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平穏な日々の内に次第に瀰漫する倦怠と無力感。そこから脱け出ようとしながら、ふと呟かれた死という言葉の奇妙な熱っぽさの中で、集団自殺を企てる少年たち。その無動機の遊戯性に裏づけられた死を、冷徹かつ即物的手法で、詩的美に昇華した太宰賞受賞の表題作。他に『鉄橋』『少女架刑』など、しなやかなロマンティシズムとそれを突き破る堅固な現実との出会いに結実した佳品全6編。
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Posted by ブクログ
感じたことや印象をうまく言語化するのが難しい本。しかし、この難しさが確実に自分の心の襞になった作品。 死に結びついた歪な欲望、執着。ここでの死はセンチメンタルなものでなく、生物が死体という物体になるという、物的なものとして描かれている。死がそのようなものとして描かれているから結局欲望や執着は無意味な...続きを読むもののように感じられる。表題作の「星への旅」で描かれる無動機な自殺は、このような死の即物的な側面を顕著に表していると思う。
人の心の動きと体の動きはどちらも不可解なんだけれど、どちらも鮮やかに描写されて息の止まるような瞬間だった。
【目次】 鉄橋/少女架刑/透明標本/石の微笑/星への旅/白い道 【感想】 『名短篇、ここにあり 』で少女架刑が印象に残った為、購入。 繊細な言葉選びと著者の死生観が分かる作品が連なった一冊。
高校生の頃、タイトルや表紙で宮沢賢治みたいなファンタジーだと勝手に思い込み購入。 それまで死について深く考えて来なかった若い頃の私にとっては衝撃的な内容だった。 しかし…静謐な空気感のなか死に向かう人間の、美しくも淡々とした描写に心を奪われた。そして「もう少し大人になって、また読み返そう」と心に決め...続きを読むた。 いま数十年が経ち、再読。 粗筋は何となく覚えていたので記憶通りだったが、特筆すべきはやはり繊細で美しく儚い描写力。現代の人気作家にはない昭和の文士の力量をまざまざと見せつけられた。
昔読んだ漫画の中にモチーフとして登場していて、ずっと印象に残っていたが読むのが怖いような気がして保留にしたままになっていた。数十年の時を経てやっと購入。死をテーマにした中短編集で、思っていた通り暗い雰囲気に包まれた作品たちだけど、描写は素晴らしく美しい。透き通るような骨標本や暗闇に星が瞬く場面が頭の...続きを読む中で鮮明に映像化される感覚になる。ジャンルはかなり違うけどその感覚は宮澤賢治を読んだときに感じたものと重なる。これが戦時中を生きた人の死生観なのか。高校時代、現国の先生が太宰治の「人間失格」を評して〝精神的に参っているときに読むとヤバい〟と言ってたけど、この作品もどこかメルヘンめいた世界に引き込まれていきそうで、太宰治賞受賞なるほどと思った。
往来堂書店「D坂文庫 2017夏」からの一冊。 吉村昭の作品はこれまでに何冊か読んでいたけれど、短編小説は初めて。しかも、これは昭和33年から42年にかけて書かれた作品を集めた、実質的なデビュー作ということらしい。 その筆致は、後に書かれる社会派作品群と同様、緊張感にあふれて鋭い。しかし、本書はそう...続きを読む評するだけでは不十分だろう。何しろ、収められた6編はいずれも生と死をテーマに書かれていて、鋭さに重さが加わっているからだ。 表題作の「星への旅」は、そのメルヘンっぽいタイトルとは裏腹に、日常の倦怠感と無力感から集団自殺を企てる若者の話であるし、「鉄橋」ではボクサーが列車に轢かれて不可解な死を遂げる。「少女架刑」では遺体となった少女が語り手で、その連作とも思える「透明標本」では、死体標本作成に取り憑かれた男の情念が重い。 冒頭で、生と死がテーマと書いたけれど、本書を読み終えてみると、生と死というのは実は紙一重の違いしかなく、死はいつでも生の隣にいて口を開けて待っているのではないか、などという妄想じみた思いにかられる。後の作品では、様々な死を描くことになるわけだが、著者はデビューした頃から既に死に対するスタンスを明確に持っていたのかもしれない。読むのに体力が要るこの短編集を読んだ今、あらためて著者の作品を読み直してみると、違う読み方ができそうに思える。
「鉄橋」「少女架刑」「透明標本」「石の微笑」「星への旅」「白い道」の六篇。 吉村昭氏の初期作品。「死」が色濃く表れている。 表題作「星への旅」。名状しがたい読後感。 個人的には、「少女架刑」「透明標本」が印象的。ある意味。対のようになっている。 「少女架刑」は、吉村昭氏には珍しい、「私」という一人...続きを読む称の語り。また、物語る「少女」の視点も不思議で。そして、怖い。 収録されている6つの短篇の登場人物たちは、“星への旅”になっていくのだろう。 “星への旅”という言葉の響きは綺麗だが、表題作の「星への旅」は、テーマが重い。
吉村昭の初期作品はずいぶん雰囲気が違うんですね。シュールな世界なのですが、「モノ」と「人の死」についてだけはひどく生々しく、即物的でなんとも言えない読後感を残します。
『戦艦武蔵ノート』の解説で紹介されていた「少女架刑」を読みたくて本書を購入。表題作を含む6つの短編は、すべて人間の死が絡む。ボクサーの自殺に見えた轢死は、彼の独白から異常に発達した動体視力を過信した事故死であった「鉄橋」。死んだ少女の魂が、自身が大学解剖学教室の献体として切り刻まれる様を目撃する「少...続きを読む女架刑」と、その姉妹編とも言える「透明標本」など、とても読みごたえがあった。当然、どの作品も暗い色調を帯び、今まで自分が読んできた吉村作品とは一味違う印象を持った。
○星への旅 集団自殺に向かう若者の揺れ動く気持ちを描く。 死は芸術たり得るのだなと思わされるほど、死にゆく際の表現は美しい、、 そりゃみんな死ぬんやから 芸術にしなきゃね ○少女架刑 恵まれない境遇で命を終えた少女が、死後に自らの遺体の解剖や火葬を通して人々の欲望と無関心を俯瞰する 生前には持...続きを読むちえなかったほど澄んだまなざしで、骨が燃える色の変化さえも静かに感じ取っていた 救いはない だが、沈黙の中に確かな声がある。
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