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昭和16年12月1日午後5時過ぎ、大本営はDC3型旅客機「上海号」が行方不明になったとの報告を受けて、大恐慌に陥った。機内には12月8日開戦を指令した極秘命令書が積まれており、空路から判断して敵地中国に不時着した可能性が強い。もし、その命令書が敵軍に渡れば、国運を賭した一大奇襲作戦が水泡に帰する。太平洋戦争開戦前夜、大本営を震撼させた、緊迫のドキュメント。
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Posted by ブクログ
太平洋戦争開戦の時の危機的状況を伝えるドキュメンタリー。上海号墜落、そこには米英蘭を敵に回す軍事作戦の暗号書が持ち込まれていた。電送だけでなく、文書による直接伝達を必須とした日本軍の愚かしさを感じる。真珠湾攻撃に至る場面では、日本の攻撃艦船部隊の隠密行動はほぼ成功していたことが分かった。しかし、宣戦...続きを読む布告の暗号文は米国にいち早く解読されていた。南方戦線での日本軍の先制攻撃を想定した米国は、結果として真珠湾を見殺しにし、「リメンバー・パールハーバー」がプロパガンダとして利用されることを許すことになったのだなぁ。
まだあの戦争から100年も経っていないんだ。 太平洋戦争の末期じゃなく今から始めるって時ですら、こんなに薄氷を踏むような浅はかな戦略だったんだ いかにあの時代が人命より国家を重視してた証左だ それは、無理やり五輪を開催しようとしている今の日本と重なる こんなに人名を軽視していた時代から、 まだ...続きを読む100年すら経ってないんだな。 ファクトフルネスじゃないけど、いろいろあるけど世の中は少しずつ良くなってるんじゃないかと信じたい
「開戦」という、絶対的な時間指定がある巨大プロジェクトを進めるために、広大な領域に広がる巨大な組織の隅々に機密情報を行き渡らせるのは困難な課題だが、いくつか失敗はあったものの我が国がそういった力を持っていたのは、いまだに陰に埋もれたままの無数の英雄がいたからなのだろう。
この小説は、1941年12月1日の御前会議から12月8日の米英蘭に対する奇襲作戦を行うに至るまでの話である。秘密裏に準備が進められたこの一週間の間に起こった予期せぬ事態に軍部がどのように動いたかを細い取材の元に綴られた史実なのである。それは、墜落する上海号という双発機に暗号書と開戦指令書を持ち込んだ...続きを読む兵士の命をかけた逃走と人間を虫ケラのように扱う軍部の動きを対象にして描かれていく。吉村昭が描く戦史小説に一貫して通じるテーマがそこにある。小説の結びには、陸海軍人230万人、一般人80万人のおびただしい死者を飲み込んだ恐るべき太平洋戦争は、こんなふうにしてはじまった。しかも、それは、庶民の知らぬうちに密かに企画され、そして、発生したのだ。と締め括られている。
大本営。よく聞くようで、よく知らない言葉。調べると、天皇直属の最高機関のことで、陸軍や海軍もその下部組織になるとのこと。 昭和16年12月8日、日本はアメリカと開戦を決意する。その始まりの真珠湾奇襲のために、日本大本営は多くの極秘工作をすすめていた。 まだ戦争をしないことをアピールするために、開...続きを読む戦直前に豪華客船「竜田丸」をアメリカに向けて出発させたり、日本艦隊が未だ日本にあるようなニセ無線を流す。軍隊がタイ国を通過する許可を開戦日前日の23時に交渉する。真珠湾へ向かう艦隊が発見されないような航路の開拓。等々。それらの作戦は綿密で、12月8日に向けて必須な積み上げだ。でも、細部については運任せ、現場任せな部分が多い。しかも、個々の作戦はどれも成功するという前提。深刻な立案のようで、かなり楽観的。さらに、開戦という大目標が極秘なので、これら小作戦の目的や目標を全員にはっきりと示すことができない。現代のビジネス本なら意思統一のできていない最悪の組織だとバッサリ切り捨てるだろう。でも、これが世界戦争を直前に控えた日本大本営なのだ。 なんとなく、暗闇で般若心経を米粒に書いている職人をイメージする。吹けば飛ぶような米粒に必死の形相で情熱を込めていたニッポン。いかにも緻密な作業好きな日本人らしい。でも、悲しいかな世界戦争は芸術ではなく、物量が焦点なんだよな・・・。
おもしろい!読み応えありました!! 真珠湾攻撃前夜の物語。 海軍・陸軍・諜報部その全てが危ない綱渡りをした上での奇跡のような成功だったことがよく分かる。暗号解読が遅れて宣戦布告が間に合わなかったその1点だけが失敗だったんだなと。 戦争を賛美するわけではなく、日本人が世界相手に凄いことやったのはよくわ...続きを読むかる。(つか今の日本も政治家がこんだけ死ぬ気でやればもっとましな国になるんでね?) どの章もスリルとサスペンスで全編山場です。 というかほんと吉村先生凄すぎる!!
「吉村昭」が太平洋戦争開戦前夜を描いたドキュメント作品『大本営が震えた日』を読みました。 『戦史の証言者たち』に続き「吉村昭」作品です。 -----story------------- 開戦を指令した極秘命令書の敵中紛失、南下輸送船団の隠密作戦。 太平洋戦争開戦前夜に大本営を震撼させた恐るべき事...続きを読む件の全容――。 昭和16年12月1日午後5時すぎ、大本営はDC3型旅客機「上海号」が行方不明になったとの報告を受けて、大恐慌に陥った。 機内には12月8日開戦を指令した極秘命令書が積まれており、空路から判断して敵地中国に不時着遭難した可能性が強い。 もし、その命令書が敵軍に渡れば、国運を賭した一大奇襲作戦が水泡に帰する。 太平洋戦争開戦前夜、大本営を震撼させた、緊迫のドキュメント。 ----------------------- 昭和16年11月から12月8日までの太平洋戦争開戦に関するエピソードを集め以下の構成でドキュメントした作品です。 ■上海号に乗っていたもの ■開戦司令書は敵地に ■杉坂少佐の生死 ■墜落機の中の生存者 ■意外な友軍の行動 ■敵地をさまよう二人 ■斬首された杉坂少佐 ■イギリス司令部一電文の衝撃 ■郵船「竜田丸」の非常航海 ■南方派遣作戦の前夜 ■開戦前夜の隠密船団 ■宣戦布告前日の戦闘開始 ■タイ進駐の賭け ■ピブン首相の失踪 ■失敗した辻参謀の謀略 ■北辺の隠密艦隊 ■真珠湾情報蒐集 ■「新高山登レ一二〇八」 ■これは演習ではない ■あとがき ■解説 泉三太郎 中心となっているのは、昭和16年12月1日に発生した上海号不時着事件、、、 香港攻略や南方作戦に関する作戦命令書を持った「杉坂共之陸軍少佐」や暗号書を持った「久野寅平陸軍曹長」が搭乗した旅客機「上海号」が中国軍勢力範囲の山岳地帯に不時着し、作戦命令書や暗号書等の軍事機密書類が敵(中国)側に渡るのを恐れた日本軍の行動や「上海号」から脱出した「杉坂少佐」や「久野曹長」の逃避行が描かれています。 軍事機密書類が敵の手に渡れば、これまで極秘裏に準備を進め、既に後戻りできないところまできているマレー半島上陸作戦、真珠湾奇襲作戦が明らかとなり、緒戦での勝利は覚束なくなることから、大本営を始め、関係者が震撼した事件です。 ノンフィクションであることを忘れそうになるような冒険小説さながらの展開には驚かされましたね。 また、太平洋戦争の開戦って、真珠湾攻撃ばかりが注目されがちですが、、、 本作品では真珠湾に向かった聯合艦隊ばかりではなく、同時に行われた陸軍によるマレー半島への上陸作戦についても詳しく触れられており、 ○12月7日には、既に戦闘(戦争)が始まっていたことや、 ○マレー半島への上陸時、荒天により上陸用舟艇への乗り込みにおいて死者を出していたことや、 ○事前にタイとの交渉によりタイ国内を通過できる予定が、「ピブン首相」の失踪により調整が遅れ、タイ国軍や警察との間に武力衝突が発生したこと 等 初めて知ったことも多かったですね。 マレー半島上陸作戦と真珠湾奇襲作戦を描いた名著だと思います。 決して戦争を美化することのない、 「庶民の驚きは大きかった。 かれらは、だれ一人として戦争発生を知らなかった。 知っていたのは、極くかぎられたわずかな作戦関係担当の高級軍人だけであった。 陸海軍人230万、一般人80万のおびただしい死者をのみこんだ恐るべき太平洋戦争は、こんな風にしてはじまった。 しかも、それは庶民の知らぬうちにひそかに企画され、そして発生したのだ。」 という著者の言葉が印象的だし、太平洋戦争の本質を表していると感じましたね。 決して忘れてはならない歴史だと思います。
航空機「上海号」が中華民国軍支配地域に不時着。そこには対米英開戦に関わる作戦命令書を携行した日本軍参謀が乗り合わせており、もし命令書が敵に渡っていたら綿密な奇襲作戦がすべて水泡に帰してしまう。 真珠湾攻撃やマレー攻略作戦の直前まで不測の事態に直面していた日本軍の実態を記録した作品。不確実性はつきもの...続きを読むとはいえ、ここまでギリギリだったとは知らなかった。 軍首脳部の狼狽ぶりと最前線将兵の任務に対する実直さの差異が印象的。
太平洋戦争前夜の日本軍の隠密の準備行動を描く。 真珠湾攻撃や南部侵攻など、日本の奇襲で始まった太平洋戦争だったが、その準備活動はかなり危なっかしいものだったということが分かる。 一歩誤れば、作戦は実行前に露呈し、戦争はもっと早く終わっていたのかもしれない。 タイと一歩誤れば戦争状態になっていたこ...続きを読むとなど、知らなかったことも多く、勉強になった。
吉村昭作品を読むのは、戦艦武蔵についで2作品目になる。 開戦に至るまでの様々な出来事が緻密かつ丹念な取材で書かれている記録文学の良書。 作戦の全容は少数の首脳部しか承知していなかったにも関わらず、ここまでの大規模な国家プロジェクトが徹底した企図秘匿の基にすすめられたことは只々驚いた。 択捉島単冠湾か...続きを読むらハワイまで航行し大艦隊で奇襲攻撃するという一か八かの作戦を立てたこと自体、日本が追い込まれていたんだと思う。歴史にタラレバは無意味かもしれないが、奇襲戦法が成功したことは奇跡と言えるが、もし成功してなければ原爆の犠牲者も出なかったかもしれないと思うと複雑。いずれにせよ、戦争ほど悲惨なものはない。
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