巷のシンギュラリティ論に対して、著者はアンチシンギュラリティで、扇情的にAIが取り上げられることについてはものごとを歪めるものとして、不満に思っている。少なくとも彼らが言うようなシンギュラリティはすぐにはこないと。AIは技術であって、哲学やその類のものではないという意見だ。人間に対するAIの強みはどこになるのかというと明確で、リソースをほぼ無限に拡張できる点と、記憶が完璧な点だ。これにより、これまでできなかったことができるようになり、ある種のもの(チェスや将棋やクイズ)については人間よりもうまくできるようになっている。ただ、それが人間を超えたということにはならない。著者も『AI vs 教科書が読めない子どもたち』や『はたらきたくないイタチと言葉がわかるロボット 人工知能から考える言葉』などで言われているように機械による意味理解は大変難しいという。その通りだと思うし、この認識については、広く共通認識となってほしいと個人的にも思っている。
また、ディープラーニングにも得意不得意があり、それも含めて徐々に浸透することが見込まれるので、しっかりと足元を見て推進していこうよ、というのが著者のメッセージなのかと思う。