好奇心が服を着て歩いているような素直な平民少女の銀河が後宮へ召し上げられ、前代未聞の活躍を遂げる話。
銀河がいかに真っ直ぐで破天荒な人間であるか、彼女が成した偉業がどのようなものであったか、ということが歴史小説風に記されている。
サッパリした性格の銀河が、彼女の周りのくせのあるルームメイトや女大学
...続きを読むの師範といった魅力的な人物との丁々発止なやり取りや不思議な魅力のある双槐樹との関わりで少しずつ変わっていくところがじわじわ面白かった。銀河の偉業を語る上で欠かせない男、ここぞというときに命を張る博奕に勝ち続ける渾沌に関しても少なからぬ分量が割かれているが、一貫して気分屋であるという彼の在り方もなかなか面白かった。
これ、たぶん今似たようなものが世に出るとしたら、主人公の銀河と渾沌は絶対に転生者とか異世界人とかそういう設定が生えてるんだと思う。本作はそんなことはなくて、純然としたファンタジー(作者はあとがきで否定しているが)だと思った。歴史家という少しばかりメタっぽい視点こそあるけれど、「自分の時代の自分の国で自分の物語を生き抜いた、ちょっと変わった人たちの話」という点ではかなり筋が通っているなぁと感動してしまった。