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Posted by ブクログ
主人公の幼稚性が垣間見れるように感じた。同じ受刑者で女遊びにも慣れた鈴木から、幼稚なほど真面目な人間だと言われているシーンがある。この主人公は真面目なのでは無く、決まった自分の世界でしか生きることのできない幼稚な人間であると考える。確かに不倫をされる苦しみなどはあるかも知れないが、彼は妻を殺害する時に苦しみや怒りに燃えていたわけでは無く、清冽とした中で殺人を働いている。房内でハエの翅を毟り取り、紐でくくりつけて逃げないようにするシーンはまるで虫を捕まえた幼稚園児のような姿であった。結局のところ彼は幼稚な人間であり、罪を意識することができておらず、自己弁護することに終始している。罪を意識できなければ罰を理解することはできない。罰とは外部的なモノでは無く、受刑者の内的な意識にこそ宿るものではないかと考える。
Posted by ブクログ
殺人を犯し無期刑をいい渡された元高校教師が、服役成績が優秀であるとして仮釈放されるものの社会に溶け込めず、戸惑いと苦しみを抱えながら生きていく姿を描く。この小説はネタバレ厳禁だと思うので詳しく書きませんが、最後の数ページは驚くような苦い展開でした。小さなメダカの命を大事にする男が、どうしてこんなことになってしまうのだろうか。
小説家というものは想像力が豊かで、なかには頭の中だけで組み立てたことを自由に書いていける人がいるのかもしれません。しかし、想像力だけで書かれた小説はどうしても薄っぺらなものになるような気がします。それに比べて吉村昭の作品は、どれもどっしりとしていて堅牢です。この小説も、淡々と書かれているようでいて実に密度が高く重いです。それは、この作品がフィクションであるとはいえ、取材を通じて得た事実によるしっかりとした裏づけがあるからでしょう。
吉村昭はまるで自らの経験を記すように、細部にこだわってとてもリアルな描写をしていきます。殺人を犯すときに目の前が朱色に染まるといった描写、独房にまぎれこんだ蠅と囚人との気持ちのやりとり、保護司はどのように犯罪者と接するのか、仮釈放の身にある者が周囲の人たちに対して抱く気持ちなど、どうして作者は犯罪者のことがこんなにもよく分かるのだろうかと驚かされます。まるで物語の中に取り込まれてしまうような、文字によるヴァーチャル・リアリティを体験させてもらいました。
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