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「夏の家」では、先生がいちばんの早起きだった――。物語は1982年夏、10年ぶりに噴火した浅間山のふもとの山荘ではじまる。国立現代図書館設計コンペの闘いと若き建築家のひそやかな恋を、この家とこの土地に流れた幾層もの時間が包みこむ。朝日、毎日、読売、東京、共同ほか各紙文芸時評で話題沸騰! 胸の奥底を静かに深く震わせる、鮮烈なデビュー長篇。
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Posted by ブクログ
<poka> 坂西と雪子が夜の暗い道をホタルを見ながら歩く場面が好きです。 読み終えるのがもったいなくて、2回読みました。
こういう仕事がしたいと思った。 こういう人たちに囲まれて、教えてもらいたいと思った。 穏やかに優しく正しくまっすぐに紡ぐ言葉たちにハッとさせられた 最近読んだ小説の中でも、1番好きだった。 また読み返す本
過去の本の雑誌で書評されていてずっと気になっていたが、これまでノーマークだったのが恥ずかしほどの実力ある作家。1958生まれで早稲田一文卒だから坪ちゃんと同じ。元新潮社で「考える人」編集長だから接点もあったのではないかな。 ・静謐で削ぎ落とされた文体は、常に“死“を感じさせる緊張感に溢れている。かと...続きを読む言って読者に緊張を強いるものではない。 ・台詞や立ち振る舞いなどの人物造形が秀逸で、登場人物みんなが愛しくなり別れがたくなる。 ・ラスト近く、由里子が録音したセリフとピアノ演奏を先生に聴かせる場面、こちらの感情も揺さぶられる。 ・胸に迫る台詞の数々、見事な比喩の使い方(春樹ほどやり過ぎないのが良い)日本人作家ならではだと思う。デビュー作がピーク(白石一文)にならず寡作でいいから長続きしてもらいたい。 5.0
とても良い本と出会えた。静かで、穏やかで、少しの孤独を含んだ、独特の本の世界だった。先生の話す言葉は、印象に残るものがたくさんあった。
静かで丁寧で美しい描写にため息が出ました。 淡々と進んでいきますが、過ぎ去った過去を懐かしむ、ということなら納得です。 建築には詳しくありませんが、作中に出てくる建物のモデルがあるならぜひ足を運んでみたい。特に飛鳥山教会は、見たこともない建物なのにすっかり気に入ってしまいました。
美しい自然描写と確固たるものへの眼差し,色々な建築への言及,しみじみと心に染み入りました.恋愛とも言えないような心の揺らぎや,先生を取り巻く人々の優しいあり方が,この作品の雰囲気を高雅なものにしていて,極上の読書時間を過ごしました.
東京に出張の際に読もうと決めてた一冊。たぶん吉村順三がモデルとなったと思われる先生と、駆け出しの所員のぼく。「夏の家」は私には無かったけど、同じように何かを学び生み出すことに必死だった新人時代を思い出しながら読んだ。大好きな一冊になった。感涙。
「考える人」という季刊誌が好きだった。準備号から始まる定期購読を申し込み、その分厚く少しばかり変わった組み合わせの文章の並ぶ雑誌が届くのをいつも楽しみにしていた。ジュンパ・ラヒリの翻訳が載り、養老孟司の随筆が載り、橋本治の古典芸能への考察が載り。中でも建築家中村好文の住宅に関する文章が好きだった。そ...続きを読むの延長で「ひとりよがりのものさし」という写真集のようなエッセイ集を手に入れ、長生郡まで足を運んだりもした。その雑誌の初代編集長が本を出版したことは知っていたが、題名から勝手にイタリアを舞台にした小説なのかと想像したまま今まで手に取らずにいた。天邪鬼な性格故の食わず嫌いの典型である。 ふとしたことで書棚に置かれた本を取り読んでみて唸ってしまった。これは中村好文をモデルにした小説じゃないか。思わずかつて連載されていた別荘造りの様子を伝える文章と写真やスケッチがよみがえる。なるほど火山というのは信州の山のことだったのか。主人公たち世代の若者が、雑誌連載の中に登場したスタッフと思しき若者たちと重なる。 登場人物の中の下の名前で呼ばれる若い二人の女性は、主人公にとって親密な関係の人物であることは冒頭から容易に想像がつく。それが分かっていながら最後まで物語を繋ぐところに、面白さもあるが、あざとさのようなもの、単純な思考の男のメンタリティーが臭う。嘘臭いと言えば嘘臭い。それでもそうあって欲しいと願う気持ちは解らないでもない。ただそこに留まっていては何処にも進んで行かないことを、この歳になると自覚しているだけ。 考えてみると、松家仁之が編集長を辞めた頃から読み残す頁が増え、定期購読をしなくなったのは、相性のようなものがあったからなのかもしれない。緻密さと大胆な嘘を程良く混ぜ合わせた小説は、嫌いではない。
端正な文章で描かれた青春小説の傑作、しかもこれがデビュー作ということなのだから驚くしかないのだった。 あそうそう雪子が呼び捨てなことにはずっと違和感あったんだけどラストまで読んでなるほどねと。
著者のデビュー作となる長編小説。 舞台は1980年代の東京、軽井沢。小説の中の時間と、空間がすがすがしい。
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