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江戸城の台所人、鮎川惣介は八朔祝に非番を言い渡された。料理人の腕が試される日に、非番を命じられ、納得のいかない惣介。心機一転いつもと違うことを試みるが、上手くいかず、騒ぎに巻き込まれてしまう──。
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Posted by ブクログ
将軍家斉の食事を用意する、江戸城の台所人、ぽっちゃり系・鮎川惣介と、その友人で、大奥の添番(警護)を務めるイケメン・片桐隼人のシリーズ、第4弾。 京都から下って来た、西の丸の料理人・桜井雪之丞のイケズぶりもいい味を添える。 時は文政四年(1821年) ペリー来航は、家斉の子である次の将軍・家慶(い...続きを読むえよし)の代、1853年だから、「幕末」にはちょっと間がある。 しかしすでに、日本列島のまわりは外国船がうろうろと嗅ぎまわり、国内は終末の予感を漂わせている。 隼人は常に「悩める青年」風であるが、妻の懐妊を素直に喜ばず一悶着。 しかしそれは、先の世への不安、息子に自分と同じ武士の道を歩ませることへの不安から。 子の未来を案ずる余りの、言ってみれば親バカなのだから許してやってほしい。 鮎川家は相変わらず、犬も食わない系のしょーもない夫婦喧嘩を繰り返し、娘にやり込められたりしている惣介だ。 その惣介の失言にいちいち絡んではべそをかいている、一見面倒くさい妻・志織だが、芯は賢い女性と見えて、ときどき鋭い発言をする。 今度も、志織さんがそこを心配するのなら何かあるのかもと思わせる伏線が・・・ 意外な有名人だった!というオチや、隼人と同じかそうでないのか、武士である事に見切りをつけて、長年仕えた家を出る者や。 人生いろいろであるが、長年働いてきて、さて第二の人生をと思ったところでの悲劇はやるせない。 「池袋村の女」と「大奥」の強力タッグが呼ぶ恐ろしい事件。 大奥の魔力に魅入られたのか、天性のサイコパスなのか。 もう一つ重要な鍵は、伊能忠敬が作り上げた日本の沿岸図。 言うまでもなく国防の要となる。 そして、惣介さんはまたいろいろ仮装させられて潜入調査なのだった。 鼻が効き、料理の腕は超一流、そしてだいぶ役者である。惚れてまう。 それだけに、最後の場面はなんともせつない。 第一話 小判の雨 第二話 池袋村から来た女 第三話 風切り羽
江戸城の台所人・鮎川惣介と大奥添番・片桐隼人の幼なじみコンビが様々な事件に挑むシリーズ第四作。 台所人の一番の腕の見せ所「八朔祝」の日に非番を言い渡されショックを受けた上に当日は家でも外でも散々な一日となった惣介。 それでも麦作という男と出会い、訳ありげながらも下男として雇ってみれば働き者で妻はご...続きを読む機嫌、息子・小一郎は懐き、ホッとしていたのだが…。 麦作が「倅によく似てる」と気に掛けている若者は…ねずみ小僧? 「池袋村生まれの女は奉公に来ると祟りを引き起こす」という都市伝説のような話で奉公先を追い出された少女なみは本当に祟りを引き起こしたのか? 大奥の井戸から血が混ざった水が出てくるようになったのは、誰かが飛び込んだのか? 今回は水野忠邦&懐刀・大鷹源吾の出番はなし。代わりに田沼玄蕃頭(田沼意次の四男)が出てくる。水野忠邦だけでなく田沼玄蕃頭にまでマークされる惣介。すっかり有名人だ。 しかし誰の前であろうと隼人を守ろうとバレバレな嘘までつく惣介の姿は家斉が気に入るだけあって田沼にも好印象だったようだ。 シリーズとしては毎度お約束の夫婦喧嘩のシーンに子どもたちの成長が垣間見える。 惣介も志織も互いを気遣ってはいるものの、それが上手く伝わらなかったり掛け違えたりの末の喧嘩。その誤解を解いたり二人を上手く繋いであげるのが娘の鈴菜。見た目も言葉遣いも相変わらず雑だが、よく両親を見ていることが分かる。また嫡男・小一郎も料理の指南を自ら申し出て気遣ったり、なみの窮地を救おうと子どもながらに男らしさを見せたりとなかなか頼もしい。 一方、片桐家では隼人の妻・八重が懐妊という嬉しい知らせが。なのに隼人は八重に娘なら良いが、息子なら実家に連れて帰れと言う。 シリーズを読んで来た者としては隼人の気持ちが分かるが、惣介はまたもやトンチンカンな勘違いをする。それでも隼人は上手く切り返しただけで怒らない。惣介の仲介で隼人夫婦の行き違いも解消出来たので、プラスマイナスゼロというところか。 雪之丞も曲亭馬琴も相変わらず上から目線の物言いでムカッとするところもある一方で気遣ってくれたりその知恵や知識で物事を見通してくれたり。クセのある人たちとの付き合いは難しいが面白い。 今回感じたのは同じ環境にあっても幸不幸は人それぞれ。そしてそれはちょっとした価値観の違いや考え方の違いによる。 ねずみ小僧がばら蒔いた小判で幸せになった家族もいるだろうが、一方で止めていた賭事に再びのめり込み殺人にまで発展した家族もいる。 大奥を地獄と見る者もいれば華やかで美しい世界と見る者もいる。 隼人の心には剣術を人斬りの技と嫌う部分とお役目を全うするための必要な技と肯定する部分がある。 麦作にも良く働き惣介一家を見守る下男の顔とは別のところで様々な思いを抱えていた。 このシリーズは突然核心をつくようなところがあって驚かされる。登場人物が少ないので見当はつくものの、麦作といいなみといい、辛かった。 どんな人にも、たとえやむを得ず罪を犯した者にも思いを寄せ、何とか助かる道や前を向ける道はないかと動く惣介は人を信じている、いや信じようとしている。逆に隼人は仕事柄人を疑うことが多い。それでも惣介に付き合って信じようとしてくれる。 それだけにこの結末は辛かった。 最後の惣介の涙…助けられなかった命を思ってか、思いをなみに届けられないままの別れを悔いてか。そこに寄り添う家斉も切ない。 せめて麦作は新たな人生を全うして欲しい。
第四弾 例によって続きの三話構成、 不幸な境遇の女の子とか隠密とか義賊、 結構関連付けて上手く話が進む
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