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北の町に暮らす人々を描く悲運の作家の遺作
「海炭市叙景」は、90年に自死を遂げた作家、佐藤泰志(1949-90)の遺作となった短編連作です。海に囲まれた北の町、「海炭市」(佐藤の故郷である函館市がモデルです)に暮らすさまざまな人々の日常を淡々と描き、落ち着いた筆致の底から、「普通の人々」の悲しみと喜び、絶望と希望があざやかに浮かび上がってきます。この作品が執筆された当時はいわゆる「バブル」時代でしたが、地方都市の経済的逼迫はすでに始まっていました。20年の歳月を経て、佐藤泰志が描いたこの作品内の状況は、よりリアルに私たちに迫ってくると言えます。
函館市民たちが主導した映画(熊切和嘉監督・加瀬亮、谷村美月、小林薫、南果歩などが出演)の公開は2010年12月。映画化をきっかけに、心ある読者に愛されてきた幻の名作が、ついに電子書籍となって登場!
Posted by ブクログ 2021年04月17日
著者が生まれ育った函館市をモデルとした連作短編集。
海炭市に居住する人々の小さな日々の物語で18編が交錯しそこに生活する人間の場面場面が海炭市を浮かび上がらせながら小さな存在で何でもない平凡な登場人物の心を映し出す柔らかくも愛しい至極の作品です。
特に1編目の”まだ若い廃墟”は胸に響きます。...続きを読む
Posted by ブクログ 2020年08月06日
初めて読む佐藤泰志が、まさかの彼の遺作だった。
函館市をモデルにした"海炭市"に暮らす人々の話。
冷たくて灰色で、厳しい海炭市の冬。
まだ若い廃墟について。
「待った。ただひたすら兄の下山を待ち続けた。から始まる、冒頭のひと段落が、私は素晴らしいと思う。
過去のことを話して...続きを読む
Posted by ブクログ 2019年06月23日
著者の未完の遺作となった連作短編。ついこないだ同じ著者の『そこにみにて光輝く』を読み、すくいようがないくらい閉塞感がありながらもその眼差し=筆致のやさしさに引かれて2作目を読んでみた。やさしさに引かれてと前述したけれど、多分に著者が自死した人であることを意識しているであろう自分。自死してしまうほど考...続きを読む
Posted by ブクログ 2018年11月18日
著者の故郷である函館市をモデルにした「海炭市」に住む
人々を描いた群像劇。
連作短編集の形式で、海に囲まれた北国の街を舞台に静かに
営まれる人々の生活を優しく淡々と描いている。
登場する人々の大半は、いわゆる「負け組」というカテゴリー
に分類されるだろう人々。その悲惨なところが客観的に冷静に
描...続きを読む
Posted by ブクログ 2018年04月18日
続編ありと予告されていながら、作者の自殺によって本前編だけしか読めなくなってしまった訳ですね。この中でも前半と後半で若干色合いが異なっていて、前半はゆるい繋がりのある連作短編で、後半はほぼ独立した短編たち。どこかに憂いを抱いた人たちがそれぞれの主人公で、結末までは語られないこともあり、読者の想像如何...続きを読む
Posted by ブクログ 2015年10月26日
文体の、何たる瑞々しさ。
熟した葡萄の皮に、
ぷちっと歯を立ててその果汁と果肉を味わった時の、
酸味、甘み、渋みのコントラストのような、
冷えた視線の中にある瑞々しい文体に、
何度もはっとし、
ひどく安易な言葉であるが、感動した。
その場所で、その時を全力で、
働きながら食べて、町を歩く人々に宿る...続きを読む
Posted by ブクログ 2014年08月20日
先に同名タイトルの映画を観ました。映画を先に観ることはあまりないのですが、この作品に関しては竹原ピストルさんが出演していたので我慢ならず。
物語は「海炭市」という北海道にあるという設定の架空のまちが舞台です。かつては造船や炭鉱で活気づいていた海炭市に生きる人々の生活が描かれています。
本作には第...続きを読む
Posted by ブクログ 2014年07月15日
[夢想的立上げ]三方を海に囲まれた架空の地方都市「海炭市」。その地を舞台に生きる老若男女18名をそれぞれに主人公にした短編連作です。地方都市の落着き・安らぎとの裏表の関係にある孤独と、なだらかな衰退感を総合的に立ち上げていくかのような作品。著者は、本書によって改めて評価が高まりつつあったものの、若く...続きを読む
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