世俗を厭い、人里離れた一軒家に自分の趣味を詰め込んだ理想郷を夢見た青年の話だった。
無邪気さを持っていたはずの少年が世の中を知るにつれ、いつしか偏屈な大人になっていた。資産はあるが孤独であったことが少なからず影響していると思う。
孤独で静かな部屋で語られているのに、その内容は何よりも刺激的で歪んだ情
...続きを読む熱がある。文学や芸術分野において独自の講釈を垂れているけれど、終始人間味が感じられて好ましい目で見ていた。知らない作品の評価でも、その熱意によって読まされてしまう。
旅行に出ようとして、目的地に行かずに外食だけして帰ってきたときはちょっと面白かった。憎めないところがあるのだ。
次第に神経症が悪化して生きるか死ぬかという状態になり、健康的な生活のために街に戻るときになってやっと本心が見えるところが良かった。デ・ゼッサントは堕落した人間や組織が嫌いなだけであって、信仰心自体はあるのではないかと思わされた。
途中、サディズムについて語っているのが印象的だったが、デ・ゼッサントがこれまでやってきたことも、根底に信仰あってこそ神を汚す行為だったのではないかと思うのだった。