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十代で捨てた家だった。姉も兄も寄りつかない家だった。老父は心臓病を患い、認知症が進む。老母は介護に疲弊していた。作家は妻とともに親を支えることになった。総合病院への入院も介護施設への入所も拒む父、世間体と因襲に縛られる母。父の死後、押し寄せた未曾有の震災。――作家は紡ぐ、ただ誠実に命の輪郭を紡ぎ出す。佐伯文学の結実を示す感動の傑作長編。毎日芸術賞受賞。
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Posted by ブクログ
少年だった。家族を捨てて家を出た。老いた父と母。震災。「還れぬ家」と題した作家になった少年の現在。生きている人間に時は流れる。読みながら、揺さぶられているのは、ぼくのなんだろう。
『渡良瀬』にすっかりはまって、続きのような(私)小説を読む。 前作は冷え冷えとした夫婦関係が印象的で、小説を彩っていたと同時に圧倒された。 ところがこの『還れぬ家』によると、その後、主人公は離婚したのだった。 新しい妻を迎えて、この度はなかなかいい関係なのである。 (私小説だから前作の続き...続きを読むすると) 「えっ!」 しかも、 若いときに家出した生家は父親が心臓病と認知症がからみ、母親が困窮している。 それをこの夫婦は助けているのである。妻にとっては苦労と思いきや、 妻は賢く、和気あいあいと、協力しているのである。 「ええっ!こういう展開?」 と考え込んでしまうが、人間味にあふれその描写が妙に好もしいのでもある。 時代設定が2009~12011年、舞台が仙台なので東日本大震災にも遭遇する苦難もある。 ほんとに私小説というよりも実録のように思ってしまう。 とにかく私小説であって私小説でない気がますますしてくる。 もちろん、文学であるわけで、普遍を描いている。 だから私小説であるということは関係ないのである。 筆力の凄さなのだと思う。
認知症の父に向き合う、ひたすら日常を重ねた物語。仙台が舞台のため、東日本大震災の話も出てくる。 特にドラマチックというわけではないのだが、何故か読まされてしまう。 家というもの、家族というもの。 これから直面するであろう現実をみたきがする。
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