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競輪場を舞台に綴る切ない6つの人間ドラマ
「ねえ聞いてるの? 自分のことを僕って呼ぶ人間がギャンブラーになんかなれるわけないって、あたしは言ったのよ」とマリは婚約者の青年をたしなめる。JRの勤勉な駅員として働く彼の、唯一の趣味は競輪。そんな彼が、死期の近づく父の残した当たり車券を元手に大口勝負を挑もうとする表題作。
信用組合に勤める女が、車券の一点勝負にギャンブルの真髄を見い出したきっかけを語る「遠くへ」。
十三年間定職に就かず、競輪場で儲けた金だけで生活している独りぼっちの男が、中学時代の同級生と再会したときの顛末を告白する「この退屈な人生」。
ある夜明けのくしゃみと三万円分のはずれ車券のせいで、夫婦のあいだに波風が立ちはじめた鮨職人の「女房はくれてやる」。
賭けに負けたことがない女子高生が、姉の婚約者の応援に駆り出されたのを機にこっそり通い出した競輪場で淡い恋心を抱く「うんと言ってくれ」。
同棲相手の会社の金を持ち出したという兄を追って、八年前のある出来事から車券を買わなくなった競輪ファンの弟が佐世保競輪場へ向かう「人間の屑」。
全六篇収録。
競輪場を舞台に繰り広げられる切ない人生が放つ一瞬の輝きを、透明感あふれる文章で綴った珠玉の作品集。
Posted by ブクログ 2020年02月25日
ハードボイルド。ハードボイルドっていうのはこういうダメでどうしようもなく、そしてそれを変えようもない男たちの物語なんだ。 ギャンブラーは女を泣かすことも自分を騙すこともお手の物だ。彼らはこう言う。「俺に言わせればギャンブルの手など借りなくても人生なんてもともと狂ってる。俺はそう思う」 屑が嫌いな人は...続きを読む
Posted by ブクログ 2018年01月22日
いやあ、うまいなぁ。
すべて競輪にまつわる6つの短編を掲載。
通底するのは漠然とした人生への諦念と、それでも諦めきれずに何かに賭けてみる男たち(女たち)の物語。
「きみは誤解している」
いや、誤解していない。
「遠くへ」
それは憧憬。
「この退屈な人生」
だから何かに賭けてみたくなるんだ。
「女房は...続きを読む
Posted by ブクログ 2016年11月23日
競輪をこよなく愛する男女の切なく輝く一瞬を綴った6つの人間ドラマ。残り一周を報せる鐘の音が聞こえるような緊張感が漂う作品集。
ギャンブルは人生を狂わすというが、その渦中に身を置くと、尋常ではない喜びと哀しみが味わえる。極めれば極めるほど知的興奮が上昇するので、止めるきっかけが見つからない。本作品の登...続きを読む
Posted by ブクログ 2012年06月23日
競輪というギャンブルにかける、あるいは振り回される様々な人間の小説。競輪をまったく理解しない私でも付録と称される解説小説が最後についている。それで競輪の知識があがるわけでもないが。6つの小説のそれぞれタイトルが秀逸。ギャンブラーがいいそうな、少々芝居がかった、自分のことを夢見心地でみているような、そ...続きを読む
Posted by ブクログ 2015年10月03日
佐藤正午が競輪好きなことは「side B」から知ったのだけど、これは競輪を題材にした6つの短編集。
作者は佐世保だけど、私は長崎に住んでいた頃、もう50年程前になるけど、造船所勤めの伯父に連れられて競輪場へ行ったことがある。今は競馬ばかりで、競輪は観たい番組がない時に大きなレースをやっていれば観る程...続きを読む
Posted by ブクログ 2013年09月02日
競輪をテーマとした短編集。
競輪にハマって抜け出せない、あるいは抜け出す必要のないような人たちをつらつらと追っていく。勝っても負けても最終的には損するということをわかっている上で、全員が全員競輪場に赴く。
話としては面白く、興味深い話もあったけど結局心情は理解できなかった。この本に則って自分を評する...続きを読む
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