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織田信長は、土砂降りの桶狭間を急襲して今川義元を倒し、雨の晴れ間を狙って長篠に武田勝頼を破った。大勝するのはいつも雨の時季。その陰には「気」を見る男がいた――。表題作の他、算法に惹きつけられた侍たちの悲劇を描いた「算士秘伝」、言い争いから富士登山に挑むことになった大奥下女の物語「女人禁制」など、自らも科学、技術、山岳の人であった著者の異色歴史小説全9編。
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Posted by ブクログ
短編9編からなっている。 新田次郎は私の好きな作家ベスト5に入っている。 山岳小説では多くの名作を書いているが、技術者や科学者を描いた時代小説も多い。 この本に収められているのは信長以外はその類のものである。 「信長~」は気象学者らしい作品になっている。 市井の変人だが、個性ある優しい人物が描かれ...続きを読むていて、どれも私の期待を裏切らなかった。
元気象庁の公務員だった新田次郎は、季節や山の小説を多く書いている。 これは梅雨を利用し桶狭間に勝利した信長、日本アルプス越えで大損害を出した佐々成正など、歴史人物と季節とを結びつけた話で着目点が面白い。 新田次郎の歴史と気象を結びつけた作品は他に「赤毛の司天台」。こちらは江戸時代の気象庁のような司天...続きを読む台に勤める男が、雨を当てやすい体質ということから、日本人と気象との係わりを書いている。
織田信長は、土砂降りの桶狭間を急襲して今川義元を倒し、雨の晴れ間を狙って長篠に武田勝頼を破った。大勝するのはいつも雨の時季。その陰には「気」を見る男がいた――。表題作の他、算法に惹きつけられた侍たちの悲劇を描いた「算士秘伝」、言い争いから富士登山に挑むことになった大奥下女の物語「女人禁制」など、自ら...続きを読むも科学、技術、山岳の人であった著者の異色歴史小説全9編。
最後の中篇「隠密海を渡る」が秀逸。 司馬遼太郎以外の歴史物を読んでみようと、新田次郎に食指を動かすも、いきなり「武田信玄」だとリスクが高いか?と短編集を読んでみたのだが、枚数が多い程本領発揮する人なのかな?
歴史小説シリーズ第二段 今度は信長側から見た歴史。 信長も必死だった様子がよくわかる。一か八かの賭けに勝った信長は、その後賭けに敗れ本能寺で自刃するわけだが、それまでのクライマックスが描かれており短編ながら面白い。 武田信玄が長すぎたこともあり、このくらいの短編のほうがピリっとしていいか...続きを読むもね。 短編集だから、信長だけが出てくるわけではない。飛行機あり、天気予報ありなんだが、面白いのは算術(和算)関係の作品。2編(算士秘伝、二十一万石の数学者)登場するがいずれも鎖国時代の日本をある角度から描いたものとして興味深い。 蘇我入鹿打倒の「大化の改新」と「時の日」をくっつけた秀作「時の日」もいい味だ。個人的にはこれが一番だった。 富士山を背景に借りた「女人禁制」も新田次郎らしい山の作品だ。なかなかいい短編集だった。 作品は以下のとおり。 梅雨将軍信長 鳥人伝 算士秘伝 灯明堂物語 時の日 二十一万石の数学者 女人禁制 赤毛の司天台 隠密海を渡る
『女人禁制』憑かれたように頂上を目指す姿に、以前のTV番組で見た芸人のイモトさんを思い出した。考え過ぎかもしれないけれど、女人禁制の山を男装して制覇するのが、男子禁制の大奥の奥女中であるという対比が面白い。 タイトルの『梅雨将軍・・・』『時の日』以外は江戸時代が舞台なので、鎖国の閉塞感と、それを突き...続きを読む破ろうとするエネルギーのようなものを感じる。 本人にその気はなく、ただ、何かに打ち込んでいるだけなのかもしれないけれど、権力や保身、金儲けに明け暮れる役人たちと全く別次元に生きる姿が潔い。 『隠密海を渡る』はハラハラした。『女人禁制』と同じく、最後にしがらみを捨て去った主人公の姿が爽快。 タイトルの『梅雨将軍信長』だけが、戦国という時代背景もあって、儚い滅びな結末・・・ 気象が重要な鍵を握り、他の作品とのつながりはあるけれど、少し雰囲気が違う気がする・・・が、本のタイトルになっているのはやはり、他の主人公では本を手に取らせるインパクトが弱いからなのかな?
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