無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで200万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
※期間限定無料版、予約作品はカートに入りません
Posted by ブクログ
今年は生麦事件から150年の節目にあたる。生麦村は東海道の川崎宿から神奈川宿の間にあり、人馬の交通量の多い場所だった。江戸と横浜の往来には必ず通る。当然西国からの大名行列は普く生麦を通過する。
事件は薩摩藩の島津久光が江戸から薩摩へ戻る道中で起こった。横浜の居留地から川崎大師へ馬で遠乗りに出かけたイギリス人4人が大名行列に出くわしたが、街道が狭かったため行列を避けることができず、列の前面に押し出されてしまった。それに対して護衛の武士数人がが斬りかかり、一人がその傷がもとで絶命してしまった。
これを知ったイギリス公使は激怒し、横浜に駐留する諸外国の軍事力を背景に、幕府と薩摩藩に下手人の斬首と賠償金を求めた。幕府はそれに応じたが、薩摩藩は勅命で京に急がねばならぬと早々に逃げ、要求を事実上拒否した。
これにより日本は、隣国の清のように諸外国との戦争に突入する可能性が大きくなり、存亡の危機に瀕した。
なんとなく攘夷の騒乱のひとつだろうくらいに思っていた生麦事件が、実は日本の行く末を揺るがす一大事だったことがこの本を読んでよく分かった。早く下手人を引き渡して謝罪すれば、賠償金も多少は値切ってくれただろうに、それをしない薩摩はなんて傲慢なんだ、と当初は思った。でも読み進めていくうちに、薩摩は薩摩なりに、そんな卑屈な態度をとらなくても切り抜けられるとの目算があったことがわかる。
薩摩は以前から藩財政の再建に着手しており、琉球との貿易(不平等貿易)と、奄美の糖きびの専売により、利益を上げていた。それを軍事の増強と西洋式の兵法改革に注いでいたため、攘夷にそれなりの自信を持っていたのだ。
しかし実際に薩摩の地でイギリスと戦うことで、彼我の戦力の差に歴然とする。そもそも威嚇をする程度に考えていたイギリスは、悪天候もあり、まずは引き揚げた。
戦争はひとまずは引き分けとなった。しかし本腰を入れてイギリスが攻めてきたらひとたまりもないことがわかった薩摩は攘夷を捨てた。
薩摩が攘夷を捨てたこと。これが明治維新への大きなターニングポイントとなる。
始めから終りまで抑制が効き、緊張に満ちた描写で、事件の全容が次第に明らかになる。幕府や薩摩の武士の立場だけでなく、街道沿いの庶民の目線や居留地の外国人の目線からも詳細に描かれており、まるで自分が当事者かと錯覚するくらい引き込まれた。吉村昭はすごい。
Posted by ブクログ
★★★2016年1月★★★
生麦事件という事件を通して幕末史を深く分析した作品。「大名行列を横切った外国人を薩摩藩士が殺害した」という事件を、薩摩藩、幕府、外国人それぞれの動きが詳しく書かれている。これを読むと「幕府が可哀想」と思ってしまう。それぞれの人間に立場や苦悩があるんだと感じた。少し驚いたのはまるで島津久光が名君であるかのようになっていることだ。こんな本は初めて。
☆☆☆2019年3月☆☆☆
行列を横切ったという理由で殺されてしまったリチャードソンを憐れに感じた。彼らにも悪気はなかったように感じるから。また、立派だと思ったのは事件発生直後の英国公使ニールの冷静な態度。決して感情的にならず、横浜での戦争発生を防いだ。前回読んだ時と同様、島津久光が名君として描かれているのには違和感を感じた。
それにしても、事件発生直後に薩摩側から英国居留地を襲撃しようという計画を本気で持ち出した人物がいたというのも驚きだ、勇敢というか、野蛮というか。
この一連の事件では幕府に同情してしまう。
Posted by ブクログ
父にプレゼントした本。
面白かったから読めとわたしのところに舞い戻ってきた(笑)
読んでみると…
品川、大森など、ちょうど通勤経路にあたる場所がバンバン出てきて、電車の中で読みながら、このあたりでこんな事件が…と臨場感ありまくり、かつ非常に不思議な気持ちになった。
最初は英国人たちが斬られる場面描写に驚いた。
「生麦事件」という名前しか知らなかった事件が、実際にはどんな人たちがどんな状況下で、どんなふうに殺傷されたのか…
自分の生活圏で起きた事件であることも手伝って、何百年前の出来事が蘇ってくるように感じた。
絵空事でも何でもなく、本当に人が血を流し、叫んだのだ…と胸に迫るものがあったのだ。
が…、その後は薩摩藩、長州藩、幕府、朝廷等、政治的な動きが中心となり、それが延々と続くので、わたしには苦痛で……がんばったものの、上巻で断念。
『坂の上の雲』も同じ理由で断念したのだったよなぁ。
だめだなーわたしは、こういう政治劇的な歴史ものは。
Posted by ブクログ
神奈川県を舞台とした小説の一つとして。
タイトルの通り、幕末の大きな事件の一つである「生麦事件」を扱った歴史小説です。
作者の吉村昭は『羆嵐』などで有名ですが、史実に基づいた精緻な描写がこの作品でも展開されています。
幕府や薩摩藩の対応を批判するのでもなく、かといって賛美するのでもなく、冷静な視点から描かれており、戦闘描写・外交交渉の様子などもとてもリアルに感じます。
特に、事件についての久光の主張「生麦村の事件については、家臣が外国人に斬りつけたのはやむを得ぬことと久光はその行為を是認していた。大名行列は、班の威信をしめすもので、藩士たちは身なりを整え、定められた順序に従って整然とした列を組んで進む。それは儀式に似たもので、その行列を乱したものは打果たしてもよいという公法がある。日本に居住する外国人たちは、日本で生活するかぎり、その公法を十分に知っているべきであるが、殺傷された外国人たちは下馬することもなく、馬を行列の中に踏み込ませるという非礼を働いた。それは断じて許されるべきではなく、斬りつけたことは当然といえる。▼しかし、国情のちがいからニール(英国代理公使)が憤激し、強硬な態度で激しい抗議をしているのも無理はなく…」もわかりやすくまとめられていましたし、生麦での事件そのものの描写も、殺傷された外国人の前には「礼儀」を守った外国人がいたことなども描かれているほか、「無礼」な4人の外国人たちにも悪意が無かった(意図的に行列を軽視して列を乱したわけではなかった)ことなども描かれていて、興味深く読むことができました。
一方で、やや、長州藩に対しては少し批判的な印象も受けました。
事件勃発から。薩英戦争前夜までが上巻では描かれています。
【下巻に続く】
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。