悲しみの歌(新潮文庫)

悲しみの歌(新潮文庫)

小説・文芸
825円 (税込)

4pt

米兵捕虜の生体解剖事件で戦犯となった過去を持つ中年の開業医と、正義の旗印をかかげて彼を追いつめる若い新聞記者。表と裏のまったく違うエセ文化人や、無気力なぐうたら学生。そして、愛することしか知らない無類のお人好しガストン……華やかな大都会、東京新宿で人々は輪舞のようにからみ合う。――人間の弱さと悲しみを見つめ、荒涼とした現代に優しく生きるとは何かを問う。

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悲しみの歌(新潮文庫) のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    文庫本は、昭和五十六年六月十五日 印刷。
    昭和五十六年六月二十五日 発行。

    私が読んだのは、この初版の文庫本です。
    大学二年生ぐらいに読んだと記憶しています。
    この頃は、安部公房や遠藤周作、松本清張、司馬遼太郎などを読んでいました。
    この物語は、「海と毒薬」で取り上げられていた人体解剖を行った医師が話の軸になり様々な人間が絡みついて進んで行きます。
    定価400円なので、今なら800円以上するかな。

    古い本を整理・処分するために記録を残したが、文庫初版本のため手元に残すことにした。

    2026年8月20日 記録。

    0
    2026年08月20日

    Posted by ブクログ

    人が持つどうにもならない影や矛盾、割り切れないものを描いた作品。勝呂医師やガストンさんを中心としながら多くの登場人物が交差する中で、それぞれが持つ卑しさや罪の意識、割り切れない感情に、大なり小なり自分にもある部分だと共感しながら読み進めた。作者が表現する『自分がその時、その立場だったら同じことをしていたかもしれない』がまさにそれだと思う。

    海と毒薬の続編ということで、海と毒薬を再読してこの本を手に取った。この2冊は必ず続けてまた読もう。『おらぁだめだ』と言ったあのシーンに勝呂のすべてが凝縮されていて、その勝呂の葛藤がまた続編でも描かれている。たとえ救えなくても寄り添おうと、彼は生きたと思う。読み終えたあと、しばらく勝呂と生きてしまう。

    0
    2026年04月14日

    Posted by ブクログ

    ガストンが『深い河』にも登場していて驚いた。
    調べてみると、ガストンのモデルは、遠藤周作がフランス留学中にお世話になった神父だという。
    また作中では、ガストンがキリストを象徴する存在として描かれていることもうかがえる。

    人生は辛く、悲しいものというのがテーマ。
    正義と悪だけで単純に割り切れるものではなく、それぞれに深い背景や過去がある。
    ガストンはキリストのように、人と共に悲しむ存在であり、その姿勢は『沈黙』と通じる思想だと感じた。

    作中の神父は信じた者だけが救われると語るが、ガストンと勝呂の関わりを見ていると、必ずしもそうではないように思える。
    神を信じていない勝呂に対しても、ガストンは変わらず慈悲と愛を注いでいる。

    ガストンはよく泣き、苦しみを抱えているにもかかわらず、人生は悲しいものではないと言う。
    人が笑う、それだけでいいのだと。
    暗く悲しい物語ではあるがその中には、神が人と共に悲しみ、寄り添う姿が確かに描かれていた。

    0
    2026年01月23日

    Posted by ブクログ

    海と毒草の続編という形。捕虜の生体実験に加わった勝呂のその後とそれを正義の名の下に取材する折戸、イエスキリストの生まれ変わりのようなガストンらが主な登場人物。結局人が人を裁くなんて無理があるんかな。胃癌末期のお爺さんを苦しみから解放するために安楽死させることにした勝呂だがその行為が本当にダメなことなのか、当人が望むなら正当性があるのか難しい問題。全体的に文章も暗く読んでて陰鬱になりそうになるがテーマとしてはとても大事な気がする。
    文化人かつ教授の矢野の描かれた方が面白い。結局こういう人たちは何も生まず偉ぶってるだけなのか。

    0
    2025年11月17日

    Posted by ブクログ

    遠藤周作さん著「悲しみの歌」
    「海と毒薬」の続編に当たる作品。主軸であった勝呂医師の30年後が描かれている物語になる。

    研修医として生体解剖に携わってしまった過去のある勝呂は、罪という意識とは少し違う罰を自身に課せているように感じた。
    彼はどちらかというと自分自身に失望しているように感じる。
    彼自身が凄く人間らしすぎて、医師として人として、局面局面で選択せざるをえないその数多は、どの道を通っても誰もが納得できるものではないものばかり。
    その中の一つは生体解剖という間違えでもあった、過ちの中でも最悪のもの。

    そんな彼が辿る道は…
    勝呂のその後の歩みは常に孤独感で溢れていて、まるで社会から隔絶されているような感じで切なすぎた。
    今現在の感覚では、彼が「海と毒薬」での生体解剖を断らなかった行為は「PTSD」による自棄に近いものだと思える。だけど当時その精神状態には誰もが低認識だったろうから、彼の精神を更にもっと追い詰めたに違いない。

    度々作中に出てくるが勝呂が町医者になりたかったという描写。人々に声をかけては勇気づけて、声をかけられては笑って談笑し、自転車に乗って各々の家へと診察に周るという小さな町医者としての理想が描かれる度に胸が苦しくなる。

    そういう医者になりたかったろうに…
    違った医者としての人生があったろうに…

    眼で文字を追っているのにも関わらず、悲しみの歌が自分の耳にも聞こえてくるようだった。


    勝呂の最期は自死という結末だったが、ある意味ではこれは贖罪のようでもありながら開放のような結末にも感じられた。
    人として、医者として、
    「何が正解で何が不正解なのだろうか?
     誰がそれを裁けるのだろうか?」
    作中あったこの言葉には深い意味合いを感じてしまう。
    冷罵、誹謗、嘲笑、みな真相を知らずに…
    みなが勝呂を責め立てた。
    その責め立てた人達はみな自分に甘く、他人に厳しい人ばかり。
    偽善の上に成り立っているだけの正義を振りかざすエゴイズム全開の暴力に感じる。
    自分自身を客観視できないだけならまだしも、人を攻撃する事に何の抵抗も持たずによく言えたものだ。
    人として未熟すぎる、外見だけで作られている中身の薄い人々に感じられた。
    逆に勝呂はそういう意味では自分という人間を客観視できていたのだろう。彼に同情を強く覚えてしまった。

    悲しい物語だった。


    0
    2025年08月29日

    Posted by ブクログ

    勝呂先生のターンはずっと泣きながら読んだ。
    人は自分の目を通してしかこの世界を見れないのに、正義をかざして人を裁こうとするのは何故なのだろう。生きることはなんて辛くて悲しいんだろう

    0
    2025年08月12日

    Posted by ブクログ

    海と毒薬の続編。

    生きることの悲しみや苦しみ、正論は人を追い詰め苦しめる。
    登場人物は多いけど、とてもわかりやすく描かれており、文章から情景が見える作品。

    0
    2024年06月03日

    Posted by ブクログ

    人が人を裁く資格なんてない。40年経った今も、当然それは変わらない。
    追い求める正義は、果たして誰にとっても正義なのか。自分がその立場に立った時、絶対に起こらないと断言できるのか。
    生きることに付随する悲しみが、あまりに多すぎる。もう苦しまなくていい、もう辛いことはない。誰もが死に向かう中で、死を求めることが「良くない」ことだと断言ができなくなる。
    人間の悲しみを知らないように振る舞う人間は、眩しい。し、暴力的だ。

    0
    2024年02月04日

    Posted by ブクログ

    大晦日に読破。良かった。もう一度読みたい。
    人間はやがて死ぬ。早いか遅いか。今していることは、だからなんなん、と自問するとに戸惑うことばかり。どう生きようか。

    0
    2023年12月31日

    Posted by ブクログ

    ガストン良い奴過ぎる。勝呂医師は天国で涙を流しているんだろうか。
    自分の中にも折戸がいるのかもしれない。

    0
    2023年01月18日

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