無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで200万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
※こちらの作品はブックライブ for Android、ブックライブ PLUS for Android、ブラウザビューアではダウンロードおよびオフラインでの閲覧ができません。
Posted by ブクログ
あまりSF的なガジェットが登場しない22の短編集。面白くて一気読みしてしまった。翻訳のせいかも知れないが以前読んだことのある『よろこびの機械』に比べると難解でよく意味の解らない話というのはなかった。ブラッドベリというとやはりストーリーよりも、何とも言えないブラッドベリ作品ならではの雰囲気が印象的で、アメリカ中西部の農園の風景や、季節の風の匂い、夜の市街地に響く音などの情景や、真夜中に目が覚めて寝付けなくって部屋の窓から外を眺めた時のような、未知の何かに始めて触れた時のような心情の、詩情あふれる描写が唯一無二の魅力だと思う。ポエティックで童話集のような趣の話が多くほのぼのとはしているが、案外全体としては文明批評や風刺の視点を感じる。誰かからの手紙が欲しいと思う山村に住む老婆が、村の外から遊びに来た甥に代筆と代読を頼んで手当たり次第に会社に資料請求する「山のあなたに」や、自分たちの生活が広告の中の書割として消費されることに異を唱える男を描いた「日と影」が好きだが、これらも文明社会への風刺として読めると思うし、「歩行者」「人殺し」なんかはもっと直截的で、『華氏451度』で感じた著者のそういうものに対する嫌悪がよく伝わってくる。
Posted by ブクログ
ブラッドベリ的とは
SF小説は、未来や宇宙世界に対するワクワク感をもたらすものが多いが、この短編集はちょっと異質。
グリムやアンデルセンが動物を擬人化したように、SF小説においては舞台を未来や宇宙に置いて、時には異星人をモチーフにして、かえって人間の愚かさや面白さを浮き出させている。
収録作品には、宇宙も未来も何も出ず、ただ村人の話なんてものもあるが、まったく違和感がない。
そう考えると、「ブラッドベリ的」ということもあながち「独特な」という意味ではなくなってくる。
特にこの(初期)短編集は、カテゴリーによる「SF」というレッテル貼りが無意味に感じるほど「独特」でありながら、「普通」に面白い。
お気に入りは
「霧笛」「ぬいとり」「発電所」「草地」「歓迎と離別」「太陽の黄金の林檎」……とあげていくと、選びきれなくなっていく。
収録作品すべてに「ブラッドベリ的」な余韻がある。
Posted by ブクログ
目次
・霧笛
・歩行者
・四月の魔女
・荒野
・鉢の底の果物
・目に見えぬ少年
・空飛ぶ機械
・人殺し
・金の凧、銀の風
・二度とみえない
・ぬいとり
・黒白対抗戦
・サウンド・オブ・サンダー(雷のような音)
・山のあなたに
・発電所
・夜の出来事
・日と影
・草地
・ごみ屋
・大火事
・歓迎と別離
・太陽の黄金の林檎
レイ・ブラッドベリと言えば、SF作家でありながら抒情的、ノスタルジックでメランコリーな作風というのがイメージだったし、そういう作品が多いのはもちろんなんだけど、それだけではないことに気づく。
ただ後ろ向きのノスタルジーではない。
かなりはっきりと、行き過ぎた科学至上主義などを批判している。
”無線車で外出していると、連絡は、ひっきりなしです。ああ、連絡か!実に体裁のいい言葉じゃありませんか。連絡とはつまり、いつも摑まえられているってことです。抑えられていると言うべきかな。”(人殺し)
似たようなことは森博嗣も作品の中で「携帯電話は使われている人が持つものでしょう。私は持ちません」と西之園萌絵に言わせていたなあ。
主人公はラジオ、電話、しゃべる家電を壊して回り、刑務所の独房で静かに過ごす。
黒人対白人の野球の試合。
特に記述はないけれど、1960年代のアメリカ南部が舞台でしょうか。
日々体を使った生活をし身体能力の高い黒人と、普段体を動かすことのない白人の試合。
けれども大人はみんな、当然白人が勝つと思っている。
審判はアイルランド人。
案の定白人は審判にも食ってかかる。
試合は黒人が勝ち、観客はそそくさと家に帰る。
「お家に帰りましょう。黒人はカミソリを持ってるかもしれないわ!おお、こわい!」
元の皇帝は、空飛ぶ機械を発明した男を殺す。
その男に悪意がないことはわかっているが、いつか誰かがその機械を大量殺人のための兵器として悪用するかもしれないので、その芽を摘むために。
ごみ屋は仕事をやめようかと妻に相談する。
原爆が落ちたらごみ収集よりも死体の回収を優先するようにと市長に言われて、そんなことはできないと思った。
しかし妻は言う。「家族のこと、生活のことを考えて」と。
ただ時流に流されていけば、何も考えなければ、楽に生きられるのかもしれない。
けれども、その後に悪夢のような日々が来るかもしれないことを、そのツケを子孫に残していくことを想像できないのなら、人間という生き物は何なのだ?
そんなブラッドベリの怒りを過剰に感じてしまったのは、過日に観た映画『マイ・ブックショップ』の影響かもしれない。
Posted by ブクログ
素晴らしい。
何という美しさ、何という陰鬱さ。
収録作品の中でも圧倒的に知られていると思われる「霧笛」。声高に作品テーマを語ることのないブラッドベリにしては珍しい、込められた寓意を明確に文章で説明している、ある意味「わかりやすい」作品です。が、だからと言って物語が陳腐化しないのがブラッドベリの底力。最後まで静かな余韻を残す、短いけれど心に残る作品です。
「サウンド・オブ・サンダー(雷のような音)」も印象的でしたね。フツーのSF作家であれば、タイム・パラドックスが起こった後にどう収拾を付けるのか?という点を前面に押し出して一大スペクタクル巨編を書くぞ!ぐらい考えてもおかしくはないのに、ブラッドベリはタイム・パラドックスの起因となった男の愚かしさ、そして彼を取り巻く状況の不穏さを丁寧に執拗に描き出すことによって、一つの作品を紡ぎ上げます。ブラッドベリにとって重要なのは、論理的な落とし前の付け方ではなく、その瞬間の印象深さや肌触りといったものなんでしょうね。
E・A・ポーを彷彿とさせる心理ホラー「鉢の底の果物」、思春期の少女特有の底知れぬ残酷さを描き出して余りある「四月の魔女」、人間がここまで愚かになれることを端的に表現した「山のあなたに」・・・どれもこれも美しく、艶やかで、そして残酷な作品ばかりです。最後に収められた表題作の、ウィットに富んだオチも素晴らしいですね。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
※こちらの作品はブックライブ for Android、ブックライブ PLUS for Android、ブラウザビューアではダウンロードおよびオフラインでの閲覧ができません。