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歴史の不条理や官僚制を告発する、きわめて深刻・まじめなカフカ――この定番のカフカ像を手放すと、どんな新しいカフカが立ち現れるか? そのみごとな見本がこの「ちいさなカフカ」である。これは数多あるこちたき作家論の類ではない。著者は、散歩のようにゆったりとカフカの周辺を巡りながら、しかし肝心のところは看過せず、その等身大の姿を紹介してゆく。道すがらふと摘みとった作品や伝記の断片から、カフカの〈生のスタイル〉が透けて見えてくる仕組みである。「ほんのちょっとしたこと、ちいさな手がかりからカフカに入ってみた。そのつど考えたり、気づいたり、連想したことを書きとめた。動いていると風景が変わり、目の位置が変化すると別の景色があらわれるように、いろいろなカフカが見えてきた」女性たちに送った夥しい手紙の数奇な運命、大の映画好きであったカフカと『審判』の関係をはじめ、賢治のクラムボンとオドラデク、『ライ麦畑でつかまえて』と『アメリカ』、さらに多羅尾伴内・長谷川四郎・クンデラに通底するカフカなど。われらの隣人カフカを知るための格好の道案内。
...続きを読むPosted by ブクログ 2012年11月12日
著者の池内紀さんがあちこちに書散らしたものを蒐集し一冊にまとめたものらしい。
カフカが恋人に宛てた手紙、散歩してまわったプラハの町並み、複雑な言語感覚、小役人として属した官僚機構、19世紀から20世紀にかけてのヨーロッパ、ユダヤ人、宮沢賢治との共通点…。
「この十年あまりにいろんな場で発表したものか...続きを読む
Posted by ブクログ 2014年11月29日
カフカに関して、その作品や遺された手紙、知人の記憶などちょっとした手がかりから、分かりやすく道案内してくれる一冊。
カフカがより身近に感じられ、作品の理解をより深めるにも最適な一冊です。
最初の「手紙の行方」には、裏に潜む悲しい犠牲もちらついて、ひどく胸が痛みました。
久しぶりに作品の再読をしたくな...続きを読む
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