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日本を蝕むさまざまな問題は、突き詰めれば私たちの「仕事」観に由来している。資本主義経済下での摩耗を避けたければ、会社のなかの「組織人」として生きるだけでは十分でない。私たちは同時に、社会のなかの「職業人」としても生きなければならないのだ――。本書はこの要請とジレンマを出発点として、働き手と組織が共栄していくための方策を探る。疲弊した日本経済が自壊する前に「職業の社会学」は新たな地平を拓けるのか。
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Posted by ブクログ
仕事、職業における知見がとても面白くて読みやすかったです。時代は変化していきますが、もう少し「軽やかに」、ユーモアがある雰囲気になるといいなぁと思いました。
『会社のなかの「仕事」社会のなかの「仕事」(阿部真大・著)』読んだ。職業というものを会社の組織人としてではなく「社会の中でどんな役割を果たすものなのか」を問い直す本。都会で働く人が兼業で行う「パートタイム田舎就労」の可能性にも言及されていてとても面白かった。
「やりがい搾取」 資本が求める「仕事」と労働者の「やりがい」が一致することによって、不当な搾取状態が見えにくくなり、労働者自ら搾取率を高めている状態。 著者は、2000年代初頭にバイク便ライダーの勤務実態をもとに「自己実現系ワーカホリック」という状況を指摘し、これを教育社会学者の本田由紀が一歩押し...続きを読む進めたのが上記の「やりがい搾取」という概念。 そんなやりがい搾取が蔓延する世の中の課題を解決するために、仕事を「会社」ではなく「社会」の中で位置づけ直そうというのが本著のテーマ。 著者の主張は第1章に集約されている。 仕事は、客に喜んでもらうためにするものではない。社会の中で自らの役割を果たすためにするものである、と。 社会の中での役割、即ち仕事を「職業」として捉え直す。 職業の社会的役割を明確化し、仕事内容を社会的に規定することで、仕事の無限定性に歯止めをかけようという考え方。 労働組合を職業別の組合として再活性化させることや、「ユーモア」を職場の中に採り入れることが提唱される。 (後者については、職場を相対化して没入度合いを軽減する意図だと解釈した。) この文脈で池井戸潤作品への一部批判的な論評なども語られるのだが、この考え方自体は明確で現代日本社会の病理を建設的に指摘いて好感を持った。 一方で、会社という組織に身を置きながら「職業人」としてあり続けることは簡単なことではない。 承認欲求や組織内競争のゲーム性などが「組織人」たることへの強力な誘惑を生じさせる。 また、職業ベースで仕事を捉える考え方は、グローバルスタンダードに日本社会を近づけようとする意味合いも持っており、それに対する反発心はグローバル化に対するバックラッシュの側面も持っていることも指摘されている。 グローバル化の流れに反発するローカル層に、グローバル・エリートが直接影響を与えることは容易ではなく、ローカルで働いている人の仕事観を少しずつ変えていく働きをするローカル・オルト・エリートの存在が重要であると、著者は主張する。 この点が、本著に好感を持ったポイントのもう一つの点。 仕事を「職業」として捉え直すためには、当然のことながら各人の「職業」が何であるかが明確になっていることが前提となる。 その意味では、いわゆる「ジョブ型」労働と極めて親和的なもの。 「あなたの職業は何ですか?」と問われて、「会社員です」と答える人が大半という世の中を少しずつ変えていく。 ぜひそんな取り組みに自分の力を使ってみたいな、とクリアに思わせてくれた点で、自分にとっては良著であった。
職業は、生計の維持、個性の発揮、役割の実現。 組織人と職業人の対立があり、現在の多くの会社は組織人が多い。 上記の古い体質であるため、見直す必要のある働き方が顕在化している。 働き方を変えるには、職業人を増やさないといけない。 だからこそ、組織人が大多数を占める、終身雇用に則った現在の多くの...続きを読む会社を内部から変えるのは、きわめて難しい。
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