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作家というのは嘘つきなものですが、皆川博子ほど上手に嘘をつく作家も珍しいのでは。
本作の舞台は18世紀ロンドン。解剖学に命を捧げる外科医・ダニエルの前に、突如としてあらわれた2つの異様な屍体。治安判事の捜査に協力するうち、浮かび上がってきた犯人は──という、いわゆる本格ミステリ小説ですが、そこは皆川博子、一筋縄ではいきません。
解剖学、墓暴き、稀覯本、同性愛、男装の令嬢など、ゴシックなアイテムを散りばめつつも、どこかコミカルに、ユーモラスに進んでいくストーリーに引き込まれること必至。また、登場人物がみんな魅力的なんです。天才細密画家のナイジェルと美男子エドの友情+αな関係は、乙女な読者のアンテナにもひっかかるのでは。
第12回本格ミステリ大賞に選ばれただけあって、ミステリとしても一級品。
Posted by ブクログ
再読。
以前読んだときの記憶が思った以上に曖昧で、どんでん返しがあったことだけは覚えていたものの、肝心の真相は盛大に忘れて勘違いしていた。おかげで再読なのに終盤までしっかり楽しめた。
文章そのものが難しいわけではない。ただ、時系列や場面、視点が次々と切り替わるので、初読では物語の全体像を掴むまで少し読みにくさを感じた記憶がある。
今回読み返してみてもその感覚は変わらなかったけれど、最後まで読むと、むしろその断片的な構成こそがこの作品の面白さなのだと改めて思う。ばらばらに置かれていたものが少しずつ意味を持ち、最後には一つの物語として繋がっていくのが気持ちいい。
そして何より、皆川博子先生の文章がやっぱり好きだ。
美しく端正なのに、死体や解剖、貧困や暴力といったものまで不思議なほどその世界に馴染んでいる。18世紀ロンドンの猥雑さと薄暗さも、この文章だからこそいつまでも浸っていたくなる。
初読より好きになったのはネイサンだった。
この作品は登場人物の感情を事細かに説明するというより、少し離れたところから彼らを見つめているようなところがある。初読では事件や構成を追うことに気を取られていたけれど、再読ではその距離の向こうにある人物の感情を拾う余裕ができた。
そうして読み終えてみると、これは様々な「愛」の物語でもあったのだと思う。
失ってからようやく自分の愛に気づき、その遅さを悔いるダニエル。
その在り方は決して穏やかではないエドとナイジェル。
どれも同じ「愛」という言葉で括れるのに、その形はまるで違う。
美しいものだけでもなく、健全なものだけでもない。執着や依存と分けられないものもある。それでも作者はどれかを正しい愛として選ぶことも、間違った愛として切り捨てることもしない。
そして登場人物自身が自分の感情になかなか気づかないように、読者である私もまた、読み終えてから「あれも愛だったのか」と気づく。
初読ではミステリとしての仕掛けや構成の面白さが強く残った。
再読では、その裏にいた人間たちの感情のほうがずっと強く残った。
続編『アルモニカ・ディアボリカ』も再読予定。
Posted by ブクログ
昔読んですごく面白かった記憶があるけど全然覚えてないなーと思ってまた読んでみました!
やっぱりすごく面白かったです!
伏線も綺麗に回収されるし、最後の種明かしにはあっと驚きました。
エドとナイジェルがすごい艶っぽかった。
特にナイジェルのギャップがすごくて。アボットをどうやって骨抜きにしたのか気になる……
皆川博子さんの作品って耽美というか、色っぽいですよね。好き。
もう高齢と言っていいお年のはずなのにセンスに全然年齢を感じない。ほんとにすごい。
2作目までは読んだ記憶がありますが、3作目はまだだったはずなので、読みます!
ハードカバーだと辞典みたいに分厚いけどすぐ読んでしまうに違いない。
Posted by ブクログ
初めて読む作者。18世紀のイギリスを舞台にしたミステリ。エンターテイメント。同時に当時の風俗も窺い知ることができる。また登場人物の性格やイマドキの若者のような軽妙な会話のやり取りに親しみやすさを感じ、そのギャップが面白い。
事件前と後のエピソードが交互に語られるため、核心に迫りそうになるたび、話が切り替わり、著者の意図するところとは分かってはいても焦ったく感じた。
おすすめされていた理由がわかる!プロフィールを読んで驚きました。1930年生まれ。お書きになった時は?え??しかもこちらは三部作の一作目とのこと。今も作家活動されてるようでさらにびっくりです。残りの二作品も読んでみたい。
「創作する遺伝子」小島秀夫推薦
皆川さんを知ることができて良かったです。石炭の煙に曇ったロンドンの情景に馬車、死体、当時の医学、羊皮紙の書物、コーヒーショップや退廃的な文化を散りばめて、最後の最後までドキドキしながら読むことができました。
Posted by ブクログ
登録100アイテム目!
初めて読む作家さんだけど、あらすじと表紙が気になって買った本。「18世紀ロンドン」「ミステリー」のあたりとかね。
第一印象は翻訳を読んでるような文章だなーという感じ。レビュー見ると、他の作品とは文体をあえて変えてるみたい。後で知ったけど、80歳を越えてるとは!
めっちゃ面白かったよ!
過去と現在(?)の時系列に分けて書かれていて、それにちゃんと意味がある。物語の構成が素晴らしい!
色んな人が関わったちょっと複雑な事件なんだけど、2転3転するわ、伏線張りまくりだわでひとつの作品で何回騙すんだと。でも、この騙され方はむしろ気持ちいい。
最後はちょっと切なくて、余韻が残る。
エドとナイジェルとアンが好きです。
いい本に出会いました。満足!今年No1かもしれない。
映画とかになったら面白そうなんだけどなー。
他の作品もチェックしてみよう。
Posted by ブクログ
日本の歴史ミステリーは文体がとっつきにくいから俺には読めないんだが、この作品はロンドンが舞台なので逆に読みやすいのかも。冒頭からハードな解剖シーンが描かれるものの、『死の泉』ほど陰鬱な雰囲気はなく、五人の弟子や詩人の天才少年、盲目の判事がそれぞれ実に個性的で楽しい。冒頭から3人の死体(身元不明×2)が登場し、徐々に複雑な関係図が浮かび上がると、頭の収拾がつかなくなりそうなところで、適度に謎を明かしていくバランスがいい。ミステリーといえばの中性的な美少年2人が登場し、虚言・偽証で事件を引っ掻き回すが、これに関する動機がこの時代でしか成立しないもので、よく考えられている。小説としての面白さと立派な本格の"技"を兼ね備えた稀有な作品。
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