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大正時代、蛔虫退治で評判を取った初代。軍医としてフィリピン戦線を彷徨った二代目。高齢者たちの面倒を見る三代目。そして肥満治療を手がけてきた四代目の「ぼく」はコロナ禍に巻き込まれ――。現役医師でもある著者が、地方に生きる医師四代の家を通じて、近現代日本百年の医療の現場を描く感動作完成!
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Posted by ブクログ
読み応えが有り、おもしろかったです。 現役の医師ならではの専門的な内容も多々。 短編集かと思ったら、連作短編でした。その繋がり方が秀逸。 「告知」が、特に好きです。 戦争の話は、膨大な時間と量の取材からの執筆だろうと思います。 コロナの事も最後にあり、その現実が戦争中の悲惨な状況に重なりました。医療...続きを読む関係者の方々の日々の壮絶なご苦労の上に成り立っている今の状況に、心から感謝します。コロナ、何とか収まらないでしょうか。
面白かった! 軍医のあの描写はどこから手に入れたんだろう?どうやって取材したんだろう? 書き上げるのに10年かかったそうだが、わかる気がする。 コロナ禍の様子もありありと手に取るように。 レントゲン画像の患者名をみたときはきっと腰が抜ける想いだったろう。 それを公表することもままならず、そして、世間...続きを読むはgotoへと走る。 まだまだ続くコロナ禍。 時折はさまれる俳句に和んだ。
「医は仁術」との思いを強くする。4 代に渡る町医者の物語。 明治維新や太平洋戦争、近年のコロナ禍まで4代に渡り医師を務める九州の一族を描いた感動作。 一話一話ほぼ独立した短編であるが、町医者のDNAが流れている。年代順になっているわけでもなくバラバラな構成ではあるがそれも悪くはない。 大きな感...続きを読む動を持って読めた一冊。素晴らしい作品でした。
本屋さん大賞の候補になっていたので 手に取った。 親子四代医者の家系の物語である。きっと 恵まれた家庭に育った 優秀な者たちのストーリーなんだろうなと思っていたが、全く違った。とても胸を打つ 連作である。そして 作者の帚木さんのご年齢を知って、この作品を書く力量 たるや 相当なものだな と驚いた。...続きを読む初代の曽祖父から 4代目 の息子にいたる、それぞれの代の、医師としての苦しみ 悲しみ大変さが詳細に綴られており、どの章にも思わず涙腺が緩むところがある。特に「兵站病院」「胎を堕ろす」の章は改めて 戦争のむごたらしさをこれでもかと提示し胸が痛い。読者である私達はそれを脳裏に焼きつけておこう。だから戦争は嫌なんだと。戦争だけではなく 新型 コロナウイルス 蔓延で病院や医師の機能が崩壊寸前になった「パンデミック」の章や、アメリカに留学した時に経験した、健康保険の無い国アメリカの貧困者と病まいの現状を綴った「歩く死者」など、どれにも医師でありながら病の者を助けられない、見殺しにしなければならない状況があり、淡々と書かれた文章のなかにその懊悩が読み取れる。 初代から四代目のどの医師にも、町医者としての庶民目線の温かい眼差しがある。患者の話をとても良く聴いてくれる。3分間診療ではない こんなお医者さんが存在していてくれるなら、私も是非 診てもらいたい。要所要所で織り込まれた数句の俳句がとてもいい。
太平洋戦争下での医療活動の壮絶さは、同じ著者の「軍医たちの黙示録」でも味わった。コロナ禍での医療関係者の奮闘、政策の反省点と合わせて、ほぼノンフィクションと言って良いのだろう。将来の貴重な資料にもなるように思う。。2023.6.5
p40 その頃の医学会は複雑で、医師になるには6通りの方法があったらしい。父が卒業したのは九州帝国大学医学部で、同様な大学が東京と京都、仙台にあり、まずこれが第一の大学出身の医師だった。第二は、長崎、岡山、金沢、新潟、千葉の五官医学専門学校出身者である。 医師の出自の第三が、大阪、京都、名古屋の三...続きを読む府県立医学線専門学校の卒業生であり、第四が東京にある私立医専、日本医専と東京慈恵会医院医専、さらに私立の熊本医専の卒業生だ。 そして第五が、以上の医学校の卒業生ではなく、医師の国家検定試験に合格した検定医だった。 さらに六番目の限地開業医がいた。山間の5,60軒足らずの地域に限って、医療を許されていた人たちだ p66 後腸仮説 インクレチン(食欲抑制作用) p157 上杉謙信 軍議と酒宴が連日続いたあと、直江山城守兼続を相伴にした宴席で、膳の料理には手を付けず、味噌ばかりに橋をつけて、酒盃を重ねる。;厠に用を足しにいったきり、戻らないので、近習が見に行くと倒れており、4日後に死亡 辞世の句 四十九年 一睡の夢 一期の栄華 一杯の酒 p248 野北さん、何事も縁よ。縁ちうもんは神仏が配慮してくれたこつで、大事にせんといかん。上官も部下も、同僚も、自分の周りにいるもんはみんな縁。傷ついて病院に送られてくる兵士も縁、健気に働いてくれる日赤の看護婦たちも縁。それを自分の考えで嫌悪したり、徒党ばくんで派閥をつくっていがみ合うのは、みんなはからいごと。それは人間のすることで、神仏の配慮よりも劣る。ろくな結果は生まん。 p297 スペイン風と称されるようになったのは、当時第一次世界大戦の終盤であり、中立国だったスペインにその名がなすりつけられたともいえる。 しかし真相はまぎれもなくアメリカ風邪。
大正時代、「虫医者」と言われ、蛔虫退治で多くの命を救った初代。 軍医として戦地に赴き兵站病院に勤務し、 満身創痍、復員後は町医者として地域に根ざした二代目。 高齢者に医療と介護を施すため尽力した三代目。 肥満治療を手がけてきた四代目。 ここで、コロナウイルスが発生。 戦争の残酷さは、「胎を堕ろす ...続きを読む二〇〇七年」でも語られている。 戦地の過酷さには胸が詰まる。 P163 現代医療の暗部についても書かれている。 本作は忘れることなく頭の片隅に残る作品だと思う。 帚木蓬生さんらしい読み応えのある一冊だった。
もう2年半、なのに都内だけでも2000人近い感染者。それでも、また“G o T o”参院選目当てで。いい加減な政府のコロナ対策は、すでに忘却の彼方。「ワクチン無しは鉄砲も持たず戦場を歩かされたことに似とるよ」町医者四代のつぶやきは重いが、この国では届かない、マスクは律儀に未だに付けているが…。
「面白いか?」と問われれば「否」ですが、読み応えは凄まじく。 四代にわたる町医者の物語です。蛔虫退治で評判を取った初代。悲惨なフィリピン戦線の軍医だった二代目。高齢者医療を始めた三代目。そして肥満治療を手がけてきた四代目。それらがで順不同で描かれるオムニバス形式の短編10編です。 三代目を主人公に、...続きを読む居場所のない高齢者の悲惨さを描き、でもどこか救いのある出だしは如何にも帚木さんで良い。しかし、全体として医療小説・記録文学・仁愛(?)小説など色んなテーストが有って、それが上手く一体化できてない感じががします。 最も紙面が割かれるのが「兵站病院」と「胎(こ)を堕ろす」「復員」などで描かれる余りに悲惨な太平洋戦争。今のウクライナが頭を掠めつつ。やはり戦争の不気味さ怖さ阿保らしさが沁み渡ります。加えて現役医師(帚木さんは精神科ですが)の目で見た新型コロナの第四波までの医療現場の実情を描いた最終編の「パンデミック」も本当に読み応えが有りました。
4代続く医師のストーリー。初代は「虫医者」と呼ばれ、寄生虫を専門にした町医者…。2代目が軍医としてフィリピンに派遣された経験があり、3代目は老健施設や特養を併設した内科医院を営み、4代目はボストンで減量手術を学びその後は市立病院の勤務医となってる…。それぞれの時代で、医師として患者にどう向き合った...続きを読むか、描かれている…。 心に残ったのは、軍医を勤めた2代目のエピソード…戦死より病死で帰国を果たせなかった方の方が多かったこと、敗戦後もマラリアや栄養失調などで苦しみ歩行困難な患者には消毒液を注射して死なせる行為をしなくてはならなかったことなど…軍医の側から戦時下から敗戦後のことまで知ることができたのは初めてでした。3,4代目でコロナ禍の対応を迫られますが、ここにも物資不足でフェイスシールドや防護ガウンがなく、プラスティック製品やゴミ袋に手を加えて使用しなくてはならなかった記述があったりもします。それは、未来へ引き継ぐべき記録になるんじゃないかと感じました。 本文各所に俳句が散りばめられているので、俳句に興味がある方にはいいのかもです(私は俳句の才能がないけれど(^-^;)。この代が変わるときが唐突すぎてついていくのが大変なこともあったりして、ちょっと読みにくさも覚えてしまいました。
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