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学校は出たけれどもっと勉強したい人、抽象的な議論がどうも苦手だという人。そういう「バカ」たちのために、本書はひたすら「事実」に就くことを指針とし、インチキ現代思想やオカルト学問、一時の流行に惑わされず、本を読み勉強するための羅針盤となるべき一冊である。本邦初「読んではいけない」リスト付き。
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Posted by ブクログ
なるほど。「バカ」が嫌いな著者による、「バカ」を減らすための書か~。「バカ」を自認する筆者による、同類に向けた本だと勝手に思ってたから、良い意味で裏切られました。いわゆる”古典”であろうが退屈なものは退屈、っていう切り捨て方は魅力的だし、内容は秀でているけど難解だから「バカ」には向かない、っていう評...続きを読む価も分かりやすい。最後にオススメ本がまとめられているけど、流れに沿って読み進めているうち、そこに上げられている本くらいはせめて読まないと、って気分にさせられる。読み物としても十分に楽しめる、優れたブックガイドだと思いました。
この本の中の著者の読書量・勉強術には影響を受けた。 啓蒙書として読んだが、それも時には重要だと感じる。
哲学等の抽象的な議論が苦手な人=バカ向けに、著者が読書法を伝授する。はじめに結論を述べると、バカは歴史を優先的に学習すべきである。それは、たとえ本格的な学術書でなかったとしても、小説や漫画をきっかけに歴史を知るべきということだ。 入門書の選び方についても語るが、その際注意すべきこととして、最新の...続きを読む知見が載る本が必ずしも初心者に向いてるとは限らないことである。また、参考文献リストが充実してる本は、良書の可能性が高い。 さらに、各分野における選書方法や学ぶべき最低限の知識にも触れる。経済学は資本主義と貨幣について、社会学は統計データを扱っている、心理学は怪しいものが多い、宗教学は概論よりも個別の宗教を学ぶべきなど、具体的に読むべき本を挙げている。本書は読むべき本のリストを挙げているが、その一方で、バカには向いていない、あるいは、そもそも本としてトンデモのものまで網羅している。そのため、読むべき本とそうでない本のリストが瞬時に分かるのが、本書が優れている点である。 最後に、どの本を読んで学ぶにしても、共通することとして、事実と意見を混同してはいけないと著者は強調する。相手に誤った知識が見られたときに、個人の意見を交えずに、事実をベースに指摘することが大切である。
書いてあることにはおほむね賛成 一部、統計学がなぜ信用に価するのか理解してゐない人による感想が見受けられた。統計学が用ゐてゐるものは統計といふ実證的な方法で明かにされた事実だ。その事実はすべて蓋然性が高い。しかしその事実にもとづいた意見(推測など)は事実かどうかわからないから、また別に蓋然性が高い...続きを読むのか低いのか検討されなければならない。 この、事実を足がかりにすることこそが学問において根幹なのである。もし事実を根幹に据ゑなかったら、妄想でも空論でもなんでもありの意見がまかりとほってしまふ。 いまでは生物や社会科学などの研究では統計が欠かせないものである。
本を読まない生徒対策になるだろうかと思ったら、自分向けの内容でした。 一部の人文科学が不必要に難化している現実と、教養がないばっかりにその現実についていけない、しかしインテリたちにバカと思われたくない人々。どうやって本を読めばいいのかという話。 難しいと思えば読まなければいい、と言われてほっとした。...続きを読むこれが読めなきゃ…って強迫観念を持ってるのは私だけじゃなかったんだなぁ。 私自身「不純な動機の読書家」ってのはよくやるから、それでいいのかーって。 まずは、「事実につく」。自分で学ぶときにも、生徒に教えるときにも、忘れないようにしなきゃ。
ここで言う「バカ」とは「ポストモダン」が理解できない人のこと。「バカ」な人はひたすら歴史を勉強すべし、というアドバイスは乱暴だけど説得力がある。
いつもどおり小谷野節を楽しめる。分野別に基本となる本を解説。文学作品の年代別・性別(といっても25歳上下と男女)ブックガイドは面白い。
題名から結構オブラートかけない話ぶりを期待して購入。チマタに跋扈する万人受け内容をよそ目に独自意見をつっこみ気にせずガンガン出してくる豪放磊落な内容は、読んでいて結構スガスガしかったです。著者の考えで共感したところやオススメ本は自分も実勢/読破してみたいなと。
歴史から手をつけることの有意性はわかる。しかし、歴史は物語であるという知識を私は捨てきれない。正しさの問題にもかかわる。
何かを学びたい、という知的好奇心はあるんだけれども、買ってくる思想書は前書きとあとがきしか読まない(読めない)人のための勉強法指南。小谷野が提案するのは「事実」の集積である歴史を学ぶことにより教養を深めていこう、という方法。歴史小説、歴史漫画をとっかかりとして、歴史的な知識を蓄積し、教養を深めていけ...続きを読むばいい。思想と違って歴史的事実に関しては「はやりすたり」がないから、学んでソンは絶対ない、と小谷野。思想や文学に接するのはその後でもよいということなのだろう。 小谷野が歴史の学習を勧める背景には、次のような問題意識がある(と思う)。八十年代のニュー・アカデミズムの流行は相対主義を知の領域に蔓延させた。ニュー・アカデミズムというとフランスの現代思想を核とした学問のスタイルのことだけれども、フランスの現代思想がやって来たことというのは、乱暴な言い方かもしれないが「絶対的真理」とか「客観的事実」という概念の破壊だった。こうした概念の是非を問うことは確かに意味のあることだが、俗世間ではこうした「高尚」な問題について考えてみないままそのスタイルだけが受け入れられてしまい、「ほんとうのこと」をまじめな顔して議論することを恥じる風潮や、歴史に対する無関心を生み出す一因となった。でも、知的な議論というは、たとえそれがカッコ付であっても事実を基盤をせざるをえない。例えば、太平洋戦争について議論する場合、皇国史観であれ、左翼の史観であれ、色が付いていてもひとまず手にとって読まなければ議論さえ成立しないのだ。つまり、小谷野が促しているのは、どんな方法であれまず土俵に上がること、知の現場に足を踏み入れることと言っていいと思う。 ところで小谷野はこうした文脈とは別に「知的な」書物は、「明晰に」、つまり判り易く書かれるべきであると書いている。こう書くと実に当たり前なことなのだが、近現代の知の領域では必ずしもそうでないんだな。デリダやドゥルーズ、ラカンの書くものはきわめて難解で、非論理的な書かれ方をしており、小谷野自身も「解らなかった」と言う。この本にはこうした思想家に対する批判もある。小谷野の批判する文体とはどのようなものなのか。去年読んだ本から面白い例を紹介しよう。 「肛門・男根…は価値を奪われた換喩的隣接性の中で機能し、男根状の糞塊という概念は隠喩的代置の領域の中で機能する」(『サイエンス・ウォーズ』 金森修 東京大学出版会 2000) これは『サイエンス・ウォーズ』(大変面白い本なのでそのうち内容を紹介します)にある現代フランス思想の文体のパロディの一例なのだが、一体何を言おうとしているか理解できるでしょうか? 「肛門とペニスはすぐ隣りにあるのに形は似ていないが、肛門から出てくる大便はペニスと形が似ているときがある」 …アホらしくなってくるが、思想の領域では実際にこういう文体がまかり通っている。 小谷野はこうした明晰でない文体、論理を厳しく批判する。こうした発言からも『バカのための…』における小谷野自身の学問観は保守的、あるいは古くさいと批判されうるものかもしれない。だが、僕自身は小谷野の議論はまっとうなものだと思うし、「面白さ」のみを追求するきらびやかでおしゃれな「思想の戯れ」は無内容と紙一重だとさえ僕は思う。 インテリの文体という事に関して付け足し。易しいことを難しく書くことなら誰でも出来るが、難しいことを易しく書くのはインテリの義務だぜ、と僕は思うのだ。だから、上のような文体で書かれた文章がいくらすぐれた内容を持っていたとしても、批判されなければならない、とも思う。だが、わけのわからん文章を書く人にはその人なりの理由はあるらしい。最近こんな文を読んだ。 なにしろ、文化が「文化財」「文化価値」として商品化され、市場で安易に消費されていく時代、そうした文化のあり方を批判する「文化批判」そのものでさえ、簡単に商品化されかねない。それを拒否しようとするアドルノや、彼の属するフランクフルト学派の人たちの批判の文体は、いやでも安易な理解をはねつける難渋なものにならざるをえない。めったに使われない言葉を選び、文法を無視し、わざと読みにくく分かりにくく書くという戦略がとられる。(『哲学以外』 木田 元 みすず書房 1997) アドルノはデリダやラカンとは全く別の思想的文脈に属するドイツの思想家だが、この人の書く文章もきわめて難解で翻訳がちぃともでない。上の引用はアドルノの文章のわからなさを説明してくれているが、本当にアドルノがこう思っていたのだったら、アドルノ間違ってるよなあ… 消費社会と戦うためにはそんな方法しかなかったんかい、と僕は思ってしまいました。
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