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Posted by ブクログ
夢中で一気に読める本を求めて、宮本輝を手に取った。カーテンで仕切られた病室で2.5日位で読んだ。夜の日本海側の村、古美術展、バーなど、薄暗い場面が多くシンクロしてぐんぐん読めた。
2人がそれぞれよねかを調べ、神視点の読者が全てを知る奇妙な面白さ。
杉井はよねかを一目も見られず、津田が作る美味しいクリーム・コロッケを知らない。
美須寿はよねかの女の子らしい一面や男との接し方は知らない。
それでいいんだと思う。
初恋の中学生の少女を買った中年の男なんかに会わない方がいいし、浮気相手の異性との話し方や交わり方は知らなくて良い。
自殺を乗り越えこのさき生きていくのに必要な情報が、2人にうまく行き渡った。
加古の死因は最後まで謎のままだが、恐らく柏木の話のようなことだろう。
「月光の東」も謎のまま。解説は死後の世界というふうに書かれていたが、私は本の描写のまま、シルクロードか山岳に輝く月の、もっと向こう側を想像する。生命はあるのに闇に隠れてしまって出てきてくれない。寂寞として、強い夜風しか聞こえなくて、しーんと冷たくて、、暗闇と隣り合わせのよねかの乾いた、信念ある心を思う。
よねかは女の嫉妬からか魅力的、とは思えなかったが、強かで行動力があり尊敬はする。弱い心を見つめながら立ち直っていく加古美須寿が、読者の等身大の人物だろう。自殺に傷つく家族と共に、毎日は続き、親切な周りの人に支えられて、夫の自殺に、よねかに打ち勝った。
30歳を過ぎてから、年相応を思うと器量不足で自信がなくなり、急に根暗になった。よねかほどではないが、今まで出会った人を傷つけてきたなぁなんてことも思う。私も罰が当たるだろうか。もう当たっただろうか。そんな自分が好きだと言えるだろうか。少しずつ立ち直ろう。そして自分も頼られる側に回れるよう、手を温めておかなくては。
Posted by ブクログ
よねかの思い出を探る旅は、そのままよねかに引き寄せられた男たちを振り返る旅であった。美しくかつ強い女性であったよねかはまた、人間の業を強烈に意識した女性であった。傍目からみるよねか像とは異なり、付き合った男たちは結局その心の美しさに思いを馳せ、卒業していくのだ。
杉井と加古がそれぞれの立場で過去を振り返っている。それぞれ独り語りや日記の記述でその振り返りを綴るわけだが、国内は北海道から糸魚川、大町、岡山、海外ではヒマラヤ、パキスタン・カラチ、パリとそのスケールは非常に大きい。スケールの大きさと登場人物それぞれの、繊細に変化する心の動きが合わさりきわめて立体的、重層的な物語構成を感じた。
しかし、登場人物はいずれも極めてオリジナルな人物が揃っている。独りで語る杉井が最もシンプルな人物像である。そのほかは、競走馬牧場関係者であったり、骨とう品屋主人であったり、バーのオーナーであったり、美術商であったり。だからこそ非日常の物語が次々と紡ぎだされるのかしれない。
物語としては最後はかなり宙ぶらりんな感じで読者の思考にいろいろと委ねられているが、それはそれで小説なんだろうと。
精神科の先生の至言が身に染みた。
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