、素人の日記だよなと、手を出さずにいたのだが。先日、新版が...続きを読む本屋に平積みされたので、購入。 読み始めて、う~ん、やっぱり只の日記かな、と思ったけど、ジワジワ百合子さんという人が見えてくる。 赤い実を口に入れようとして、泰淳さんに怒られる。 「ふらふら散歩に出かけて、やたら道ばたものを口に入れるんじゃないぞ。前に死にそうになったのに懲りないのか。」(前にあったのね。) 暗いガタガタのトンネルの中で車のホイールキャップが外れる。ふらふらトンネルの中に探しに行く泰淳さん。轢かれてしまうと怯える百合子さん 停車中の処にトラックに追突される。百合子さんは相手と交渉してるのに、泰淳さんは相手の助手席に乗り込んでビール飲んでたりする。 自衛隊が対向車線の中央分離帯を越えてくるので、「バカヤロー」と怒ると、泰淳さんに怒られる。その後、頭に血が上って無茶苦茶荒い運転をする百合子さん。 変な夫婦だなあ。 巻末に泰淳さんは日記には富士が美しいと書いてないと、記している。 それでも富士山麓の自然の雰囲気と過酷さが伝わってくる内容だと思う。最初は、冬は東京に帰っていた筈なのに、何で厳冬の年末年始を過ごすんだろう。そういう説明は全然ない。日記だから。 「暮れ方のサクラは一番きれいだ。何度でも観てやる。これはみんな私のものである。」 人に読ませる気があったら書けない文章だな。 勿論、続きも読むつもり。
何回読んでも、最後まで読みきれない本ってやつが、たまにある。この本が読みきれなかったのは三度目。ああ、まさに3度目の正直だったのに。また今回も読みきれなかった。これはもう買おう。うん。それで読むか、きっぱり諦めよう。 それはともかくとして。本書は田村俊子賞を取った名随筆である。人が、ご飯を食べたり...続きを読む買い物したり、そういう細々した事って、なんてまあ読んでいて楽しいのだろうか。富士山麓の麓の避暑地での、本当になんでもない日常。だけれど文章にすると、本当にささやかで愛おしい。大したことが書いてないと、退屈なさる方もいるだろう。でも、好きな方は本当に、武田百合子の文章にハマってしまうはずだ。 私は、日記を読みたい方には、今後、この本と、永井荷風と、正岡子規の随筆を勧めようと思う。どれもちょっと似てはいないだろうか。美味しいものが好きで、小さな日常に、豊かな精神世界をぎゅっと凝縮させて暮らしていたひとたちの記録ってところが。 やっぱりきっと、もう一度読むって、私は言い出すのだろうなあ。
小説家、武田泰淳の妻、武田百合子氏の日記です。 私は再再読くらいで、小説家、泰淳の著作は読んだことがなく、百合子氏の方が知っていますね。 日記の中では夫、泰淳があり、妻の百合子があるって感じですけど、私の中では百合子氏が「主」というか。 こちら上巻は、昭和39年7月から昭和41年9月までの記録で...続きを読むす。 主に富士山の麓での生活記録で、自然の美しさ、厳しさも「当事者」として瑞々しく描かれていますが、時折見せる鼻っ柱の強さが私は好きで。 この時代のことなので、小説家たる夫に甲斐甲斐しく尽くして、夫も「主然」としていて……というのもあるにはあるのですが、概ね鼻っ柱の強い女性です。 百合子が泰淳を乗せて車を運転していたとき、自衛隊の車と諍いになって。 相手が悪いと息巻く百合子は隊員に「バカ!」って言うんですが、横に乗っている泰淳が「男にバカと言うとはなんだ!」って激怒するんですね。 それに対して百合子はその場で泰淳に何か言ってはいないようですが、「隣にも敵がいるとは」みたいな感じで、泰淳が暴走運転が嫌いなことを知っていて、ものすごい暴走運転するんですよ。泰淳は事故の実験の人形のように固まっていたみたいで。 そういうところがとっても好きです。 私もそのくらいの復讐がしたい笑 これを再読しようと思ったの、阿久津隆さんが「読書の日記」の中で読まれていたからなんですが。 本書の中で、交通事故の記述がちょくちょくあって、実際に事故が多いというのもあれど、それを記録に残しているところに、そういうところに目の行く、注意の行く人なのかな、と思ったのですが。 そこでハッと思い出したのが、阿久津さんが書いていたこと。 泰淳が事故にあいかけて百合子は心底恐怖を感じるんですね。嘔吐してしまったほど。 阿久津さん曰く、そこから事故の記述が目立つようになった、みたいな。 (めっちゃ意訳ですが) たしかに。 私の中でも、百合子が泰淳の事故未遂後、そういうことに深層心理で気持ちがいっていて……とか思いました。 点と点が繋がる感がありましたね。 まさに、一人の人が一日一日書き溜めている日記を、あとから第三者がいっきに読むからつながる筆者の深層心理、みたいな。 ただ思ったのは、泰淳の事故未遂は上巻の中盤あたりで、それまで……この出版されている日記の前が実際どうだったのか分からないのと(事故未遂前から注目している人だった可能性も)巻末に寄稿されいる大岡昇平の文章の中でも、中央高速道路が開通して事故が多くなったこと、そして事故ったら大抵死んでしまうとも書かれているので、時代的・場所的にそういうのに意識が向きやすい時だった可能性もあるな、とは思いました。 中下巻読めばその辺りも見方がまた変わるかもですね。 〘クスっとポイント〙 運転中、いわゆるおカマほっちゃうのですが、その理由が(意訳)「イキった車だから止まらないで信号が変わっても進むと思った」 分かります笑 そんなナリして法律遵守!? って思うことありますよね汗 偏見に満ちた目で見てるってことですけど笑 〘こんな人におすすめ〙 日記好きさん。 昭和の、その時代にしては自由な夫婦もの読みたい方。 市井の人の描く自然描写に美しさを感じる方。
阿久津隆さんの「読書の日記」にて、読まれていた本。 以前より、気になっていてようやく手に取ることができた。 僕は何より、ポコが好きです。 残りの2巻もちまちま読んでいこうと思います。
富士山麓の山荘での日常を綴った日記。筆者の家族の日常を書いているので、何も大きな事件は起きない。ただ日常が描かれる。少々退屈。 買い物の記録も多く、50年以上前の物価が分かる。今と比べて全然安いものもあれば、あまり変わりがなくない?というものもあり面白い。 日記の文体が参考になった。
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