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友人の死に導かれ夜明けの穴にうずくまる僕。地獄を所有し、安保闘争で傷ついた鷹四。障害児を出産した菜採子。苦渋に満ちた登場人物たちが、四国の谷間の村をさして軽快に出発した。万延元年の村の一揆をなぞるように、神話の森に暴動が起る。幕末から現代につなぐ民衆の心をみごとに形象化し、戦後世代の切実な体験と希求を結実させた画期的長篇。谷崎賞受賞。
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Posted by ブクログ
読み終わった後しばらく放心して、自然と一人一人の決断や行動の意味をずっと頭の中で考え直していました。読む人によって受け取り方が大きく変わる、そして考えさせる非常に奥深い作品でした。 一言で到底言い表せないけど、「破壊」と「再生」という言葉が私にはキーワードとして浮かびました。 登場人物の多くは、地...続きを読む獄とも呼べるような現実と葛藤しながら闘い、自らの意志で決断し、行動を取っています。そこには凄まじいほどの「覚悟」があり、読んでいて、鬼気迫るものが感じられました。 大江さんの文体の特徴として、さまざまな比喩表現やバリエーション豊富な形容詞を用いて文章を修飾しまくっています。そのため、一つ一つの文章が長くなりがちです。類を見ないほど素晴らしい表現力で感嘆するのですが、慣れるまでは読みづらさが先行してしまい、少ししんどいかもしれません。 私も中盤あたりで中弛みの展開も手伝って挫折しかけたのですが、後半にかけては引き込まれて、読む手が止まりませんでした。中盤ぐらいまでで脱落する人が多そうなので、そこが勿体なく残念だなと勝手に想像しています。 生前、政治的な主張が強かった作者なので、その点から毛嫌いされる人もいるのかなと。 ただ、日本人でただ2人のノーベル文学賞を受賞した筆力はダテではありません。 万人向けではありませんが、少しでも興味を持った人は先入観を排除してぜひ読んで欲しい作品です。
大江健三郎はあまり好きじゃないけど、これは面白かった。人が暴徒化する過程がしつこく書かれていて読み応えある。 でも、この“しつこさ”が活きたのは初期の頃までかな。後の「同時代ゲーム」とかは読んでいられなかった。 正直言って、この人がノーベル賞とったのは日本の文学界にとって不幸だったと思う。わかりづ...続きを読むらいこと書けば文学的、みたいな変なイメージが広がったんじゃなかろうか。
今の我々、若者にはこのフットボールの精神などはない。ましてや、一揆などという気概は殆どといっていいくらいない。それが良いか悪いかではなく、自分の内として経験ないことがこの評価たらしめる要因ではあった。(蜜にもないと思う人もいるが、蜜自体は一連の流れに身を任せていないだけで経験はしている。) だからこ...続きを読むそ、この一点につき、私はこの本を推薦したいと思うのだ。我々の内に秘めたる鷹のような心。社会的な後ろめたさ、挫折感、そう言ったマイナスな感情を幼い時分から持っている、同世代がこの本を読む。言葉に刺される。そして、動く。そしたら、令和幾年のフットボールとして、社会に発現する時が来るかもしれない。私はその時に、サッとフットボールチームのメンバーとして仲間入りしようとも思うのだ。これは蜜でも鷹でも星でも妻でもない、蜜よりもネズミぽい陰湿な自分をそこに認めるのだ。
読み終えるのに時間がかかった。なぜその場面が組み込まれているのか、登場人物の言動は何を意図しているのか、理解できていない部分も多いと感じる。 主人公は、ほかの登場人物や故郷の谷間から一歩引いてそれらを観察し、自身についても内省を重ねているが、谷間での出来事を通じて自分自身に気付いていく。その気持ち...続きを読むの揺さぶりに読み手として振り回され動揺するような感覚。 おぞましさや恥といった感情の描写が本当に的確。
ノーベル賞作家・大江健三郎の骨太な長編。安保闘争に敗北し「政治の時代」が終わりを迎えた鬱屈した時代感の中で、性や障害、記憶、歴史といった実存主義的なモチーフが次々に繰り出され、グロテスクで仄暗い小説世界が形成される。 全編を通じて飽きさせないが、中でも第1章が出色。一文が極端に長く、比喩も多用され...続きを読むており到底スラスラと読める代物ではない。「僕は、自分の内部の夜の森を見張る斥候をひとり傭ったのであり、そのようにして僕は、僕自身の内側を観察する訓練を、みずからに課したのである。」(P.9)といった具合に(これは主人公の失明した片目について触れた箇所である)、難解でありつつセンチメンタルな格調高さを湛えた文章に、話の筋の面白さとは全く異なる次元の、小説を読むという体験の素晴らしさを教えられた。 物語の結末は率直に言って、ぼくの想像力を超えた難解なものだった。主人公の選択が輝かしい人間性の恢復へと続くのか、それとも惨たらしい悔恨と逃避を意味するのかはまだ若く未熟なぼくには判断がつかない。 大江自身は後書きで、この作品が彼自身にとっても、彼と同時代の読者にとっても一つの「乗越え点」、すなわち作風の転換点であり、同時に今までの読者をある種ふるいにかけた作品であったと語っている。 ぼく自身がこの作品を自分なりに咀嚼してその意味の一つでも掬い上げることができたのか、あるいはその難解さにただ翻弄されつつ、ファッションとして消費してしまったに過ぎないのかは定かでないが、少なくとも大江文学という一つの「乗越え点」を見つけることはできた。今はそれだけで十分だろう。
大江健三郎の最高傑作と評されていたので、温めて置いていましたが、現時点では個人的にもやはり最高傑作でした。読み終わってすぐ2周目を始めてしまったほどです。 重厚な構成、有機的で現実的なメタファー、極限状況からの脱出、魂の浄化。巧みな文章力に、自室で1人でため息を漏らしていました。 「魂の浄化」とい...続きを読むう点だけでいえば、「懐かしい年への手紙」の方が深く掘り下げていますが、全体としての完成度はこの作品が飛び抜けている気がします。 第1章の、蜜三郎が穴にこもり、自身を徐々に「穏やか」にし、精神の下降の斜面へと滑り落としていくシーンが1番好きです。このシーンの情景を大切に心の芯に持って生きていきたいです。 僕は、蜜と鷹、どちらの生き方を目指すのか…
文学的な位置でも自身の中の位置でも最重要な一冊。 この特濃の内容とゴテゴテの文体を1人の人間が描いているのが恐ろしい。 初オーケンでこれを選ぶと胸焼けする可能性があるが、本作以降も擦られ続ける主題であり向き不向きを決める上でも必読書だと思う。
日本人でありながら、自国からのノーベル賞受賞作家作品を読んだことがないのもいかがなものか、と思いまして。で、その大江作品の中、例の福田書評集で最も高評価だった本作をチョイス。勝手な印象だけど、何となく読み心地は村上春樹風。それをもっと小難しくした感じというか。あと思ったのは、英語みたいな日本語だな、...続きを読むってこと。何を言っているのかというと、一文あたりがやたら長くて、文の途中まで意味が掴めないと思ったら、最後まで読んで腑に落ちる、みたいなあの感覚。なので読解に骨が折れる部分も少なくないけど、意外にリーダビリティは悪くない。内容は、タイトルからはイマイチ想像が出来なかったけど、江戸時代の一揆を、現代において再現してみました、的な。弟の自殺とか、その子を身籠った我が妻とか、かなりドロドロなクライマックスで、読み終わった後、ちょっと疲労感を覚えちゃいました。良い作品とは思えたので、評価は高めで。
彼自身の状況を象徴するような「どん詰まり」の谷間の中で、最後に思いもかけない地下室を発見するところがなんとも言えず爽快。この頃から円環の要素が出てくるのか?万延元年の出来事に似たことが再び繰り返されるならば、出来事というものが反復されるならば、万延元年の事件の思いもかけない「抜け道」であった「地下室...続きを読む」は同時に閉塞した今の自分を励ますという…。そして「スーパーマーケットの天皇」のスーパーであるようなものが後の『燃え上がる緑の木』などで川沿いのスーパーまで行って来たのよ、などと登場するところも面白い。
カラマーゾフ読み終わってから毎日ベローチェに通ってます。 気持の入った読書の時間じゃないと、とっつきにくかったかもしれないなと思いました。僕には難解なところも多かった。 「期待」のない主人公がアメリカから帰ってくる弟、その親衛隊、障害を持った子供を産んだ妻とともに「草の家」「新しい生活」を見つける...続きを読むべく森に入る。 万延元年の一揆の首謀者である曾祖父の弟に自分を重ね合わせる、弟。それを客観的にとらえる主人公。 精緻な構成に、圧倒されました。「本当のこと」に引き裂かれる弟の描写、結び付けられていく事実。非常に面白かったです。 読後の感情をうまく文章化できるんじゃないかと期待して、時間をおいてもう一度読み直したい。 嘲弄っていう言葉を使いだしそう
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