見晴らしのいい密室

見晴らしのいい密室

小説・文芸
726円 (税込)

3pt

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核シェルターにひとり籠った男の胴体が捻り切られていた怪事、柩の中で数十カ所刺されて発見された男……。あまりにも完璧すぎる密室殺人は、本当に実行可能か!?「不可能犯罪など存在しない」と豪語する“超限探偵Σ”の華麗なる活躍を描く「見晴らしのいい密室」ほか、電子仕掛けの謎を秘めた本格ミステリ「探偵助手」などこれまで誰も見たことも聞いたこともない、精緻で巧妙な論理遊戯が導き出す唖然呆然の結末7篇。

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見晴らしのいい密室 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

     子どものころ、よく親に「屁理屈だ」とか「理屈っぽい」などといわれたが、ロジックでしか推論できないし、ロジックでしか物理的世界に働きかけることができない。ロジックこそ人間がこの世界を生き抜くすべである。
     とはいえロジックというのも使い方がある。ビンスワンガーが報告する、不治の病に冒された娘の誕生日に棺桶をプレゼントする統合失調症患者の話は、論理的に正しいことが、人間生活においては必ずしも正しくないことを示している。有用性のロジックと平行して、感情のロジックが働いているのだが、その片方しか見ないのは病的とみなされるわけである。
     他方、不完全性定理が示すように、ロジックはそのシステム内では無矛盾でも、システム内からそれが正しいかどうか検証できない。別の世界をぶつけてやれば、ロジックとロジックが衝突することも起こる。一方のロジックから見ると他方はイロジカルである。

     短編集『目を擦る女』の7編中3編を入れ替えた再編版。『目を擦る女』を読んでない私としては損はないのだが、こういう売り方には若干引っかかる。しかし、『NOVA1』で読んで感心した「忘却の侵略」が入っていたから、入手。再編の意図は同傾向の作品でまとめ直したということのようだ。酒井貞道氏によれば、それはロジックとアトモスフェアが解離した作品ということになる。すなわち、作品が論理的に整然としていることと、そこから導かれる作品世界の不条理の解離ということだろう。
     だが、それはどうだろう。論理的に整然としていること自体が不条理なのではないだろうか。

     「見晴らしのいい密室」は不可能犯罪を解き明かす超限探偵Σの推理。ロジックが世界と認識主体というところに拡張されて、推理小説としては馬鹿話になってしまうが極めて論理的。
     「目を擦る女」、隣家の女はこの現実が自分の見ている夢だという。現実はとても耐えがたいので楽しい夢を見続けるために目を覚ましたくないと目を擦る。この女が正気で、私はこの女の夢の登場人物だというロジックと、この女は妄想を持っているというロジックは2つの異なった世界認識で相互排除的、普通われわれは後者の認識を採用するわけだが、この作品では……
     「探偵助手」も2つの世界認識の相即と相容れなさが共存しているが、表面的にはいたってまっとうなミステリ。

     ロジックが綻びを露呈するのは世界と関わる点であるから、畢竟、仮想現実ネタが増えて、作者自身、仮想現実ネタばかりだと飽きられるぞ、と自虐的に登場人物に語らせているが、仮想現実ネタもヴァラエティは豊かである。
     「予め決定されている明日」では、算盤人ケムロは大勢の同僚と共に日夜、算盤とメモ用紙で膨大な計算をこなしているが、その計算により仮想現実を走らせていることに気づくというネタ。「ワンの絨毯」と同工のアイディアだが、話はイーガンとはまるで違った方向に進む。他世界のロジックはこっちの世界では狂気でしかないということ。
     「未公開実験」ではこの世界が仮想現実だと無理やり決めつけて、時間旅行を可能にしてしまうが、時間旅行ものこそはロジックの遊び場である。

     「忘却の侵略」。その攻撃を記憶に残すことができない敵と高校生が戦う話。これはミクロ世界で通用する量子論的ロジックをマクロ世界に適用するというトリックがあるのだが、そのロジックの中での敵攻略法が焦点。この主人公の思考の道筋は極めてロジカル、なので変。
     そういうロジカルゆえのおかしさって落語にも通ずるのではないだろうか。

     「囚人の両刀論法」は『天獄と地国』のスピンオフじゃないのかなあ。

     「屁理屈だ」とか「理屈っぽい」と怒る人にはお勧めしません。

    0
    2016年02月09日

    購入済み

    妙な話だなあ

    ミステリーだと思って読んだら、ほとんどミステリーとは程遠い話ばかりでがっかりしました。しかし変わった話と思って読むと面白かったです。夢野久作と蘭郁二郎を合わせたような短編集でした。妙な話が好きな方にはお勧めです。

    0
    2014年10月08日

    Posted by ブクログ

    後半のSF4編が素晴らしい。
    観測不能の侵略者との戦いがスリリングな『忘却の侵略』が特に面白かった!

    0
    2024年09月02日

    Posted by ブクログ

    小林泰三さんらしく軽快かつ煙に巻かれているような会話劇と綿密なロジックが両立しており、素晴らしい短編集だった
    お気に入りは「忘却の侵略」と「未公開実験」
    「忘却の侵略」は一種の能力バトル物のような展開で、青春らしいラストも良
    反対に「未公開実験」はコミカルな掛け合いとは裏腹に少しヒヤリとさせるラストが印象深く、作中だけでなく現実の我々へ想起させるものがあった

    「探偵助手」のとあるギミックは、こちらの問題なのか正しく機能しなかったためご注意

    0
    2024年07月18日

    Posted by ブクログ

    「探偵助手」のQRコードは面白かった。
    「忘却の侵略」は一番気に入りの、シュレディンガーの猫や波動関数収束や未知危険生命体のネタを組み込んだ淡い甘い恋物語。
    「予め決定されている明日」算盤計算でヴァーチャルリアリティを構築という逆テクノロジー設定も中々素敵。

    0
    2015年12月05日

    Posted by ブクログ

    SF、ホラー、ミステリとジャンルに富んだ短編集。テーマは論理性。世界観を覆すような論理、現実を侵食する奇妙な論理、狂人の論理。様々な論理を巧みに操る奇妙な味の短編集。
    他で既読の短編がちらほらありましたが、粒ぞろいで満足。
    緊迫した状況なのにユーモア溢れる『忘却の侵略』とホラー寄りの『目を擦る女』が好み。

    0
    2014年12月29日

    Posted by ブクログ

    ロジックこねくりまわしにこねくりまわす、SF+ミステリーな短編集。

    読むのに、理解するのに、カロリー消費します。短編地宇野が、敷居を下げてくれてます。

    しんどいけれど、おもしろいんだよね。
    「未公開実験」「囚人の両刀理論」がそういう点では、しんどくもありおもしろくもあります。
    「目を擦る女」「予め決められた明日」は、サイコさんの印象が強くて怖いですね。ホラー。

    0
    2013年08月25日

    Posted by ブクログ

    おいおい、旧作の『目を擦る女』を3篇入れ替えて出版しました、ってひどくね?
    ファンだから買っちゃうけどさ。

    んでまた既読のものも再読したわけだが、新作が読めて嬉しい反面、前のほうが良かった気もするなー。

    密室なんて言ってるけど、ほとんどSFだかんね。

    「探偵助手」はQRコードを読み取って始めて真相がわかる作品。同じようなのを袋綴じ小説として泡坂妻夫がやってたね。

    「忘却の侵略」はシュレディンガーネタですごいの作っておられます。矛盾を回避するために何やらうまいことやってて面白い。

    「囚人の両刀論法」はまぁまぁでした。ダークな方向に進むのは面白いけど、いまいちキレがなかったかなぁ。

    なんだかんだ言っても小林泰三はすげー!

    85点(100点満点)。

    0
    2013年06月04日

    Posted by ブクログ

    初読、小林泰三。
    ホラーSFの名手!

    最初の二篇はミステリ仕立てで、ちょっと微妙。
    ミステリとして出さずにSFとして出した方がよい。

    「忘却の侵略」「未公開実験」「囚人の両刀論法」、これがめちゃくちゃ面白かった。

    相対性理論、タイムパラドクス、仮想現実、囚人のジレンマ。
    科学と理論とSFとホラー。
    道満晴明あたりにコミカライズしてもらいたい感じである。

    ターイムマスィーーン。ポーズ。

    0
    2013年04月11日

    Posted by ブクログ

    "「いったいどういうこと?」
    「何かで切られたんだ。刃物のような鋭利なものではなく、何か鉤爪のような尖ったもので、無理矢理切り裂いた感じだ。君のと同じだよ」
    「うぐわぁー」裕子は呻いた。
    「どうした?」
    「急に痛みが」
    「怪我をしたことを忘れてたから、一瞬痛みも遠のいていたようだね。ーーうぐわぁー」
    「あなたも?」
    「うん。何とか動かせるから、筋肉や骨は無事らしい」"[p.117_忘却の侵略]

    「見晴らしのいい密室」
    「目を擦る女」
    「探偵助手」
    「忘却の侵略」
    「未公開実験」
    「囚人の両刀論法」
    「予め決定されている明日」

    QRコードを読み込ませるのは面白いな。

    0
    2016年08月30日

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