『レコード屋の店主に試聴をお願いすると、店主は黙って頷いて、B面の三曲目――それが「Be Nice To Me」だった――に針をおろした。これまた、どうしてなのか分からない。普通はA面の一曲目に針をおろすように思うが、店内に流れ出したのは、にぎやかな曲調のA面の一曲目ではなく、おだやかなゆったりとしたテンポのB面の三曲目だった』―『サイレント・ラジオ』
「Be Nice To Me」と聞いて頭の中で音楽が鳴る。♪You'd be so nice to come home to。おっとこの曲じゃないんだな。検索すると、トッド・ラングレンがピアノの前に背を向けて座っているジャケットが見つかる。その首には絞首刑用の縄が。柔らかな旋律とは裏腹の不吉なイメージ。♪And would it bring you down if I hang around(そして、私がぶらぶらしていたらあなたを落ち込ませるでしょうか/Google翻訳)。bring you down、hang aroundのダブルミーニングが聞こえてしまう。この物語にそんな不吉なところはないのだけれど。あるいはあるのか? 頭の中では青江三奈の歌う声がしつこく鳴り続ける。この物語には私の歌の方が似合うわよ、と。