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北海道の小さな村を郵便配達車でめぐる女。川のほとりの木造家屋に「フランシス」とともに暮らす男。小麦畑を撫でる風、結晶のまま落ちてくる雪、凍土の下を流れる水、黒曜石に刻まれた太古の記憶、からだをふれあうことでしかもたらされない安息と畏れ。――五官のすべてがひらかれてゆくような深く鮮やかな恋愛小説。
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Posted by ブクログ
ただただ美しい。その一点に尽きる大人の恋愛小説。仕事を辞め、中学生の一時期暮らしたことのある北海道の安地内村に東京から引っ越し、非正規で郵便配達人とて暮らし始めた三十代半ばの桂子は配達を通して知り合った少しミステリアスな和彦と恋仲となる。小さな村のこと、桂子は和彦の不穏な噂を耳にして心を騒つかせる。...続きを読む北海道の自然、2人がリビングのステレオで聞く様々な風景の音、局長や御法川さんの温かい優しさ、それだけでなく、一向に心を開かない和彦へのもどかしさや、桂子の気持ちを踏みにじるような秘密を持つ和彦さえ美しく感じた。心に残る一冊。
道東の自然を求めて移住してきた女と男。女は都会の喧噪と人間関係に疲れて、男は違った事情がある。女は純然と道東の自然とノスタルジアを求めているが、男は私生活が複雑だ。そして生き方も趣味的だ。そんな2人が出逢って愛し合う事に筋書き場の整合性を求めても無駄だろう。「女と男はそう言う物」と作者は思っているに...続きを読む違いない。 それは精緻を極める道東の情景描写で判る気がする。 しかし、作者の自然描写力には息を呑む。同じ箇所を何度も読み返して嘆息してしまった。そして、その間に2人の性描写がちりばめられ、艶めかしさを増す。 女と男の恋心に付きものの様々な揺らぎ、それを傍らで見ながら、「フランシス」は独立している。2人に干渉する事も無いが、自分の都合で2人を邪魔する事も有る。「フランシス」は自然の中で只淡々と『生きている』。 女と男のように人間は自然と調和しようともがく。でも、それはそれで良いのだと、沈んだフランシスの残した星空の結末で思った。 久しぶりに小説を読んだが、これは良かったなあ。
確かにフランシスが沈んだ・・最後がちょっとわからなかった。 久しぶりに松家さんの物語を読んだ。「火山のふもとで」に感動して以来。 松家さんの世界観らしい書き方を感じた。
北海道の田舎というと、なんだかすごく特別な感じがする。もちろん全くの偏見なんだろうし、まぁ良い意味でだけど、ある意味思い込み。でも実際のところどこも一緒なんだよなぁ、と。何もなくてやることないんだから、そうすっと本能的に人間がやりたいことって話になって、もう世界どこ行っても田舎なら文化の違いとかなく...続きを読むてなんとかなるんではないか。 しかしどこ行っても田舎は一緒だー、と言ってもやっぱ北海道の大自然は特別って言うか、10度切っただけで寒いわー外出たくないわーとか言ってるのに、くっそ寒い北海道には行ってみたくなるという不思議。
情景が浮かぶ文章を楽しませてもらった。ストーリーは思ったよりシンプルで、終わり方も良かった。短編小説を読んだような軽い感覚。少し物足りないので、次作は長編を期待します。
北海道が舞台。美しい風景が目に浮かぶ。 出てくる食べ物がおいしそうで。 こういう生活が気負いなくできたら、最高だなぁ。
ただただ、水に流される景色。その音、色、速度が語られる冒頭そのままに、一組の男女の時間が流れていきます。 非正規雇用で貯金を切り崩しながら懐かしの地で暮らす女性と、時間も収入も余裕のある男性。 一見真逆のように見える二人ですが、しかし自分の希望する時間(スタイル)を生きているという意味では同じだ...続きを読むと思えます。 どこに繋がっているか分からない、どこまで続くのか分からない、このままずっとどこまでも続くとも思える川の流れのような二人の時間。 しかし、突如堰き止められてしまった冒頭の景色のように、その時間も終わってしまう。。いや、終わりはしないけどもその時間を覆うものがガラリと変わってしまう。 結末としては、ありふれた展開の恋愛小説ですが(この作品は恋愛小説なのか?という疑問はありますが)、その言葉(文章)から溢れる洗練されたとてもキレイな時間・空気を楽しむことができると思います。 ※最初にタイトルを見たとき「沈むフランス」と読んで、興味を持ったというのは内緒です。。。
「いつのまにかたどりついたところに、人は立ってるの」 目の見えない老婦人から、北海道に帰った桂子に掛けられた言葉。 自分の気持ちに正直な恋は時に辛い。 ラスト「沈むフランシス」とは・・なるほど、そういう事か。 綴られた言葉がしんしんと静かに降り積もるようで 品が良く素敵な小説。
北海道東部を舞台にした大人の恋愛小説。 東京の商社を退職し北海道で郵便配達員となった桂子。 川のほとりに一人住んでいる和彦と出会い、二人は恋に落ちる。 田舎特有の周囲の目や、それぞれが抱える事情などを乗り越えて二人はどうなるのか。恋は成就するのか。 前作同様、何よりも自然描写が美しい。 真っ暗な闇...続きを読むに瞬く星。オレンジ色の夕日。そして結晶のまま地上に降りる雪。 話の展開を追うのではなく、作品の中に丁寧に描かれている世界に中にどっぷり浸るのが醍醐味。 と言うのも、平凡と言えば平凡なストーリーだから。 それでもここまで読ませるのはさすが。 それに表紙の犬の写真がいい。なんで犬なんだろうと思い読み進めると、なるほど合点がいった。 前作が素晴らしかっただけに、今回はどうだろうとちょっと不安だったが期待に違わない作品だった。 ただ、個人的な意見として和彦は主婦顔負けの料理を披露し、インテリアにもこだわり、庭仕事も怠らない。そしてオーディオマニア。 ちょっと気持ち悪い、完璧すぎて。実際いたら、引くかも・・・。 まあ、いいんだけど小説だから(笑)
沈むフランシスというどこか不安な気持ちにさせるタイトルと、 同じく不穏な空気をはらむ冒頭のシーン。 けれど読み始めてみれば淡々と静かに物語りは進んでいく。 広大な北海道の道東地方らしい地域が舞台になっていて、 そこの空気がうまく伝わってくる文章だった。 とくに秋から冬にかけての描写はとてもよかった。...続きを読む 主人公の二人もどこか色彩がぬけたような生活観を感じさせない 人物設定のせいか、静かな北海道の景色にしっくりと溶け込んでいた。 現実逃避をそうとは自分にも感じさせないように日々の細かな働きに手を抜かない二人。 そんな二人がゆっくり現実に向きあっていく様子がとてもよかった。 そして気になったのが長谷川の夫がなにを送りつけてきたのか。 なにかを録音したものではないかと思うけど、その内容を思うとぞわりと怖い。
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