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Posted by ブクログ
好きな作家は?と聞かれて、必ず答えていたのが重松清。ビタミンFに収録されている短編は、すべて”ある家庭の30代後半から40代のお父さん”の視点の物語である。中学生の頃は、お父さんの生態を解き明かす解剖書のように読んでいただろうか。31歳、妻歴4年目、社会人歴11年目の今、再読すると、30代になった変化、夫婦としての日常、会社の先輩後輩とのやり取りが、あと何年後かの自分の予言書のように思えた。
こんな大人になりたくないになってしまった私達に、そんなもんだよ、だけどちょっぴりでも変えることはできると希望感を残してくれる。人生に希望はあるなんて大仰に説得してこようとする話なんてない。一つ一つのお話が胸に届き、読んだ後は、全ての家庭の裏話を見たような、上手くいくといいなと願ってしまうような優しい気持ちになっているから不思議だ。重松清さん流の全ての家族へのエールなのだと思う。また38歳になったら読み返したい。
Posted by ブクログ
36、37、38歳という中途半端な中年なりかけの男性が主役の短編集。
仕事ではまだまだ若いと思っていても、若手社員からはオジサン扱い。
家庭では妻との関係にマンネリ化、夜の営みも昔のように求め合うことはなく、定期的な一種の作業のよう。
そんな関係性があってもなくても、リスペクトがなければ、夫婦生活は破綻する。
【パンドラ】
中学2年の娘、穂奈美が万引きをした。それだけでもショックなのに、男と一緒で、そいつはコンドームを万引きした。
もう子供じゃないと思っても、そう思えない、孝夫。
愛する娘が知らない奴とセックスをしていることがショックでならない。
それは、妻に対しても思い始め、自分より前にどんな男と関係を持っていたのか、もちろん、聞けないし、聞かないけれど気になる。
自分の初体験の女性に電話をかけようか迷う。
友達に制された、「思い出なんて、パンドラの箱みたいなものだ」「開けない方がいいんだよ」
まさにその通りだと思った、パンドラをあけて、ひとりでショックを受けた若き自分に言ってあげたい。笑
~親は身勝手だ、ある時期までは早く大きくなれと願い、ある時期まではこのままでいて欲しいと祈る~
ホントこれ。
【母帰る】
・37歳 拓己、妻、娘小学生2人
・姉、息子、元夫浜野さん
→2年間の不倫の末、療育費を払う約束で離婚
・父、母
→2人は10年前に離婚、母は別の男性の内縁の妻となり、そのパートナーに先立たれアパート暮らし
こんな状況の中、10年間孤独な一人暮らしを続けた父が姉にお願いをした。
「母に帰ってこないか、と聞いてくれ」と。
拓己と姉は、父がボケてしまったのではないかと心配して、九州の実家に帰った。
拓己「1人だけ残されて、他の男性と暮らした母を恨んだりしないのか」
父「子供を1人前にして、親の務めが全部済んでからのことだ。自分のやりたいことをやったらいい。」
父「ただ、33年も連れ添った母をひとり暮らしのまま、死なせるわけにはいかんのじゃ」と。
「拓己は37歳じゃろ、もう大人じゃが(そんなこともわからんのか)」
Posted by ブクログ
『ビタミンF』は、家族をテーマにした七つの短編から成る作品集である。重松清は、家族の絆を取り戻そうと葛藤し、模索する中年男性たちを中心に据えながら、それぞれの家族の物語を丁寧に紡いでいく。
作品に登場する家族は、一見すると互いの心が離れ、ばらばらになってしまったように見える。しかしその根底には、互いを思いやる愛情が確かに存在し、それゆえに素直になれず、気持ちがすれ違ってしまうもどかしさが、静かな筆致で描かれている。その描写には、多くの読者が自らの家族を重ね合わせることができる普遍性を感じた。
家族の在り方が多様化し、父親や家長としての役割を一義的に定義することが難しくなった現代において、主人公たちは迷いながらも現実から目を背けず、自ら家族と向き合おうとする。その主体性、すなわち困難な状況であっても他者との関係をあきらめず、一歩踏み出そうとする姿勢こそが、読者に勇気と希望を与える「ビタミンF」なのではないかと思う。本書は、家族とは決して完成された関係ではなく、互いに理解しようと努力し続ける営みそのものであることを、あらためて考えさせてくれる一冊であった。
Posted by ブクログ
自分の父を思いながら読んだ。
どれも父親目線で描かれていて、どうしようもない出来事がそれぞれに降り注ぐ。
この世に答えがあることは極端に少ない。
難しい問題の方が多い。
どれも複雑で、多様で、絡み合っている。
父親という立場に立ったことはないが、想像してみると難しいポジションだなと改めて思った。
息子である僕からはあまり話しかけようとはしてこなかったし、向こうもそれなりの距離を感じていたのかもしれない。
最近になってようやく本音を言い合えるようになったが、それが良かったのかどうか。
うちの家族はどうなのだろうか。
今はまだ問題はないが。
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