サブタイトルが「組織を強くする冒険人材の育て方」である通り、あえて、異文化に飛び込むことで、「人材」を育てるための指南書。
正直なところ「なんでそんなことをあえてするの?」と思う自分は、3〜5年で異動したり転勤したりと仕事環境が変わるので、自然と「越境学習」する環境で育ったんだな、と思いながら読んだ
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特に気になったところを3つ述べてみる。
1つ目。P76付近の「述語主義」。本文から引用すると「述語主義とは、日常的にいつも同じ文脈で暮らしてる人が、だんだん守護を省略するようになること」とある。
越境して最初に感じる違和感はこれだなと思う。確かに、ずっとそこにいる人は主語を省略しても文脈から推測できるから問題ないだろう。ただし、越境者からすると、最初に困るんはこの主語の省略であり、仕事を進める上で、毎回確認が必要になる。
これは、越境者のみならず、新卒採用者に対しても仕事を教える上でボトルネックになるし、日々のやり取りの中で、いわゆる「現地にいる人」ですら主語を取り違えて仕事上のミスを起こしていることがある。特に、ビジネスがグローバル化している現代では、電話やメールで「越境」して連絡をすることもあるわけで、「通じるだろう」という楽観的な推測は必ずあてはまるとは限らない。原点に帰って5W1Hを必ず確認することは必要だろう。
2つ目。P186付近の「迫害をどう防ぐか」。越境者は必ず迫害される。
迫害というと大げさだが、そういうものである。
1つ目でも述べたように、述語主義で通じる集団に異物が入ってきて、毎回確認したり、いわゆる「現地にいる人」の「常識」が通用しないからこそ、「あの人なにしてんの?」と白い視線を感じる。「越境者は2度死ぬ」の項でも述べられているが、異質な文化に混ざるということは、実は大変な労力を要するし、元の組織に戻っても「かぶれてる」と冷ややかな態度をとられがちである。
越境に対して、セルフケアが可能な人材なら問題はないが、そうでない人には組織的なケアが必要となるであろう。
さらに、「迫害」とまで行かなくても、「異分子に対しての態度」は、気をつけないとグローバルなビジネス交流についていけずに、自社が滅びる結果になりかねないと思う。
組織の「対外的な対応」にも通じる部分と思えた。
3つ目。P204付近の「発信スタイルの変更」。
越境者が「こうあるべき、こうやるべき」と自分の意見を述べたところで冷ややかな目でしか見られないのはごく当然のことだ。であれば、「自分はこんなことやりたい!こんなことが好き!」とポジティブに楽しく仕事して人を巻き込むしかないと思う。
これについては、越境に限らず、日々、そういう態度でありたいと思う。
日々の「当たり前」と思っていることが、実は、他の文化圏に行けば当たり前ではなくなる。「視野を広げる」とは「越境したことも想定して相手の気持を慮ること」だと思う。
そんな当たり前のことを改めて気が付かせてくれる、そんな1冊。