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作家の伊瀬忠隆は雑誌の依頼を受けて「僻地に伝説をさぐる旅」の連載を始めた。第一回浦島伝説の取材地丹後半島いらい、彼の赴くところ常に不可解な謎や奇怪な事件が絶えない。そして突然の連載打切り。この企画の背後に潜む隠された意図の存在に気づいたとき、伊瀬は既に事件の渦中に巻き込まれていた。古代史、民俗説話と現代の事件を結ぶ雄大な構想から生れた本格的長編推理小説。
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Posted by ブクログ
昭和40年代の作品。売れない小説家が、新規雑誌社から紀行文執筆を頼まれて、編集者と一緒に浦島伝説・羽衣伝説の取材旅行にでるのが、奇怪な事件に遭遇するきっかけ。緯度経度、35にまつわる旅先。
東経135度 北緯35度 この地点を取材旅行で赴く作家・伊瀬と編集者の浜中。 そこで見つかった白骨死体。次々と起こる殺人事件。 この経度・緯度には恐るべき秘密が隠されていた。 スリリングで面白い、昭和の雰囲気を感じられるミステリーだった。
売れない作家の伊瀬忠隆に、雑誌「草枕」の「僻地に伝説をさぐる旅」の連載依頼がくる。編集者・浜中と共に浦島伝説と羽衣伝説が残る伝説の場所をめぐる中、次々と起こる不可解な事件。35という数字にこだわる謎の女の出現に、正体不明の白骨死体。連載のために訪れる先々の共通点は・・・連載企画の裏に潜んだ計画とは・...続きを読む・・。ストーリーの展開もテンポ良く、ぐいぐい引き込まれて、最後にまさかの大逆転。最高に面白いミステリーでした。
私が読んだ清張作品の中でベストワン。難解なタイトル、浦島や天女の伝説、日本地図上での奇妙な偶然。それらがつながった時の興奮をもう一度体感したく、改めて購入した。近々再読する。
最近テレビドラマ化される事が多い、松本清張先生。 「砂の器」、「黒革の手帖」、「けものみち」いずれも高視聴率のようだけど、どれも見ていない。ましてや、小説自体も読んでいないというチョット乗り遅れ気味な感じもするけど、この「Dの複合」が火スペや土曜ドラマ劇場なんかで2時間ドラマ化されたら、是非見てみた...続きを読むい。(もう、やってたりして・・・) 売れない作家が、小出版社の月刊誌に旅の紀行文「僻地に伝説をさぐる旅」の連載依頼を受けたところから、物語がスタートする。 旅先で白骨死体遺棄事件が起こり、当初は単なる偶然と思っていた事件が、曰くありげな人物が登場し、さらに謎めいた35、135という数字が指し示すものは何かと、ミステリー性がどんどん増していく。そこに日本古代史・説話・民間伝承が実にうまく絡み合い、様々な布石が幾重にも重なり実に巧妙なプロットになっている。 余談だけど、浦島伝説・天女羽衣伝説が実は抑留説であったなど、昔話再発見というところもあり、古代史ロマン的な楽しみ方もあって読み応え十分で長編ものが好きという人にお薦めです。
古代史、民俗学の諸説をもとに、旅も絡めたミステリー。「点と線」「ゼロの焦点」の雰囲気を思い出す。 終盤は、えーっ、そうきますか!という驚きに満ちている。
<君は今どこにいる?> 売れない小説家に舞い込んだ一件の依頼。浜中にリードを引かれるが如く、伊瀬は連れ回される。 緻密すぎるストーリー。色鮮やな織物も、一つ一つの糸になるまで解いていくとそれがなんだったのかよく分からんのです。 偶然。思いもかけない出来事に遭遇することを言う。偶然、映画館で...続きを読む恋人とデート中の先生を目撃したりとか、偶然、無くなっていた片方のピアスを見つけたりとか、偶然、目の前で交通事故が起きたりする。どうして起きたのか、原因なんて見当たらないように見える。またえてして、そうゆうことは重なる。たまたま誤送信してしまったメールに限って、他人に知られては困るような内容だったりする。 でも、本当に「たまたま」なのだろうか。運が悪かった、もしくは良かっただけだろうか。その時集中力が切れていたのは、昨日夜更けまでゲームをしていたせいじゃないか? 先週彼女に振られたことを引きずっていないと胸を張って言えるだろうか? 突き詰めれば源泉が見えてくることがある。「偶然」とは濃い霧みたいなものなのかもしれない。晴れることもある。 伊瀬の浜中に対する胸中も、終始面白い。「知ったような顔をすぐにする小賢しい若造が、鬱陶しい奴め」と心中で毒づきつつも、「おい、なんで連絡してこんねん。心配したやろ」とキレもする。まあそんな憎めないやつ、いますよね。笑 最後、読み切った時に心に残る余韻、想い。そっくりそのまま主人公と重なったのか、これは、と思いました。 なんとなく「古い人でしょう」と今まで松本清張を読んでこなかったことを恥じております。と同時に、これからたくさん出会うことができるという事実にワクワクしています。良かった!
伝承を追う紀行文から始まる殺人事件。北緯35°東経135°……35という数字に気がついた者、謎の男と女、ミステリーの要素に浦島伝説、羽衣伝説と民族伝承が絡まった読み応えのある作品。
松本清張の風土民俗への強い関心は言うまでもないが、他の作品に輪をかけて紀行文的であるところが特徴的であり、非常に愉しかった。私のようにひねもす日本地図を眺めていられる人種には堪らないだろう。 一方で、その両軸となるミステリ的側面はやや体裁的に感じた。いわゆるミステリを期待する人や、松本清張をあまり...続きを読む読んだことがない人には勧めない。 ところで物語のキーワードとなる船舶の名前だが、その画数が35になっている。特に言及が無かったので偶然なのかもしれないが、氏の遊び心を想像せずにはいられない。
推理小説の巨匠、松本清張の長編推理小説。本作は、怨念による殺人事件に古代史を織り交ぜた、松本清張作品の代表作の一つですね。 松本清張作品を読むのは『点と線』に次いで2作目なんですが、ストーリー重視である自分の好みにすごく合っていて、面白いことを再確認しました。 これが、1968年に刊行された作品だ...続きを読むなんて思えない。それくらい古くささや読みにくさを感じさせない作品です。 松本清張らしく、密室トリックなどの謎解きではなく、「犯人は誰なんだろう、殺人の動機は何なんだろう」ということを、読者にハラハラ気にさせながら読ませる作品であり、もちろん推理小説なんですが、殺人事件の謎を追うサスペンス作品ですね。 間違いなく、火サスとか好きな人は面白く読めると思います。
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