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紀伊の生みし知の巨人、南方熊楠。彼と昭和考幽学会の出会いが、粘菌の宿った美しき自動人形を誕生させる。一大昭和伝奇ロマン!
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Posted by ブクログ
本当にすごい本。鬼滅の刃っぽいけど、大正に実際にあったんじゃないかという気がしてくるほど描写が優れている。
歴史改変ものが好きなら、是非オススメしたい一冊。スチームパンクではないし、話の核となるガジェットも全然違うけど、分かり易く言うなれば、昭和初期の日本で『屍者の帝国』をやっている感じ。この時代にもっと詳しければ、史実との違いを踏まえた上で楽しめたんだろうなぁ、とは思うけれど、物語を追うだけでも十分楽...続きを読むしめた。 設定や舞台が漂わせる浪漫のみならず、ときおりコミカルな(一方で文章の堅実さをかなぐりすてることもない)描写が顔を覗かせるのも、読んでいて面白かったポイント。 一方で、SFとしてどうか、と言われると、完成した天皇機関はともかくとして、もともと組み上げるつもりだった、粘菌とパンチカードを組み合わせた仕組みというのが、果してそれで歯車と上手く組み合って動くのか、という点で今一つピンと来なかった。現行の粘菌コンピュータを知らないから、或いは上手く想像が及ばなかったというだけかも知れないけれど。 ガジェット的なものに対しては、そういう感想を抱いた一方で、作中で取り扱われる観念の解釈・アプローチに関しては、非常に好ましく思った。オカルト的な要素をブラックボックスで終わらせず、理論的な仮設を立てて説明していく様子は、非常にSFらしいアプローチであったし、以前の仮定を踏まえた上で、新しい解釈を示し、やがて結論へと導いて行く構成は、理路整然としていて、腑に落ちた。 非常に読みやすく、一方で平易になり過ぎず、昭和初期の残り香のようなものを味わえる。派手な剣劇などはないが、大いに楽しめる歴史小説だった。
昭和初期の人物や事件をなぞりつつ粘菌コンピュータが完成したことで大事件に巻き込まれていきます。飄々とした描写と登場人物たちが動き回る様子は読んでいて気持ちの良いものでした。 そして粘菌です。粘菌好きなので粘菌がどうコンピュータになるのかなどの描写が最高です。粘菌コンピュータを通して人を人としている...続きを読むのは何かを考察していくのも良いですね。
昭和初期、南方熊楠を中心として紡がれる壮大な因縁曼荼羅。 熊楠、乱歩を初めとする実在人物を、現実のエピソードを基に魅力的なキャラクターとして描く。 かつ、昭和天皇即位〜2・26事件の激動の日本を舞台とした血湧くSF展開。 夢久、PKディック、大槻ケンヂ、エヴァに通ずる奇想。 新元号1冊目の読書と...続きを読むして申し分ない、大々満足の読書体験だった。
昭和初期の日本を舞台にした歴史SF。思考するAI粘菌「天皇機関」を巡って、南方熊楠が革命主義者と対決する。江戸川乱歩やら北一輝やら孫文やら、歴史上の実在の人物が次々と登場してきて、とにかく展開が賑やかだ。 タイトルどおり、現実なのか夢なのか、お祭り騒ぎのような展開に飲まれた。南方熊楠と北一輝の問答が...続きを読むおもしろい。
先日の柴田勝家の短編が思った以上に良かったので、長編も手に取ってみる。柴田勝家「ヒト夜の永い夢」。 明治から昭和にかけて活躍した、実在の博物学者南方熊楠(みなかたくまぐす)を主人公にした歴史改変SF。 希望の動きをパンチカードとして表し、それを手動で読み込ませて機会を動かす人形が開発されたのに対し、...続きを読むパンチカードの代わりに彼が研究していた粘菌をパンチカードに模して構成し人形に搭載。 すると粘菌がAIのようになりただのからくり人形が意思をもった自動人形になってしまったという私好みの実にベタなSF的な展開から、国家や天皇まで巻き込んだ大騒動へ。 ひいては史実として実在する二・二六事件へと虚実がマージされていく。 600ページくらいあり、途中だいぶハードな意識論のように難解な部分も展開されるのだけれども、それを難しくて面倒と思わせない語り口は実に見事。 この作家は、人間の魅力を描き出すことがとても上手。 なので小説を読む上でまず欠かせない、登場人物への感情移入が容易にできるので、物語が長くても苦にならない。 別に自分は小説を書くわけではないが、ものを語る手段としてすごく勉強になったなあと、本筋はもちろん、それ以外の部分でも感心することが多い作品でした。
1920年代~30年代を舞台にしたお話で、実在の人物である南方熊楠を主人公としています。人間の動作(右手を上げる、左足を上げるのような)を膨大な数粘菌に覚え込ませ、それを組み込んで自動人形を作ろうというお話。SFぽくもあり、和風ファンタジーぽくもあり。 結構ハチャメチャなお話です。幻想小説ぽくもあり...続きを読む、読む人は選ぶかもしれません。実在の人物が多数登場するので、歴史に詳しいと楽しいかも。
南方熊楠にはじまり、福来友吉、江戸川乱歩、宮沢賢治など有名な実在の人物たちが天皇機関をめぐって大暴れするSF。伝記ロマン。 分厚い割に、ドタバタとした感じというかコメディ調な部分が多いのですぐ読めた。 脱糞だ嘔吐だがやたら多い。 ただ、SFがそんなに得意ではないので夢の話とか天皇機関の話はなかな...続きを読むか頭に入ってこなかった。 特に最後のほうの天皇機関が延々と一人語りするとこはきつかったかな。 決戦シーンも文章が若干読みづらくて盛り上がりにくい気がした。 あとは女性の扱いはひどいというか…一昔前の捉え方かなと。 舞台が昭和だからそうしてるというより作者の考えかなぁという感じもしたけど…実際どうなのかはわからない。 第一部のほうが読みやすいし勢いがあって好きだけど、第二部になると私の好きな乱歩が登場するのでそれはそれでやっぱり楽しかった。 平岡夏子ってだれだろうとおもってて読み終わってから知ったらなんとあの人の祖母…じゃあの賢そうなあの子が…。 ラストのしめかたはすごく好き。
南方熊楠が主人公。 昭和初期の混沌とした時代の中で、粘菌による人造人間の天皇機関を作るがテロ集団に奪われてしまう。 學天則とかが出てくると帝都物語を思い出すが、ストーリーはこちらの方がより幻想的。オドロオドロしい感じとかがホラーっぽくて良い。ただ台詞回しが読み難いところがあった。 実際の歴史との違い...続きを読むがわかればもっと面白いと思った。
時は昭和2年。粘菌学者の南方熊楠は昭和孝幽学会という謎の団体に勧誘される。そこは、本流を外れた亜流の学者集団であった。自動人形"天皇機関"を作り上げ、天皇に献上することで自らの存在を知らしめようとする彼ら。南方は天皇機関の頭脳となる粘菌コンピューターを完成させるが、そこに革命家...続きを読むの陰謀が介入し事態は混沌を極めていく。 もしも昭和初期に粘菌によるAIが完成したら、という歴史改編SF。登場人物表を見れば江戸川乱歩や宮沢賢治など有名人の名前が並び、それを見ただけでもワクワクする。 また、著者は本書の内容について「きらら4コマ」に例えている。確かに宿場に集まって騒がしくも天皇機関を作り上げようとする様は、謎の文化部が舞台の日常系と言っても過言ではないかもしれない。(ただし、性別、年齢、鯨飲、吐瀉物には目をつむることにする。) 昭和初期の怪しいやつらオールスターゲームに並行して展開される現実の認識に関するSF的考察。いろいろ盛りだくさんで大満足の一冊です。
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