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小さいころから執念深く、生来の根がまるで歪み根性にできている北町貫多。中卒で家を飛びだして以来、流転の日々を送る貫多は、長い年月を経てても人とうまく付き合うことができない。アルバイト先の上司やそこで出会った大学生、一方的に見初めたウエイトレス、そして唯一同棲をした秋恵……。一時の交情を覆し、自ら関係破壊を繰り返す貫多の孤独。芥川賞受賞作『苦役列車』へと連なる破滅型私小説集、待望の文庫化。
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Posted by ブクログ
毎回主人公がクズすぎて安心して読める。 バイトの大学生にでかい顔をしすぎて分断工作を受けて反旗を翻されるような矮小さは自分の中にもあるので、自分の恥部を見させられているようなマゾヒスティックな爽快さがある。 古めかしい文体と今の言葉のギャップを「ここで笑え」といわんばかりに埋め込んでくるがそれがおも...続きを読むしろくて律儀に笑わされてしまう。「これがいわゆる痛気持ちいいというやつだね」とか最高。 秋江があなたを殺せるわよというところがすごくドラマティックで、やっぱ秋江ものが好きだなー。
「人もいない春」 まだ10代の頃(17歳くらい?)の 職場での失敗談から始まり 生活を立て直そうとする物語。 「二十三夜」 失恋の失敗談の話し。 「悪夢」 珍しく、おそらく夢で見たものを書き起こした実験的な物語。 「乞食の糧途」「赤い脳漿」「昼寝る」 秋恵シリーズ。 記憶のメモがわりにそれ...続きを読むぞれの話しを記載しましたが、やっぱりこの時期の西村賢太は勢いと無駄の無い表現でとにかく面白い。 表題作も良いけど、 秋恵シリーズは自制の効かない自らの暴力性と 自己反省との繰り返しの中で、常識的な秋恵と、異常な貫多の対比が浮き彫りになって面白い。
『やまいだれの歌』とかに比べるとちょっと弱い感じ。一編だけ寓話みたいな創作小説が収録されてて驚いた。私小説意外もあったんだ。
秋恵もの多め。同棲生活に忿懣を募らせながらも寸前でDVを思い止まる「乞食の糧途」や風邪をひいた秋恵を貫多が意気揚々と看病する「昼寝る」など貫多が時折見せる思いやりにはっとさせられる作品も。もうこの時点で読者も彼の術中にハマっているわけですね笑 不器用なやり方で彼女を思いやる貫多の姿は微笑ましくもあ...続きを読むるが、破局という結末を知っているだけになんとも心苦しい。
相変わらずの貫多である。社会の最底辺を這いつくばる労働者の心理描写にはゾクゾクさせられる。酔っ払ってこのあと人を殺してしまうとか、恋人をボコボコに殴るのではとか身構えてしまうのだが、小心者の貫多のこと、そこまでの事件は起こらない。最後の秋恵との物語は貫多の振る舞いに嫌気がさすが、最後はうまくまとまっ...続きを読むた。ネズミの物語は唐突だが、これも面白かった。なぜこの順番に作品を並べたのか。
「今日はここまで」と、本を閉じるたびに、満ち足りた気持ちになりました。 小説を読む悦びを、西村賢太さんの作品は十二分に味わわせてくれます。 でも、何故なんだろう、と考える。 だって、物語らしい物語があるわけではありません。 アルバイト先での人間関係、同棲相手とのいざこざ、挙句、レストランにいるネズミ...続きを読むの話。 おおよそ「どうでもいい」話が、西村さんの手にかかると、激烈に面白い。 1つは、著者その人である主人公「北町貫多」のキャラクターにあるのは言を俟ちません。 猜疑心と執着心が強く、妬み深くて小心と、人としての欠点がほぼ全てそろっている人物。 と、ここまで書いていて、世間が「好ましい」とする人物像と真逆なことに気づきます。 たとえば、会社が新入社員に求める人物像。 明るく前向き、好奇心旺盛でコミュニケーション能力が高く、どんなことにも積極的に挑戦するチャレンジ精神旺盛な人物、といったあたりが一般的でしょうか。 こうして文字にすると、随分と薄っぺらい、何というか内実など何もない感じがします。 というか、ぼく自身が社会生活を送る中で、いつの間にかこういう「真っ当」とされる情報に取り囲まれて辟易しているという面もあるのでしょう。 ぼくは、貫多に人間的な魅力を感じます。 それから、西村さんの小説の面白さの秘密は、やはりその文章力にありましょう。 古風な文体ですが、ぐいぐいと引き込んでいく力があり、やがて中毒になります。 ぼくは、特に、貫多の心理描写が好き。 卑怯で怠惰で打算的で自分勝手。 でも、「分かる分かる」と膝を打ちながら読んでしまいます。 それで、はたと、西村さんの掌の上で踊らされていることに気づくわけです。 これは文章による芸ですね。 次は「二度はゆけぬ町の地図」を読む予定。 楽しみです。
数か月前に芸人のサスペンダーズ古川さんのnoteで日雇い日記を読んでたことを思い出して、読みたくなった西村さんの私小説。 貫太の不器用ですぐ怒ったりするだめなところ、そしてそれをすぐ後悔するところ、それでもうまくできないところ、自分じゃないけど自分みたいでちょっと苦しくなった。最後、秋恵、ありがとう...続きを読むってなる。
西村賢太による貫多と秋恵モノが好きな人にはオススメ。西村賢太の独特なリアリティ、言い回しが溜まらない。こうした生き様そのものが作家であるタイプは日本には少ない気がするが、それではやはり説得力がないのだ。筆力には、作家の人生分、その重みが増すのだろう。
著者と同世代の人たちはバブルの真っ只中で青春を過ごしているはず。その世代における底辺の日常は実はいつの時代にもある。70年代の松本零士の「男おいどん」の世界も然り。人の生き方、生活は一様ではない。正解も理想もない。それぞれの世界でのやり方、生き方がある。
苦役列車から流れて読んでみた。 相変わらずの貫多の大冒険物語。 バイト先でのトラブル、 知り合った女性とのいざこざストーリーが、 やはりおもしろい。 最低な人間だけど、人間くさい貫多。 友だちには絶対なりたくないタイプとおもいつつも、その飾り無いゲス語りに、妙に共感出来てしまうところもあり、ぐいぐ...続きを読むい読み進めてしまう。 物語後半のその貫多に出来た天使のような彼女の話も貫多とのコントラストがあいまって、妙に考えさせられる。 途中のネズミ一家の話も秀逸。
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