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アジア初のブッカー国際賞作家による奇蹟の傑作が文庫化。おくるみ、産着、雪、骨、灰、白く笑う、米と飯……。朝鮮半島とワルシャワの街をつなぐ65の物語が捧げる、はかなくも偉大な命への祈り。 生後すぐに亡くなった姉をめぐり、ホロコースト後に再建されたワルシャワの街と、朝鮮半島の記憶が交差する。 文庫化にあたり、訳者の斎藤真理子による「『すべての、白いものたちの』への補足」、平野啓一郎による解説「恢復と自己貸与」を収録。
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Posted by ブクログ
韓国の作家ハン・ガンによる散文詩的な装いの小説。乳児のころに亡くなった姉について過去・現在、韓国、ポーランド・ワルシャワを巡って、白を題材に詩的な文章が綴られる。 詩を読んでいるような感覚なので、何が書かれていたかは頭に残りにくいのだけれど、小説を読むという体験のひとつの姿がここにあるという感じ。 ...続きを読む韓国には文学的な可能性もあるということを感じさせる作家。光州事件を舞台にした作品が代表作のようなので、手に取ってみたいと思う。
読書会の課題本として採択。小説のようなものを想像し開いたが、詩と散文の中間のような構成及び文体であった。言葉選びやテーマ、情景描写等好みに合致しており、個人的に非常に評価している一冊。そのせいもあってか重い題材を扱う割に心地良く読むことができた。
神経質で潔癖なまでの真っ白さや繊細さがあると同時に、どこかエッジがきいたスタイリッシュさや退廃的な雰囲気もある、自分が思う最近の韓国文化のイメージそのものでした。
わからない、という苦痛とどう向き合い、それでも逃げずに読むところに、どのような味が出てくるのか、という本でもあった。白という色が、あらゆるものの根源のように、生命を表象しながら、しかし同時に死を包括するような印象を受けた。それは、生を肯定するでもなく、死を否定するでもなく、生死というものが自然な大き...続きを読むな流れの中に位置づけられているような感覚。 「生き延びた古い柱や壁が、その上に積まれた新しい壁や柱とふしぎな形で抱き合っているーそんな形で生きてきた人」
みぞおちのあたりにずん…と留まりつづける、重くて静かで、あまりにも体の内側に直接に作用するような言葉がたくさんあり、ほんとに苦しかった。苦しかったんだけど、でもこの先いつか読み直し、読みつづけたいなとも思う。
おくるみ、うぶぎ、しお、ゆき、こおり、つき、こめ……。「白いもの」たちへ捧げる静謐な祈りの言葉。紡がれる美しい文章が織り成す物語は壮大なひとつの詩でもある。哀切で儚い65の物語。ゆっくりと静かな夜に読みたくなる。素晴らしい本でした。
忘れられない傑作である。儚く美しく、そして抉る作品。散文詩のあつまりのかのようだが、確かに小説である。しかし、そのひとつひとつの詩も美しく、それらを読み進めゆくことで見えてくる世界、そして器としてのわたし、そして決意。読んでいる最中は、さまざまな感情が複雑に絡み合うけれど、この作品は不思議な静謐さに...続きを読む満ちている。読み手という器があり、そしてこの作品は完成する。みなさんは、どのような物語を掬い上げるか。ぜひ、読んで欲しい。
単行本も買ってたが、積んでしまっていたので、改めて文庫を購入。何だか凄いものを読んでいるけど、どう表現していいのか分からない。詩を読んでいるみたいでいながら、ストーリーが紡がれていて、分かるのに分からない。文庫巻末の訳者の斎藤氏の言葉に首肯。手元本、がまた一冊増えて幸せ。
すごすぎてなにを書けばいいのかわからない。読んでいるあいだ、薄暗い雪景色のような静謐さに絶えず体が満たされていた。それはひとえにあまりにも洗練された文章(訳文がすばらしいしきっと原文もすばらしいに相違ない)のなせるところだろうと思う。白いものには無数のイメージが重ねあわされて、厳粛さや脆さ、寂しさ、...続きを読む残虐さ、清廉さ、様ざまの印象が圧倒的な静けさに飲みこまれながらも同時にそれを形成してゆく。そういうなかに、生まれて二時間で亡くなった姉との(間接的な)交流が立ちあらわれる。白いものたちは、生と死をも包みこむ。それはあたりを覆う霧のように無限のひろがりをもつようでもあれば、蝶や、雪の一片一片のようにものすごく小さな世界の細部に宿るようでもある。そこにはあるものが生じて消滅してゆくことの厳然さがある。そうしてそのなかでひとはひとりの人間が生まれて死にゆくこの事実を、個々人の確たる実感として引きうけねばならないことを悟るのだ。それはこの世に生まれ(得)たすべてのものへの祈りとなる。
読み終えて、作者のあとがきと解説を読んで「ああ、そういうことか、そうなのか」と思う。読み切れていなかったものが心の中にそっと置かれているよう。また、もう一度読み直そうと思う。
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