帯にあるように300年4000キロの旅の物語というのが、カツオではなく
かつお節であったことがすごい。
以前荒俣宏著の「男に生まれて」の副題が江戸鰹節商い始末。この本では老舗の「にんべん」を扱っていて、文中で西伊豆の田子のかつお節を書いていた。私事で、親子二代に渡って西伊豆の小さな鰹節店から花が
...続きを読むつおを取り寄せ続けていた舌が、今度はどんな出会いもたらすか、とこの本を手にした。
戦場にもっていく携行食としてかつお節が登場したのが16世紀。明治の殖産工業の後押しと日清・日露戦争といった需要の増大で、漁場と加工場が次々と南方へと出ていく。
4000キロというのが、戦後でなく、すでに明治末から大正にかけてインドンネシア、ミクロネシアへと広がっている。華僑の南下勢力の強さもすごいが、沖縄県人の一族を呼び寄せていく鰹節従事者のパワーもすごい。
その生産地と第二次世界大戦との戦場が重なり、悲劇も言及につきない。 本書が多くの人からの聞き書きによる生の声が収められ、生活を支え、食を支え更新していく様子が伝わってくる。
本枯節でなく花かつおが消費されることで、脂ののらない南方かつおが好まれ、さらに調味料としてのカツオ節の需要の高まりで、切ってもきれない食材として生産は増えつつある。
人と知恵をつないできた食材は滋味深い。