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Posted by ブクログ
シリコンバレーの事情通でもなかなか細部をつかめていなかったアップル社の内部事情を、丹念な取材に基づいて詳細に記した本。著者は「フォーチュン」誌の記者であり、ジャーナリスト嫌いで有名なジョブズ氏のお気に入りの記者の一人、ということらしい。本書では、数万人の社員を抱える大企業としてはとても理解できないジョブズ帝国(あるいはジョブズ教団)の内情が見事に描き出されている。本書によると、①ジョブズによって完璧に制御された組織、②徹底した秘密主義、③妥協しないで細部まで作り込まれたプロパガンダ(製品デザインと宣伝広報戦略)の3つがアップルの力の源泉だったことが分かる。やはり通常の大企業の在り様とはまるで異なっており、むしろカルト教団のドキュメンタリーを読んでいるような気分である。このようなシンプルで強くて美しい世界に君臨できることが、私にとっての究極の理想形なのだろうと思った。
Posted by ブクログ
本書は「ポスト・ジョブズ」のアップルの組織の内部というモノをアップルに勤めたことのある人間に取材に取材を重ねて綴られたものです。その全貌を、元幹部・社員ら数十人の証言で初めて明らかにする貴重な記録。
本書は「ポスト・ジョブズ」のアップルの組織の内部というモノをアップルに勤めたことのある人間に取材に取材を重ねて綴られたものであると思います。通称「インフィニット・グループ」の中でどのようなことが行われているのか?シリコンバレーの企業のうちでももっとも独自な道を行き、大企業でありながらベンチャー企業さながらの動きのすることのあるアップル。
ジョブズからその「玉座」を譲られ、「オペレーションの魔術師」としてその手腕を発揮する新CEO・ティム・クック。彼の出自や経歴のほかにもまわりを固める幹部社員。「デザイングル」の異名をとるジョナサン・アイブ。iPhoneやiPadのOSのトップであり、またジョブズの元で一貫してキャリアを積んできたスコット・フォーストール。彼ら幹部社員の動向も注目ですが、実際にアップルに勤めたことのある人間の証言もこれまた希少で、「世界でもっともクールな製品を作る」会社で働くということはいかに過酷なことであろうかと。「宇宙に衝撃を与える」にはいったいどのような「集中」した仕事ぶりをしなければならないのかと思っただけで彼らを突き動かすものは「お金」ではないんだな、ということをつくづく感じました。
後半ではアップルを「卒業」した幹部社員。ジョン・ルビンシュタインやアビー・テバニアン。これはびっくりしたのですがトニー・ファデルもアップルを退職していたことには本当に驚きました。
「アップルのモデルは真似するべきではない」
この言葉はシリコンバレーの企業の中でまことしやかにささやかれているそうで、アップルの「卒業生」が他の業界で活躍したサンプルがあまりにも少ないという理由もあるのでしょう。しかし、ジョブズ亡き後のアップルが今後どのような変貌を遂げていくのか?その行く末を占う、という意味で本書は貴重な記録であると僕は考えております。
Posted by ブクログ
インサイドとついている通り、スティーブジョブズ時代のアップルがいかに凄まじい企業かを体験することができる。
本としてはジョブス亡き後のアップルについての評価を目的としていたようだが、そこまでは達成できず、むしろ揚げ足取り的に見えてしまうのがもったいないところだった。
以下、自分の理解のために。
・徹底した秘密主義は本当に社内政治をなくすのか?人に自身の業務を集中させるのか?
・全てはクパチーノで決める、というのは正しいやり方か?
・外部の利用方法は真似できるのか?
・google wayとapple way、すなわち数字の結果に聞くのか、自分たちの理を信じるのか、これは背反するものなのか何なのか
Posted by ブクログ
顧客にとって良い会社、業績の良い会社、株主にとってよい会社、経営者にとって良い会社、従業員にとって良い会社はそれぞれ同じではない。しかし利益の出ていない会社はそのどれにもなれない。一方利益が多ければそのすべてになる訳でもない。
アップルの時価総額が世界最高となった今、アップルは良い会社であるが、誰にとって良い会社なのであろうか。本書は主として従業員や経営者にとってアップルがどういう会社なのか、という点にまつわる組織や仕事の進め方、企業文化について述べている。
アップル社が従業員に求めるものは非常に単純である。スティーブジョブスが従業員に求めていたものと同義であるのがこれまでのアップルであった。それは、「ただ仕事に集中して全力を尽くせ」ということであり、それにコミットできない従業員にとってはよい会社とは言えないが、そういう従業員は居ようとしないし居られないという状況に鑑みれば、在籍している多くの従業員にとって良い会社なのだ。アップルに参加してすぐにやめることになった人間以外には、完全燃焼をした、あるいは完全燃焼を目指した達成感があるのだ。
アップルはほかの会社と違う。大会社だがほかの大会社と違う。アップルは、良い経営戦略、良い経営組織、良い企業風土を作ることに興味を持っていないし、良い運営プロセス、良いサプラインチェーン、良い経営成績などで評価されようとしていない。求めているのは、ただひとつ人々をとらえ、彼らの人生を変えるすばらしい製品を実現することだ。そしてそれにコミットする人間の集団をつくり、彼らの能力をすべて発揮させようとしているだけである。またそこで働く人たちもワークライフバランスなど求めていないし、仕事のやりがい、人生の充実なども求めていない。
革新的なものを生み出す企業組織や企業風土の答えをアップルの組織や仕事のやりかたに求める態度はそもそも間違っている。方法論が成果を決めるのではない。人の動きが成果を産むのである。
アップルは一見ファブレスであるので、製品コンセプトとデザインに特化した水平分業型企業と思う人が多いだろうがその理解は間違っている。アップルはハード、ソフト、サービス、広告宣伝、調達、製造、販売、業務システム、すべてを統合したどろどろに泥臭い擦り合わせ企業である。オペレーションのすべてを仕切り、細かく決め、徹底して運用している。だからまねできないのである。
コンセプトだけなら多くの人が同じことを考えることはできるし、できていた。むしろアップルの実現した製品のコンセプトは100%オリジナルとは言えないものばかりだ。
では結果を出す人の動きとはどのようなものか、それをAppleとJobsの歴史から学べるのだが、多くの人は目が曇っているためそれを学ぶことができない。差別化力とはコンセプトや発想力や技術力や経営戦略などではないのだ。「コンセプトは生み出していた、iPadよりずっと前にソニーもAirBoardを作っていたのに」と言う人には何もわかっていないのだ。
みんな、特に日本の有識者は、良く言われるFoxconとの関係に固定観念で眼がくらんで(その関係さえも誤解して)見えなくなっているだけで、思い返せば創業のころからアップルの特徴はハードとソフト両方を開発していることであった。そしてハード、ソフト以外のところで長足の進歩を遂げたのが、今世紀のアップルだ。そして実はその製造ですらすべてをコントロールしているといってもよい。もちろん各機能のコントロールには強弱や巧拙の差はあるが、それは何の問題にもならない。(これまでの)アップルの目的は完璧な経営でも運営でもない、ただただ気の済むまで仕切って徹底することだからだ。(そして永久に気が済むことは無い。)
アップルには社内に(ほとんど)「委員会」がなく「DRI (Direct Responsible Individual」に責任を負わせる固有名詞の仕事をしている。
アップルは締め切り重視でDRIは必死に締め切りを守ろうとするが、それだけに日程には十分余裕がある。無理な日程に向かって無鉄砲に突き進み結局遅れても、頑張ったことや、頑張った姿勢で評価されてしまうような無責任な組織とは異なる。姿勢や格好ではなく、すべてのエネルギーを絞り尽くして注ぎ込んだ「結果」をもとめているからだ。
アップルの製品は少なく、すべてがシンプルである。これだけの企業規模をこれだけの製品で維持している会社は少ない。スティーブジョブスが一人で考えられることしか進まないという意味で、それはボトルネックだったかもしれないが、みんながてんでに、良さそうに見えることを、うまくいっているようにみせかけるようになることを防いでいた面も強いだろう。アップルは全力で完璧を求めたらあれもこれもできないことがわかっているのである。
今の世の中では非常に変わった会社であるから、純血主義になっている部分もある。アップルの幹部がアップルの外でうまくやれるかどうか、本書にはその点についての分析もあり興味深い。
アップルの内部はベールに包まれていて、組織や仕事のやり方は秘密である。「謎」と言われる。しかしこの本を読んでみるとあっけないくらいにはっきりわかる。(わからない人は自分がずれているのだ。)
もちろん細かい規則がどうなっているかはわからないが、そのような会社のルールがアップルを作っているのではない、アップルの組織と人をつらぬく重要な点は非常にシンプルでありそれは決して隠されていない。それは、ただひとつ、人々をとらえ、彼らの人生を変えるすばらしい製品を実現するため、それにコミットする人間の集団をつくり、彼らの能力をすべて発揮させようと制度を設計し運用しているということである。「モチベーションをあげる」のではない、「全力を尽くさせる」のである。
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