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Posted by ブクログ
小川哲作品をきっかけにSF熱が再燃中。
ディックは『電気羊』を読むのに半年もかかったので敬遠していたけど、短編集は難しくなくて読みやすかった。
『火星年代記』を読んで、自分は「人間の愚かさ」を描いたSFが好きなんだと気づいて選んだ作品。
人間の「自分たちは賢い」「世界の中心は人間だ」という思い上がりに、ディックは容赦なくバッサリと斬り込む。
ブラッドベリの『火星年代記』では、切なさや哀しさも感じたけど、ディックはもっと冷徹で一切情けをかけない感じに思った。
その容赦のない感じの皮肉なオチも結構好き。
『訪問者』が特に好きだった。
地球は人間のためだけにあるものではないとずっと思っていたので、この作品の視点にとても共感した。「奢るなよ、人間」と思った。
『吊るされたよそ者』
怖い話を聞かされた時のようにゾッとする話。
『ミスター・スペースシップ』
いろんな意味でぶっ飛んでいて驚いた。
ディック作品は、内容はもちろんだけど表紙のデザインも大好き。
シリーズを本棚に並べて楽しみたくなる。
長編は難しそうなので、まずは短編集から読みたい。
Audibleにて。
Posted by ブクログ
”PKD”ことフィリップ・K・ディックの短編、面白いっ!
どうして世のSFファンはこれを先に勧めてくれなかったんですか!笑
現時点での「2026年ベスト本」候補作です(人*´∀`)
以前「電気羊」を読みましたが、あちらは正直半ば意地になって読み通したところがあったのに比べ、本書は面白くて一気読み。
出会いのきっかけは書店でたまたま見かけたことで、「トータル・リコールとマイノリティ・リポートってディック原作だったんだ〜」くらいの気持ちで手に取りました(なお映画は未鑑賞。「ペイチェック」は観ました)。
全体の雰囲気としては、星新一をもっと重たくした感じでしょうか。
監視社会、死の灰が降る核戦争後の世界……など、共通する要素はあるものの、それぞれ設定も読後感も異なっていて、ワクワクしながら読み進めました。
「地球防衛軍」には実際の世の中もこうなってほしいとしみじみ思いましたし、SFファンには低評価で編者からさえも「だれがどう見ても成功作とはいいがたい」と言われてしまった「ミスター・スペースシップ」も私は好き!
個人的に、罪のない老人がむざむざ命を散らすシーンがほんとうに苦手なので、どうかそうなりませんように……とハラハラしましたが(^^;
「バカSF」呼ばわりされる結末ですが、遠い遠い惑星で、第一世代を見守り続けてやがて役目を終える、鋼鉄の体に宿った老教授を想像して勝手にグッときてしまいました。そういう設定に弱いのよ。。
ラストが切ない「訪問者」も良かったな〜。
そんな中、白眉の出来と感じたのが「世界をわが手に」。
途中で「もしかして……」と予想がつくものの、自分の認知している世界を揺さぶられる感覚(ディック感覚)にはゾワゾワきてしまいました。
わりとどのお話も、おかしいのは語り手なのか世界なのか判断がつかないものが多く、最後の1ページ、最後の1行まで気が抜けない緊迫感がなんともクセになりました。
彼の短編集はハヤカワからオシャレな装丁でたくさん出ているようなので、ぜひまた読んでみたいです!
Posted by ブクログ
『マイノリティ・リポート』
映画を観たあとだと、驚くほど別物の物語。
犯罪予防局長官のアンダートンが主人公。
3人の予知能力者が未来に起きる犯罪を観ると、自動的に犯人の名前がカードに書かれて提出される。
犯罪予防局は、これから起きる犯罪を捜査し犯人を逮捕する。
犯罪者はまだ何もやっていない。
だから被害者も何も奪われない。
理想のようなシステムに、社会から重大犯罪は消失した。
ある日、カードを受け取った主人公は愕然とする。
カードに書かれたのは「ジョン・A・アンダートン」、本人。
短編の分量で、未来予知の矛盾を突くシンプルな物語。
まさしく未来は一つではない。
選択とは、未来を選ぶことに他ならない。
Posted by ブクログ
フィリップ・ディックはいくつか長編を読んだことありますが短編は初めてです。長編は面白いんだけどよくわからないことも多いのですが、短編では言いたいことが直接的に書かれて分かりやすいです。
なにかの本のあとがきでフィリップ・ディックが小説を書く理由として「この世界では生きられない自分の愛する人たちが生きられる世界を作る。本来なら自分を現実に合わせるが自分はそれができない。それがSFを書くっていうこと」といっていたのと、自身の生活やら小説テーマが社会に抵抗するところもあるので、反抗的な印象があったのですが、この短編を読むと平和や人間の自由をのぞみ、やりすぎた管理を批判する当たり前の感覚でした。。
『トータル・リコール』
気弱で平凡なクウェールは、毎晩火星へ行く夢を見ていた。自分は火星特別秘密捜査官なんだ!…という妄想が膨れすぎているようだ。
この物語では、人の脳に記憶を植え付けることができる。そこでクウェールは記憶植え付けを請け負うリコール社に行って、火星旅行の記憶を入れてもらうことにした。平凡でつまらない人生のほんのちょっとした刺激だ。
しかしリコール社の植え付けは失敗した。それどころかクウェールの深層心理から、隠されていた記憶を呼び戻してしまった。
呼び戻された記憶によると、クウェールは本当に火星特別秘密捜査官で暗殺業なども手掛けていたのだ!
クウェールがが記憶を戻したことは捜査官たちに知られて、殺し屋を差し向けてくる。
追手から逃げる方法は体が覚えていた。クウェールは「争いはやめよう。もう一度俺に記憶を植え付けて、火星のことは忘れさせてくれないか」と提案する。
そしてまたリコール社に行くと…。
==シュワルツェネッガーの映画は昔見たことあり、この後火星に行ってアクションします。原作はある意味中二病が全部叶った!って感じが楽しかったです 笑
『出口はどこかへの入口』
平凡なサラリーマン生活を送るバイブルマンは、宇宙最高の大学への入学をスカウトされた。(大学の名前は「大学」。唯一無二のThe大学って感じか)
ここに入れば就職は引く手あまた。自分の送ってきた学ぶ機会もなくつまらない人生を変えられるのか。
入学者たちは「大学」の初日に極秘情報の守秘義務に付いて聞かされる。それはあるエネルギー開発システムだった。
バイブルマンは、たまたま自分が受けた退屈な講義の中に、そのエネルギー開発に関わる設計図を見つけてしまう。
バイブルマンは手に入れた設計図を追う扱うかを逡巡する。「大学」にいるためには機密事項を守らなければならない。しかしこのエネルギー設計図は公表すれば多くの人たちが助かり、このまま秘密にしていたら一部の人たちの富を独占を許すことになる。
社会のために公表するか?しかしその場合自分は逮捕されるだろう。
お金のためにどこかの企業に売る?それもすぐに自分だとバレるだろう。
素直に大学に差し出すか?
決断の時が迫る。
==フィリップ・ディックだったらやらないだろうなーという決断だった。
『地球防衛軍』
8年前のアメリカとロシアの戦争で地表は放射能まみれになり、人々は地下に潜った。地上の戦争や放射線除去は、ロボットたちが地下からの人間の指示に従って行っている。
人間は地下で戦争を指示し、ロボットたちが地上で代理戦争をしているということ。いびつだ(-_-;)
しかし最近ロボットの様子がおかしい。もしかして地上ではもう放射能の影響は無くなっているのではないか?
==地上の様子の美しいこと。読んでいても嬉しくなる。しかしそんな地上の様子を見て「では今こそ戦争を進めて敵を壊滅させるチャンス!!」と決意する人間にはがっくり。
ロボットが自分で判断し、人間の予測不能なことをしたら?というのはSFのお約束ごとですが、大体は人間をロボットが支配するような方向になります。しかしこちらのロボットはなんと素晴らしい!人間からの命令の範囲で、人間を傷つけず、自分たちロボットが何をするのが一番人間の未来に良いのかを計算し、それを実行する。
素晴らしい!!
だが人間は…。
しかしラストでは、ちゃんと正しい方向に向かおうとする人間の姿も書かれます。
なんといういのかですね、人間はロボットに恥ずかしくない存在でいられるのかな。
『訪問者』
人類の大戦争で地球は放射能に汚染された。その当時の生物は姿を消した。人間は地下に潜り、酸素や食料を生み出す機械に頼って生きている。
だが地上に残った生物たちは、放射能に対応できるように、人間と動物の特徴を持つ姿へと変えて生き延びた。
複眼と触覚を持つ「アリンコ」、カンガルーのような「イダテン」、目がなくて穴を掘る「ミミズ」、ゴツゴツの高身長の「トカゲ」、水性生物「イルカ」
地下でほそぼそと生き延びる人間は、もうこの地球では過去の遺物なのか。このまま消え去るしかないのか。
==もう地球に人間の居場所はない。いつか地表の生物たちは訪問者となった人類を迎えてくれるのか。人間が生き延びる道は見つかったが、故郷は失った。物悲しさの残るお話。
『世界をわが手に』
科学は発達し、宇宙探索は進み、人類の寿命は果てしなく長くなった。
だが宇宙には、人類が友好関係を結べるような生命体を見つけられなかった。長い退屈の生活を余儀なくされた人類は、地球そっくりの惑星で、生命体を進化させる生きた球体「世界球(ワールドクラフト・バブル)」に夢中になっていた。何十年も掛けて、生命の発達を細かく設定し、最高の文明を作り上げる。
だが人類はそれにも飽きかけていた。何十年も手塩にかけ最高の「世界球(ワールドクラフト・バブル)」を叩き壊して狂乱のパーティを繰り広げる。世界球の神である作り手の気まぐれから、絶滅する球のなかの生命たち。
だがそれは、この地球もそうなのではないだろうか…。
『ミスター・スペースシップ』
人類は、他の星の生命体との戦争の連続だった。人類生き残りとしてエンジニアのクレイマーが立てた計画が採用される。それは宇宙船に優れた人間の脳を移植するということだった。その人間の自我はなくなる。だがプログラムでは測れない人間の経験や反射、直感により的の宇宙船の攻撃を交わし、相手を攻撃することができるだろう。
移植する脳の候補として元教授で余命僅かな老人トマスが挙がる。トマス元教授は説明を聞き、設計図をみて、ついには了解した。
トマスの脳は宇宙線に移植される。だが宇宙線は地球からの制御を振り切る。どうやらトマス老教授が移植前にプログラムを書き換えていたのだ。教授の自我を持った最高性能の宇宙船(オールドマン)は何を目論んでいるのか…。
==戦争なんかやめようよ。最初の世代は苦労しかしなくても、何代も掛ければそれを共通認識とする集団ができるよきっと、という、テーマは平和と希望を持ったお話。
『非O(なるおー)』
人間の感情を全く持たない「非O(ナルオー)」と呼ばれる特徴を持つ人間がいる。彼らは、この宇宙のすべてのモノ(オブジェクト)には意味がなく、すべてを統一してエネルギー化する運動「非O理論」を実施することにした。(このあたりは、科学的な説明がされていたがよく分からず(^_^;)
でもさすがに感情のある人間は黙っちゃいないよ。完全に理論的なナルオー計画は、知性よりも感情を爆発させる獣ような大衆によって破壊されるのでした、ちゃんちゃん。
『フード・メーカー』
やましいことがないなら頭の中を覗かれることに抵抗するなんておかしいだろう。
ある地域の事故の後に突如生まれ出した精神感応者(テレパス)たちは、政府に雇われ、不満分子たちをあぶり出していた。だがそんなテレパスたちに抵抗する人達もいる。中心にいるのは、精神を読まれなくする頭環(フード)を作る「フードメーカー」と呼ばれる伝説のような人物。
だが厳しい捜査により、フードメーカーもテレパスに捕まってしまった。抵抗一味が根こそぎになりそうな時に、フードメーカーは自分が知った重大な秘密を暴露する。
それは政府に多大な権力を与えられた精神感応者たちを絶望させるには十分な情報だったのだ。
『吊されたよそ者』
地下室の作業を終えたロイスは、街路樹に吊るされた死体を見つけて仰天する。
しかし近所の人達は誰もその死体に反応しない。それどころかロイスは騒動を起こしたとして警察に連行される。違和感を覚えたロイスは危うくパトカーから飛び降りる。
そして市庁舎で目撃してしまったのだ。町の人々が、人間の姿から不気味な昆虫の姿に変わっていく様子を。どうやら自分が地下室にいた間に、この町はエイリアンに乗っ取られてしまったらしい…。
==この冒頭、SF映画の冒頭のようでないか!しかしこれは短編だよ、どう始末するの?…と思ったら、まあ短編ならこうなるよね…な結果に。
これを原作に長編映画作ったらこの短編の終盤から全く違った展開に持っていけそうだなあ。
『マイノリティ・リポート』
未来に起きる犯罪を3人の予知能力者(プレコグ)により予知させて、まだ犯していない罪で犯人予定者を収容所にいれる。このシステムが確立され30年、殺人はなくなった。
だがある日、システム考案者で司法省長官のアンダートンは目を疑った。殺人者として自分の名前が予告されたのだ。被害者は会ったこともない人物だ。
誰かが自分をはめようとしているのか?それとも自分が構築した犯罪予防システムは間違いだったのか?
==未来が分かったことにより、人々の行動が変わったら、その未来はなかったことになるのか?
複数の未来統治者が見た未来が違ったら、どれを採用する?
SFジレンマというか哲学、そして考案者の初老の男が割と頑張るアクション的なものもありました。
トム・クルーズの映画は見ました。映画では殺人容疑を掛けられるのは若者なのでアクションしたり組織悪を暴露する物語でした。
こちらの原作では、殺人容疑をかけられるのがシステム考案者で責任者の初老の男なので、結末は全く逆でしたね。その初老の男が自分の作ったシステムに固執しながらも、体を張ってアクションとか銃撃とかする原作も十分面白かったです。
…しかし未来余地の矛盾に関する科学的・哲学的考察はちょいと理解できず(^_^;)(映画ではこのあたりが「組織悪」のように単純化されていた)
Posted by ブクログ
2024年になっても新鮮な読み心地と生々しい迫力を備えている。時代を超えて読み継がれるとともに、実現可能な時代になりつつあることの恐怖も沸き起こる短編集。以下は個々の作品の備忘録
・トータルリコール
経験の記憶を販売する会社で記憶の植え付け施術失敗と思いきや、政府の要人というか機密を持っている重要参考人的な立場だった人の話。映画も見てみたい
・地球防衛軍
人類が始めた戦争を、人類が作ったAIで代理戦争をさせるも人間より遥か上の知能を持ったAIによって管理下に置かれていたことに気が付く愚かな人間の話。
・訪問者
核戦争後、人間が住めなくなった地球で生き延びるために細々と息をしている様を描いた作品。地球も生きていて、人間が滅びるのも地球の歴史の一部になり得る。人間が最後の地球の支配者だなんて考えは傲慢…。
・世界をわが手に
ラスト数行で察してしまう世界の真実と創造者。破壊衝動に限らず「本能的欲求・衝動」と括ってしまうが、それは理解を簡素化するための言葉だった。溜まったエネルギーの発出。何かを使役したい、力を持ちたい、強さを自覚したい。神になりたい。残酷な世界の成り立ちは残酷な人間のエネルギー衝動によるものだったかもしれない。
・フードメーカー
頭の中を他人から読まれてしまう恐怖。政府に対して不都合な思想ややましいことがあれば即刻逮捕。まさにディストピア!
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小説・文芸
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