原題は "Looking For Spinoza"なので、スピノザが副題といういよりも主題でそのタイトル通りなのですが、スピノザの業績やら当時の歴史や文化背景などもそれなりの紙幅を割いて記載されています。結局は、スピノザの思想を紹介したいのか、著者自身の心身-情動-感情の理論を紹介したいのか、読後の感想としては中途半端な印象を否めませんでした。哲学的にスピノザを消化して読者に伝えるには、その点での力量が著者ととそれを受け止める自分に不足しているのかもしれません。実際に著者がスピノザの暮らした部屋を訪ねて行った場面をそれなりに詳しく記載しているところからも、脳科学最前線というよりも少しばかり力を抜いた感じのエッセイにも近い本なのかなという感じです。脳科学に関する書籍としては前著の『無意識の脳 自己意識の脳』の方が個人的には好きです。